中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

内部告発の裁判(2)

2012年05月22日 | 情報
内部告発の裁判例をさかのぼると、

愛媛県警事件があります。
愛媛県警のC巡査部長は、現職警察官として、
警察内部で行われている領収書偽造によるウラ金づくりを告発しました。
その結果、懲罰的な配転を受けました。これに対してC氏は、裏金の実在を証明するために
国家賠償訴訟を提訴、2007年年9月に一審で勝訴、組織ぐるみの裏金づくりの事実や、
Cさんの左遷に県警本部長が絡んだことを認定させました。
県側は控訴しましたが、2008年9月に高松高裁で敗訴しました。
その結果、県側は、翌10月に最高裁への上告を断念して、C氏の勝利が確定しました。

さらに、トナミ運輸事件があります。
原告B氏は、当時所属していた営業所で、過当競争を避けるために談合し、
違法な割増運賃をとっていた状況に不満を持ち、最高幹部が営業所を訪ねてきた時に直訴をしましたが
「役員会で決めたことだ」と取り合ってくれませんでした。
そこで、原告はトラック業界の闇カルテルをY新聞社へ告発し、新聞に掲載されることになりました。
原告B氏は、告発後(1975年)以降、研修所に異動を命じられました。
2002年1月、B氏は、同社を相手取り、25年以上に及ぶ昇格差別、人権侵害による
経済的・精神的損失として4,500万円の損害賠償と謝罪を求める訴訟を富山地裁に起こしました。
2005年、富山地裁は同社に対し1,365万円の支払いを命じる判決を下しました。
その後、控訴審で1審判決の金額に上乗せした賠償金を支払うことで和解しました。

原告のBさんは、家族と生活を守るために、25年以上も我慢を強いられてきました。
この裁判は、今日の「公益通報者保護法」制定のきっかけを作りました。
しかし、内部告発する者を保護することを目的にしてできた法律ですが、
実際に内部告発することは、現代の企業社会において、余程の精神力がないとできません。
通常、内部告発者は、四面楚歌に逢って、精神的に多くの負担を背負う結果になってしまいます。
一個人と、企業という組織とが戦うことになるからです。

同じ、オリンパスでも、ウッドフォード元社長の告発は、全く別次元の破壊力がありました。
覚悟の上での告発でしたので、今後の動向を注目しています。

一方、米国では、内部告発ではありませんが、
史上最高額3億3300万ドルの和解金を獲得した、エリン・ブロコビッチ事件が有名です。
このくらいの和解金を獲得できれば、組織と戦う意味もありますが、
訴訟社会の米国とは、全く風土・環境が異なる日本では、想像できない結果です。
なお、この事件は、ジュリアロバーツ主演で映画にもなっていますが、
ジュリアロバーツは、この映画で、アカデミー賞主演女優賞を獲得しています。余談ですが。
(明日へ続く)
コメント
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