この冬は過去に希の暖冬少雪ですが、北海道に移住した40年以上前はもっと寒かったなあ。 自然体験活動を生業として始めた頃は厳冬期にも道東へもネイチャーツアーをしていました。 零下20度ともなると、釣り上げたワカサギがピチピチと氷の上に跳ねたかと思うと瞬間冷凍されたものでした。 そんな頃の思い出です・・・
[発行日]=2001年1月17日 北海道新聞夕刊コラムより 改編
[見出し] シャボン玉 凍り、水晶玉 高木晴光(自然遊びのすすめ)/北海道
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「そーっと、吹いてください。やさしくね」
彼女は、半信半疑の神妙な顔つきで、ストローに息を吹きこみ始めます。そう言った私も、一緒になって口をすぼませ、わずかな息を冷たい大気の中にそーっとはき出すまねをしています。ストローの先に小さなシャボン玉が現れました。 マイナス二十数度、厳寒の東大雪のピィーンと張りつめた大気の中で、七色の小さな渦巻きを幾つも回転させながら、シャボン玉は少しずつ大きくなってゆきます。直径十センチくらいになったところで息を止めると、その回転がヒューピタッと突然に止まります。
普通は、ここで先端をちょっと振るとシャボン玉は、空に旅立つのですが、この寒さの中ではそうはいきません。止まると同時に表面がパリっと瞬間冷凍されてしまうのです! 繊細で透明な水晶玉のできあがり。手袋の上から雪面に置くと、風に吹かれてコロコロと転がってゆくのです。「屋根まで飛ぶ」のではなく、「森の奥まで転がって」こわれて消えてゆくのです。ちょっとしくじると、上半分だけが消えてしまいます。
でも、それも小さなロウソクを灯(とも)したくなるような素敵(すてき)な氷の器(うつわ)となります。ミクロの薄さの氷は、ほんの少しだけ私たちに冬の自然の不思議さを楽しませて、こわれて消えてゆくのです。
ところで、シャボンって、いい響きの言葉ですよねえ。バブルや泡って言ってしまうと、うたかた過ぎて物悲しい感じがしますが、シャボンって言うと、壊れて消えても…、「いいよ!」って感じがしませんか? 一生懸命苦労して、ちょっとだけよい目にあって消えてゆく…。うーん、人生の理想だなあ!?
(北海道自然体験学校NEOS 高木晴光)
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