熟年の文化徒然雑記帳

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PS:ジョセフ・S・ナイ「グローバル・サウスとは何なのか? What Is the Global South?」

2023年11月09日 | 政治・経済・社会時事評論
   プロジェクト・シンジケートに、ジョセフ・ナイ教授が、「グローバル・サウスとは何なのか? What Is the Global South?」を投稿した。

   「グローバル・サウス」という言葉は、今日常に使われている。代替の略語が存在しない場合、政治家やジャーナリストは、当面は「グローバル・サウス」を使い続けるだろうが、世界をより正確に説明したいと考えている人は、このような誤解を招き、ますます負荷がかかる用語に注意する必要がある。と言う。
   しからば、どうするのかと言うことには全く触れてはいないが、「グローバル・サウス」に関して、現在の国際情勢を語っていて興味深いので紹介したい。

   地理的には、この用語は赤道よりも北に位置する 54 か国とは対照的に、赤道より南 (南半球) の 32 か国を指す。 しかし、世界の人口のほとんどが(世界の陸地の大部分と同様に)赤道より上に住んでいるにもかかわらず、この言葉はしばしば世界的多数派の略語として誤解を招くような形で使用されている。 例えば、世界で最も人口の多い国インドと、2番目に人口が多い中国がグローバル・サウスのリーダーシップを巡って争っており、両国とも最近その目的で外交会議を開催しているという話をよく耳にする。 しかし、どちらも北半球にありサウスではない。
   したがって、この用語は世界を正確に説明するというよりは、政治的スローガンに近いもので、 この意味で、あまり受け入れられない用語に代わる婉曲的な代替表現として注目を集めているようである。 冷戦時代、米ソ両陣営に属さない国々は「第三世界」に属すると言われていた。 非同盟諸国は 1955 年にインドネシアのバンドンで独自の会議を開催し、現在でも 120 か国が弱い非同盟運動を構成している。
   それにもかかわらず、1991 年のソ連の崩壊によって、非同盟の第三世界という考えはもはやあまり意味をなさないようになって、一時期、「後進国」を指すことが一般的になったのだが、この言葉には軽蔑的な響きがあったため、人々はすぐに「発展途上国」を指すようになった。
   この用語は、すべての低所得国が発展しているわけではないが、国連外交の文脈では有用であることが判明した。 77 か国グループ (G77) は現在 135 か国で構成されており、各国の集団的な経済的利益を促進するために存在している。 しかし、国連の枠外では、この組織が意味のある役割を果たすには、加盟国間の相違がありすぎる。

   もう 1 つの流行用語は「新興市場」である。これは、インド、メキシコ、ロシア、パキスタン、サウジアラビア、中国、ブラジルなどの国々を指す。 2001年、ジム・オニール氏は、ブラジル、ロシア、インド、中国を高い成長の可能性を持つ新興国として特定する論文の中で、頭字語BRICという造語を考案した。 同氏は投資分析を提供していたが、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を含む一部の政治指導者は、米国の世界的影響力に対抗する潜在的な外交プラットフォームとしてこのグループを利用した。
   一連の会合を経て、2009年にロシアのエカテリンブルグで第1回BRICs首脳会議が開催された。翌年南アフリカが加わって、このグループはBRICSとなった。 そして、今年8月の第15回BRICS首脳会議で、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、新興市場国6か国(アルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)が2024年1月1日にBRICSに参加すると発表した。
   BRICSは会議開催団体となって以来、しばしばグローバル・サウスの代表とみなされてきた。 しかし、南半球からの加盟国はブラジルと南アフリカ(そして現在はアルゼンチン)だけであり、第三世界の政治的代替国としてさえ、BRICSは概念的にも組織的にもかなり限定されている。 加盟国のうち少数は民主主義国家だが、大部分は独裁国家であり、多くの国が相互に紛争を続けている。例えば、インドと中国はヒマラヤ山脈の係争中の国境をめぐって争った。 エチオピアとエジプトはナイル川の水をめぐって紛争を抱えている。 そしてサウジアラビアとイランはペルシャ湾における戦略的影響力をめぐる競争相手である。 さらに、ロシアの参加は、グローバル・サウスを代表するというあらゆる主張の物笑いである。

   この用語の主な価値は外交的なものである。 中国は、世界的な影響力をめぐって米国と競争しているが、実質的には、北半球の中所得国であり、自らもグローバル・サウスの中で重要な指導的役割を果たす発展途上国であると表現することを好む。 それでも、最近北京を訪れた際の中国の学者たちとの会話の中で、私は彼らの間に違いがあることに気づいた。 この用語を有益な政治ツールと見なす人もおれば、 より正確な用語としては、世界を、高所得国、中所得国、低所得国に分けられるだろうと示唆する者もいた。 しかし、それでも、すべての低所得国が、同じ利益や優先事項を持っているわけではなく、たとえば、ソマリアとホンジュラスとはまったく異なる問題を抱えていると言った具合である。
   ジャーナリストや政治家にとって、高所得者、中所得者、低所得者という用語は、簡単には理解できず、見出しにもうまく収まらない。 代わりの略語が見つからないため、彼らは今後も「グローバル・サウス」に依存し続けるだろう。 しかし、世界のより正確な説明に興味がある人は、このような誤解を招く用語に注意する必要がある。

   以上が、ナイ教授の論文要旨である。
   「グローバル・サウス」には、確たる概念もなく定義もなく具体的な組織もなく、各自が思い思いの考えで、分かったような気がして議論している。のであろうか。
   日経には、
   グローバルサウスとはインドやインドネシア、トルコ、南アフリカといった南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称で、主に北半球の先進国と対比して使われる。世界経済における格差など南北問題の「南」にあたる。実際に領土が南半球に位置しているかにかかわらず、新興国全般を意味する場合が多い。特に近年、民主主義と権威主義の分断のなか中立を貫くスタンスをとる特徴で注目されている。また冷戦期に東西双方の陣営と距離を置いた「第三世界」を表現するときにも使われる。

   私は、欧米先進国と日本・オーストラリア・ニュージーランドそれに東南アジアの先進国など、自由市場経済の資本主義かつ民主主義の先進国を「グローバル・ノース」と考えていて、それ以外の独裁的専制国家や新興国や発展途上国などを「グローバル・サウス」だと考えている。
   民主主義体制を取る先進国社会が、今日、人類の到達した最も成熟した進歩的な高度な文明段階だと思っているので、「グローバル・サウス」はその対極だという考えである。
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