熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

京都:能の旅~鞍馬山・僧正ガ谷

2016年04月30日 | 花鳥風月・日本の文化風物・日本の旅紀行
   鞍馬寺を訪れたのは、能「鞍馬天狗」の舞台となった僧正ガ谷に行ってみようと思ったのだが、もう一つは、京都の桜を見たいとも思って、唯一、遅咲きの桜が残っているだろうと期待しての旅でもあった。
   山門を潜った裏にある阿吽の狛虎の横に、奇麗に桜が咲いていて、幸先が良かった。
   
   
   

   鞍馬寺の桜は、雲珠桜というとかで、どの桜だろうと思ったら、鞍馬山に咲く桜の総称だと言う。
   今、本殿金堂前の広場には、濃いピンクの手毬のような豪華な房状の八重桜をはじめ、薄いピンクや微妙に色合いや佇まいの違った桜が満開で非常に美しい。
   もう、何週間も前に桜の季節が終わって、京都の名所も殆ど葉桜なのだが、この鞍馬山は、京都のやや北にあって標高も高いので、遅咲きの八重桜が最盛期なのであろう。
   グリーンがかった右近も奇麗に咲いていて、鞍馬の桜を見たくて来たので幸せであった。
   ここから、遠く、比叡山が遠望できる。
   
   
   
   
   
   
   
   

   さて、この寺には、義経の故地が随所にあって、中腹の金堂までには、牛若丸として7歳から10年間住んだと言うところに、義経公供養塔が立っているのだが、大半は、金堂から奥の院へ向けての急な山道の中にある。
   まず、「息つぎの水」。牛若丸が東光坊から奥の院へ兵法の修行に通う途中に、清水を汲んでのどの渇きを潤したと言う。
   次は、「背比べ石」で、牛若丸が奥州に下る時に名残を惜しんで背丈を比べたという平たい石板だが、1メートルもないので、真偽は怪しい。
   このすぐそばに、岩盤が固くて地下に根を張れない杉の根が浮き出た「木の根道」が、面白い造形を作っていて興味深い。牛若丸が兵法の稽古をしたと言うところだと言うことだが、確かに、ここで縦横無尽に飛び跳ねるのは大変であろうと思う。
   
   
   
   
   
   
   

   能「鞍馬天狗」は、次のようなストーリー。
   鞍馬山の東谷の僧が平家一門の稚児たちを連れて花見に行くのだが、花見の場へ見知らぬ山伏が現れて、興をそがれたので、一行は立ち去る。牛若丸が一人だけ居残り、山伏に言葉をかけて一緒に桜を眺め、山伏は桜の名所を案内し、自分は鞍馬山の大天狗であると明かして飛び去る。翌日、小天狗たちが出現して太刀の稽古をしている所へ牛若が現れる。大天狗が彦山、白峰、大山などの天狗を引き連れて現われ、威勢を示し、牛若に飛行自在の兵法を伝授し、縋りつく牛若を振り切って守護することを約束して消えて行く。

   今月5日に、国立能楽堂で、観世流の「鞍馬天狗」を鑑賞した。
   シテ/山伏・天狗は観世恭秀、子方/牛若丸は武田章志、ワキ/僧は工藤和哉

   この山伏は、僧正ガ谷に住む大天狗だと言うことなので、義経の兵法の修行も、この僧正ガ谷で行われたと言う設定であり、鞍馬山の花見と言うのも、先に触れた雲珠桜を愛でるイベントであったのであろう。
   この能では、山伏が牛若に恋心を抱く稚児愛が描かれていると言うことだが、それには、このような何となく雅と妖艶さがかった桜が似つかわしいような気がする。

   この僧正ガ谷には、伝教大師が刻んだと言う不動明王を安置した不動堂と義経を護法魔王尊の脇侍「遮那王尊」として祀った義経堂がある。
   見上げるような巨大な杉が聳え立つ鬱蒼とした森厳な気の満ちた、まさに、霊地に相応しい雰囲気が漂っていて、しばらく心地よい冷気に触れて憩っていた。
   
   
   
   

   この僧正ガ谷から、奥の院の魔王殿までは少し距離があって、そこからは、一挙に急な下り坂で、貴船に至る。
   この鞍馬寺へは、鞍馬駅側の山門から入る本来のルートと、この貴船の西門から入るルートがあるのだが、西門から奥の院までの500メートルの上り坂が急峻なので、鞍馬口からの入山の方が楽ではないかと思っている。
   しかし、鞍馬温泉で宿を取っているので、少し汗をかいてから楽しもうと思ってと、元気な昔のお嬢さんたちが、すれ違って登って行った。
   余談ながら、この鞍馬寺へ来る外人観光客は殆ど白人で、嵐山や京都市内で闊歩している中国人観光客は、全く見かけなかった。
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