熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ジム・オニール・・・とうとう、好況到来か

2018年01月18日 | 政治・経済・社会
    先週のProject Syndicate に、Jim O'Neill の「Good Times at Last?」が掲載された。
   
   前例のない程政治的リスクや巨大な地政学的再編が勃発している今日この頃だが、世界的に経済的な代表指標は、ここ数年来、良好のように思われる。
   しかし、今年のグローバル経済の成長率が、4%を超えるかどうかは、主要な中央銀行が、適切な金融政策のバランスを叩き出す能力があるかどうかにかかっている。
   と説くのである。

   昨年、The Global Economy’s Surprising Resilienceを書いたが、その時のインディケーターの大半が上向き、良くなっているとして、今年度の楽観的な見通しを、韓国月例貿易額の成長率South Korea’s monthly trade dataと購買担当者景気指数Purchasing Managers’ Index (PMI) の2指標を利用して、解説しているのが面白い。

   まず、韓国の貿易実績だが、2017年度は、15.8%と1956年以降最高を記録している。昨年は、ユーロ危機とコモディティ価格ダウンを危惧したが、それ程のこともなく、この貿易指標のアップは、グローバル貿易の縮小を予言していた人々に強烈なブローとなった。

  一方、PMIは、世界的に、2000年以降で、最高水準に達している。
  英国でさえ、EU同様に数値が上昇しており、グローバル経済環境がこのまま回復して行くのなら、成長抑制要因であった筈のBrexitにも拘らず、英国のEU離脱は幸運に恵まれる。とさえ言う。

   もう一つ注目すべき指標は、中国の成長で、特に、サービスと国内消費の増加である。
   この二つの成長指標は、中国経済のみならず、中国市場を目指してコモディティや工業製品を輸出するほかの国の経済をも利する。
   中国経済については、これまで、いわばアメリカの植民地経済の様相を呈したと言うか、輸出経済依存度が高くて、「新常態」への構造改革政策で、内需主導型の経済への移行が緊急時であったのだが、オニールの言うように、サービスと国内消費の比率が拡大しつつあると言うのなら、グローバル経済には朗報であろう。

   2018年のグローバル経済成長予測が、4%、ないし、それ以上であっても、可能である。と言うのである。
   
   経済成長が加速すれば、米国連銀は、金利を上げるであろうし、他の主要中銀も、これまでのような異常な金融緩和策から脱却するであろう。
   しかし、グローバル経済が、真に、比較的高い安定した成長軌道に回復するのであれば、金融引き締め策が経済を害したりすることはなく、インフレ台頭の強い兆候を待つまでもないであろう。
   グローバルベースの政治的感心だが、多くの危機的な状態が続いているにも拘らず、政治的リスクについては、無関心気味である。
   米国の中東政策や朝鮮半島情勢に対するリーダーシップの欠如や、ヨーロッパの直面する長期的な挑戦など、深刻な問題が多く存在するので、投資家は、これらに十分注意を払うべきである。と説いている。

   財政状況が、今日の循環的強化の結果として、過度な金融引き締め政策を取らない限り、この10年間のグローバル経済パフォーマンスは、これまで誰もが考えていたよりは、更に良くなるであろう。と言う。

   系統立てて、今日のグローバル経済を勉強している訳ではないので、これだけのオニールの論評で、云々するのも何だが、BRIC'sをコインした経済学者であるから、多くの経済指標を駆使しての経済予測であろう。
   アメリカの株価が最高値をクリアし、日本も、グローバルベースでの経済的地位の低下傾向には、不安はあるが、日経平均株価が、2万4000円をオーバーしたと言うから、少なくとも、ムードとしては、グローバル経済は、好調なのであろう。

   ジム・オニールが、”my three decades of experience in global financial markets leads me to believe that the economic situation is not quite as straightforward.”
   と言っているように、経済情勢など直線的ではないのであろうが、経済がサイクルを打つことは、歴史が証明しており、「山高ければ谷深し、その逆も真なり」と言うことであるから、2008年の経済的大惨事を考えれば、ぼつぼつ、山が来ても不思議ではない時期でもあろう。

   とにかく、トランプが、あれ程、異常な大統領職を遂行していて、さまざまな政治問題を起こしながらも、アメリカのマクロ経済は、好調であり、グローバル経済も、格差拡大を問題にしなければ、まずまず、順調と言うところであろうか。
   
   さて、17日、トランプ大統領は、FakeNews Awardsを発表した。
   その第一位は、ニューヨークタイムスのNov. 14, 2016のクルーグマンのコラム「Trump Slump Coming?」。
   その直後の16日に、私は、”ポール・クルーグマン・・・Trump Slump Coming?”を、このブログに書いた。
   私は、クルーグマンは、
   ”選挙直後には、グローバル不況が即座に到来すると示唆したが、トランプニズムのその効果が出るのは、もっと後であって、1,2年、経済成長が加速されると考えても驚くべきではない”と言っており、
   このコラムは、長期的な視点を考慮すれば、決して、間違ってはいないし、FakeNews ではないと思っている。
   いずれにしろ、経済は動くものであり、どんな正しい経済政策を打っても反作用を誘発して、結果はスキューする上に、経済学の決定版はあり得ないので、正確な予測などは不可能である。と思っている。
コメント
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