今回のクルーグマンのニューヨークタイムズのコラムは、「Trump Slump Coming?トランプ不況が来るのか」。
冒頭から、クルーグマンは、ドナルド・トランプをホワイトハウスに送り込むのは、大変なミステイク。手に負えない気候変動を制御する、恐らく、最後であり最高のチャンスを葬り去ると言うことを考えただけでも、その結果は、世界の終末を予言するほどの不幸である。と述べている。
ところが、面白いのは、選挙直後には、グローバル不況が即座に到来すると示唆したが、トランプニズムのその効果が出るのは、もっと後であって、1,2年、経済成長が加速されると考えても驚くべきではないと言っていることである。
一般原則では、長期的に、社会にとって良いこと、経済にとって良いことは、今後しばらくの間、経済状況が良いかどうかとは関係がないと言うのである。
気候変動に対する対応を取りそこなうことは、文明を破壊することであっても、これによって、来年の民間消費支出が削減されるかどうかは分からない。
トランプの貿易政策についても、保護主義に回帰し貿易戦争をやれば、世界経済を更に貧困化させ、特に、製品製品の輸出には市場の開放を必須とする貧困国を追い詰めることとなる。かといって、トランプ主義的な関税が、不況を引き起こすかどうかは分からない。輸出が減り輸入が減れば、多少はともかく、雇用の削減を惹起するけれど。
Brexitで実証済みなのだが、Brexitは英国を、長期的には、貧しくさせるであろうし、大方の予測もそうであったが、注意深い経済的な理論に基づいたものではなかった所為もあって、今現在は、Brexit不況は起こっていない。
一般論とは違って、トランプ政府も、間違った理由で正しい政策を打つかも知れない。
8年前、世界経済が深刻な財政不況に陥った時、過度の財政出動に抵抗が強かったものの、結果的に、巨大な財政赤字と高いインフレ経済に突入したが、これが、むしろ、経済には良かった。
しかし、今や、権力は、徳と高潔さを持ち合わせない人物の手中に陥ってしまったとして、
クルーグマンは、トランプの富裕層や資金を潤沢に持っている企業への大盤振る舞いとなる大幅減税策については、オバマ時代の5倍もの規模だが、次の10年間に4.5兆ドルの財政負担をかけるだけで、経済刺激効果は殆どない誤った政策であり、また、膨大なインフラ整備支出を公約しているが、やれるかどうかは怪しいと説いている。
しかし、偶然に実施された誤った財政刺激であっても、短期的には、やらないよりはやる方がましだと言うあたりは、ケインジアンである。
短期的には、即座のトランプ不況を期待すべきではないと再説している。
長期的には、トランプ主義は、経済には悪いのだが、政策次第では、即座に不況になるとは限らない。しかし、公務員の質や独立性が害され、新しい経済不況に突入した場合には、財政改革を取りやめると、対応の準備が出来ていないので混乱をきたす。と言う。
更に、トランプ主義の政策は、特に、アメリカの労働者階級を助けるのではなく、害する。 Make America great again で、古き良き時代を蘇らせると言う夢の約束は、悪い冗談( the cruel joke )であったことを暴露する。と言うのである。
先日のブログで、私は、トランプのMake America great againに対して、アメリカの労働者階級プア―ホワイトが、熱狂して雪崩を打ってトランプ支持に回ったが、本来、共和党は、強者を益し弱者に厳しい政党であって、支持者であったプア―ホワイトの夢を壊して、間違いなく、期待が費える可能性が高いと言えよう。と書いたが、クルーグマンも、私以上に厳しく「悪い冗談」だとまで言っている。
私が注目するのは、ポピュリズムに煽られた大衆の選択が、如何に根無し草で危ういものなのかと言うことで、今、ヨーロッパなどにも広がりつつあるネオナチズムなど歴史をひっくり返すような思想運動の台頭を非常に憂えている。
さて、トランプ現象についてだが、トランプ自身が、不動産業で成功したビジネスエリートであっても、政治家としては、全くの素人であり、その人物が、世界唯一の覇権国家のトップに上り詰め、今や、世界最高の権力者として君臨するのだが、
私自身は、トランプが、大統領選中などで公約した政策や公言した思想哲学などが、真にトランプの頭の中にある信念なり考えそのものなのかどうかは分からないし、まして、実際にホワイトハウスに入って現実を知れば、どのように変わるのか、そして、実際の施政はどうなるのか、殆ど未知数に近いと思っている。
可能性には疑問もあろうが、既成観念に囚われない斬新で革命的な政策を実現して、暗礁に乗り上げていて、殆ど危機状態にあるアメリカの政治システムや経済社会構造を大きく変革し、右傾化の傾向は強いであろうが、世の中を変えるかも知れないと言う気も、全くしないわけではない。
アメリカの大統領の権限は極めて大きいのだが、必ずしも、トランプ一人の力で、アメリカの政治がすべて動くわけではなく、いくらでも、カウンターベイリング・パワーが機能するであろうし、チェック機能が働くのであろうから、大きくのりを越えることのないように祈りたい。
少なくとも、クリントンンが大統領になった場合には、不確定要素は少なかったであろうけれど、殆ど、先は見えているし、大きく世の中が変って良くなると言う期待は持てなかったであろうことも事実であろう。
それに、クルーグマンの指摘していたように、長期的なトレンドはともかく、短期的には、経済的予測さえ難しいと言うことであり、トランプ選出後のドルの動静や株価の動きを見ても、全く、予測を超えた動きをしており、ドラッカーが言っていたように、益々、不確実性の高い断絶の時代に突入して行くと言うことである。
さすれば、予測はともかく、新しい世界と時代の潮流を受けて立つ以外に道はない。
最たる課題先進国日本の将来が、益々、試練に立つと言うことである。
冒頭から、クルーグマンは、ドナルド・トランプをホワイトハウスに送り込むのは、大変なミステイク。手に負えない気候変動を制御する、恐らく、最後であり最高のチャンスを葬り去ると言うことを考えただけでも、その結果は、世界の終末を予言するほどの不幸である。と述べている。
ところが、面白いのは、選挙直後には、グローバル不況が即座に到来すると示唆したが、トランプニズムのその効果が出るのは、もっと後であって、1,2年、経済成長が加速されると考えても驚くべきではないと言っていることである。
一般原則では、長期的に、社会にとって良いこと、経済にとって良いことは、今後しばらくの間、経済状況が良いかどうかとは関係がないと言うのである。
気候変動に対する対応を取りそこなうことは、文明を破壊することであっても、これによって、来年の民間消費支出が削減されるかどうかは分からない。
トランプの貿易政策についても、保護主義に回帰し貿易戦争をやれば、世界経済を更に貧困化させ、特に、製品製品の輸出には市場の開放を必須とする貧困国を追い詰めることとなる。かといって、トランプ主義的な関税が、不況を引き起こすかどうかは分からない。輸出が減り輸入が減れば、多少はともかく、雇用の削減を惹起するけれど。
Brexitで実証済みなのだが、Brexitは英国を、長期的には、貧しくさせるであろうし、大方の予測もそうであったが、注意深い経済的な理論に基づいたものではなかった所為もあって、今現在は、Brexit不況は起こっていない。
一般論とは違って、トランプ政府も、間違った理由で正しい政策を打つかも知れない。
8年前、世界経済が深刻な財政不況に陥った時、過度の財政出動に抵抗が強かったものの、結果的に、巨大な財政赤字と高いインフレ経済に突入したが、これが、むしろ、経済には良かった。
しかし、今や、権力は、徳と高潔さを持ち合わせない人物の手中に陥ってしまったとして、
クルーグマンは、トランプの富裕層や資金を潤沢に持っている企業への大盤振る舞いとなる大幅減税策については、オバマ時代の5倍もの規模だが、次の10年間に4.5兆ドルの財政負担をかけるだけで、経済刺激効果は殆どない誤った政策であり、また、膨大なインフラ整備支出を公約しているが、やれるかどうかは怪しいと説いている。
しかし、偶然に実施された誤った財政刺激であっても、短期的には、やらないよりはやる方がましだと言うあたりは、ケインジアンである。
短期的には、即座のトランプ不況を期待すべきではないと再説している。
長期的には、トランプ主義は、経済には悪いのだが、政策次第では、即座に不況になるとは限らない。しかし、公務員の質や独立性が害され、新しい経済不況に突入した場合には、財政改革を取りやめると、対応の準備が出来ていないので混乱をきたす。と言う。
更に、トランプ主義の政策は、特に、アメリカの労働者階級を助けるのではなく、害する。 Make America great again で、古き良き時代を蘇らせると言う夢の約束は、悪い冗談( the cruel joke )であったことを暴露する。と言うのである。
先日のブログで、私は、トランプのMake America great againに対して、アメリカの労働者階級プア―ホワイトが、熱狂して雪崩を打ってトランプ支持に回ったが、本来、共和党は、強者を益し弱者に厳しい政党であって、支持者であったプア―ホワイトの夢を壊して、間違いなく、期待が費える可能性が高いと言えよう。と書いたが、クルーグマンも、私以上に厳しく「悪い冗談」だとまで言っている。
私が注目するのは、ポピュリズムに煽られた大衆の選択が、如何に根無し草で危ういものなのかと言うことで、今、ヨーロッパなどにも広がりつつあるネオナチズムなど歴史をひっくり返すような思想運動の台頭を非常に憂えている。
さて、トランプ現象についてだが、トランプ自身が、不動産業で成功したビジネスエリートであっても、政治家としては、全くの素人であり、その人物が、世界唯一の覇権国家のトップに上り詰め、今や、世界最高の権力者として君臨するのだが、
私自身は、トランプが、大統領選中などで公約した政策や公言した思想哲学などが、真にトランプの頭の中にある信念なり考えそのものなのかどうかは分からないし、まして、実際にホワイトハウスに入って現実を知れば、どのように変わるのか、そして、実際の施政はどうなるのか、殆ど未知数に近いと思っている。
可能性には疑問もあろうが、既成観念に囚われない斬新で革命的な政策を実現して、暗礁に乗り上げていて、殆ど危機状態にあるアメリカの政治システムや経済社会構造を大きく変革し、右傾化の傾向は強いであろうが、世の中を変えるかも知れないと言う気も、全くしないわけではない。
アメリカの大統領の権限は極めて大きいのだが、必ずしも、トランプ一人の力で、アメリカの政治がすべて動くわけではなく、いくらでも、カウンターベイリング・パワーが機能するであろうし、チェック機能が働くのであろうから、大きくのりを越えることのないように祈りたい。
少なくとも、クリントンンが大統領になった場合には、不確定要素は少なかったであろうけれど、殆ど、先は見えているし、大きく世の中が変って良くなると言う期待は持てなかったであろうことも事実であろう。
それに、クルーグマンの指摘していたように、長期的なトレンドはともかく、短期的には、経済的予測さえ難しいと言うことであり、トランプ選出後のドルの動静や株価の動きを見ても、全く、予測を超えた動きをしており、ドラッカーが言っていたように、益々、不確実性の高い断絶の時代に突入して行くと言うことである。
さすれば、予測はともかく、新しい世界と時代の潮流を受けて立つ以外に道はない。
最たる課題先進国日本の将来が、益々、試練に立つと言うことである。