日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

役目を終えた衣料専門商社

2019-10-02 12:45:40 | ビジネス

一部新聞などで報道された「サンモトヤマの自己破産」。
WWDJapan:サンモトヤマが自己破産 負債総額9億7150万円

サンモトヤマと聞いても、どのような企業だったのか知らない方のほうが多いと思う。
海外のブランドと契約をし、日本総代理店としてブランド品を扱うという専門商社だったからだ。
普段、私たちが目にするのは海外のブランド名だけなので、そのブランド品を輸入している代理店などはいわゆる「黒子」のような役割だ。
この「黒子」となっている衣料商社が、苦境に立たされている。
3年ほど前だっただろうか?三陽からバーバリーが撤退し、英国バーバリーが日本支社を設立。
現在百貨店で展開されている「バーバリー」の店舗は、すべて日本支社によるものだ。
と言っても、10年前までは三陽が百貨店と交渉し、売り場を確保し、事業展開をしていた、ということを考えると、三陽側としては「ブランドを紹介し、ブランド力をつけさせた上、契約解消となった」という、気持ちもあるのでは?という気がしていた。
事実、バーバリーというブランドが低迷していた時も、我慢強く丸善と一緒に、特別なブランドイメージ維持のための努力をしてきたからだ。

そして今回のサンモトヤマの自己破産は、戦後日本のファッションを支え、海外のファッションを紹介しながら、ブランドそのものを育ててきた衣料専門商社の終焉のような気がしてくる。
その要因の一つが、海外の有名ファッションブランドそのものが、LVHMのような企業に次々と買収され、LVHMが積極的に日本支社での展開をするようになった、ということもあるかもしれない。

元々海外のファッションブランドそのものは、自国以外の国でビジネス展開ができるほどの力が無かったように感じている。
だからこそ、三陽やサンモトヤマのような衣料専門商社との販売契約を結ぶことで、日本でのビジネス展開ができるようになったと考えるからだ。
それを示すように、LVHMなどが積極的に有名ファッションブランドを買収し、傘下に収め始めた頃から日本の商社とのライセンス契約が次々と打ち切られるようになったような印象がある。
その最初となったのが、鐘紡が契約をしていたクリスチャン・ディオールなのではないだろうか?
もちろん、日本側のブランドライセンスに対する考えも甘く、ファッションとは全く関係のない製品にまでブランドネームをつけて販売をする、ということも度々あり、本来のブランドイメージを大きく損なうようなビジネス展開をしていた、という事実もある。

ただ戦後ファッションとは無縁な生活をしていた日本の女性たちにとって、海外の最新のファッションに触れる機会を創ってきたという功績は大きいと思う。
今のように、ファッションの情報そのものが指先一つで得られるようになり、直営のショップが百貨店や路面店で展開を自由にできるようになったことで、衣料専門商社の役割は終わりに近づいているのかもしれない。

オンワード樫山が、無名のジャンポール・ゴルチェを発掘し、パリコレデビューをさせるような「世界的に活躍できるデザイナー発掘」が、生き残る方法なのだろう。



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