ファッション専門誌・WWDを見ていたら、意外なコラボレーション企画の記事があった。
スターバックスが、地域限定のグッズを全国14エリアで販売をしている、という記事だ。
WWD:「スターバックス」が全国14エリアで地域限定のグラスやマグカップを販売 各地の伝統技術にフォーカス
このような「伝統工芸品」を知らしめるきっかけとなったのは、柳宗悦などが始めた「民芸運動」だろう。「日常生活で使う道具にこそ、美しさがある=生活の中にある美」という考えは、その後様々なカタチで私たちの暮らしの中に根付いてきたと言っても過言ではないかもしれない。
例えば、10年ほど前に盛んに言われた「LOHAS」という考え方や「スローライフ」等は、直接的な「民芸運動」のような「日常生活で使う道具の美」を指しているわけではないが、自分が気に入った道具を長く使う、という考え方も「生活美」と考えられる。
何故スターバックスが、このような「地方の伝統工芸」との共同企画を始めたのだろう?
一つは、スターバックスの「社会貢献」という部分があるだろう。
「地域と共存していく」ということは、これからの企業の大命題の一つでもあるからだ。
スターバックスのような飲食店の主なお客様は、地元の生活者だろう。
地元の「手仕事」を再発見することで、地場産業の還元ということを考えているのでは?ということが考えられる。
流石に江戸切子のグラス3万8500円などは、気軽に購入できる商品ではないが、このような地方の伝統工芸に注目し、コラボレーションをするというのは、全国展開をしているからこそできる事だろう。
扱っている伝統工芸品もスターバックスらしく、コーヒーにまつわるものなので、スターバックスの愛好家にとっては手に取りやすいだろう。
場合によっては、スターバックスの愛好家ではなく、伝統工芸品の愛好家がスターバックスで購入する、ということもあるかもしれない。
WWDの記事のページには、スターバックスだけではなく、ユニクロ等の「海外の途上国の伝統的技術を使ったアクセサリー」等を紹介している。
グローバル企業を目指すのであれば、自社だけの利益を求めるのではなく、地域に対する様々な還元が求められる時代になってきている、ということでもあるのだ。
だが、グローバル企業だからこのような「地域に対する様々な還元が求められているのか?」と言えば、決してそうではないはずだ。
多くの企業は、企業がある地域の生活者から支持をされなくては、企業として成り立つことが難しい、という時代になってきている。
かつてのような「企業城下町」というような意味ではなく、企業がその地域に経済的な面(=雇用という形での経済的還元)だけではなく、文化という支援もまた行うことが求められるようになってきている、ということなのだと思う。
そのような「地域の魅力の発見」をサポートすることが、企業規模に関係なくブランド価値を高める、ということにも繋がっているということなのだ。
「グローバル=海外進出」という概念を一度壊し、自分たちの足元にある文化を再発見することで、これまでとは違うイノベーティブな発想が生まれるのかもしれない。