日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

100%の完成品ではなく、80%の製品を市場が育てる

2022-08-04 20:10:33 | ビジネス

朝、スマホでニュースのチェックをしていると、「面白いな~」という製品の紹介があった。
MBS NEWS:”風のカーテン”で飛沫を遮断!元「シャープ」の技術者集団が開発…スピード勝負で開発に取り組むベンチャー企業に密着

コメント欄には、決して好意的な内容ばかりではなかった。
「好意的ではないコメント」を読みながら、このようなスピード勝負の製品開発の場合は、むしろ好意的ではないコメントが重要なのかもしれない、という気がしたのだ。

日本の企業の場合、「新製品=100%完成品」ということを求めすぎる傾向があると、感じている。
もちろん、人の命を預かるような製品や、一つのバグが社会に大きな影響を与えるような金融システム等は、市場に出す前に何度も試作を繰り返し、安全性が確認されたものでなくては、ならないだろう。

ただ、今回のような「改良の余地あり」という状況で市場に出せる商品やシステムもあるのでは?という、ことなのだ。
随分前の話なので、現在は違うかもしれないが、GAFAの一つであるGoogleは市場に出す時80%位で十分、という考えを持っていると、言われてきた。
当然80%の出来であれば、様々なバグや不具合等が起きる。
Googleはバグや不具合が起きる事を、ある程度想定して市場にシステムを出しているのだ。
その目的は何か?と言えば、このようなITシステムの世界で最重要課題が「スピード」だからだろう。
いち早く、市場に新しいシステムを出すことで、その市場の優位性を保つことができる、という考えだ。

他にあるのは、「ユーザーにとって使いやすさ、便利さをユーザーから教えてもらう」ということもあるのでは?という点だ。
GoogleというIT企業だからこその発想だと思うのだが、「システムを考えた人の使いやすさ」というのは、ある意味「プロが使いやすい」ということかもしれない。
しかし、使う人達の多くは「ITのプロ」ではない。
むしろ「ITそのものを知らない人」という可能性のほうが高い。
だからこそ、AppleやGoogleは、「(誰もが)直観的に使える操作性」ということを求めてきたのでは?
「使いやすさ」の意味と目的が、それまでの日本の企業と大きく違っていたように、思うのだ。

そしてGoogleは、「あなたにとっての使いやすさ・便利さを教えてください」という考えを、押し出すことで「自分もGoogleに操作性等の希望を言っていいんだ!」という、企業に対する意見のハードルを下げる事に成功している。
その結果、ユーザーはGoogleという企業に対して「親しみ」を感じ、自分もGoogleのメンバーの一員という感覚を持つことに成功している(のではないだろうか?)
この「企業に親しみを持ってもらう」ことは、Googleにとって大ききブランド価値を上げるへと繋がる。

そのように考えれば、この「風のカーテン」という製品そのものは、まだまだ「開発途上」の製品かもしれない。
ただ、上述したように、生活者のアイディアが取り込まれるコトで「製品開発に生活者が参加し、企業や製品に対してのブランド価値を高める」ということができる要素がある、ということでもある。

開発にスピードが求められる製品だからこそ、このような「途上の製品を市場が育てる」という、発想が企業側にも必要な気がするのだ。