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古くて新しい「日本のレンタル業」

2021-06-16 19:55:03 | ビジネス

和楽Webに、この時期ならではの読み物があった。
和楽Web:江戸時代にも「雨傘のレンタルサービス」があった!運営していたのは、現代も続くあの会社

この記事を読むまで「雨傘のレンタルサービス」というものが、江戸時代にあったとは知らなかった。
そして読み進めるうちに「日本はレンタル業の発祥の地」では?という、気がしてきたのだ。

この「雨傘のレンタルサービス」を現在の三越百貨店や大丸百貨店が始めた頃、もう一つ日本で始まった「レンタル業」がある。
それは「貸本屋」だ。
本そのものが高価で、庶民が気軽に買うことができなかった時代は、長くあったはずだ。

例えば「源氏物語」等は、貴族階級の人たちは豪華な「絵巻物」を作ったりしてはいるが、その絵巻物の基となる物語そのものは「写本」によって、伝えられたものだったはずだ。
「写本」とはいえ、人が一文字づつ書き写すのだから、それ相当の時間と労力、それに似合うだけの費用が掛かる。
とてもではないが、庶民にはそのようなものを手にするどころか、見ることもできなかった、ということは安易に想像することができる。

それが江戸時代になると「版画」による製本ができるようになり、「写本」が「本」へと変化していく。
それでも高価は「本」は、「貸本屋」という業態の登場により、庶民が「本」を読む事ができるようになっていったのだ。
もちろん「本」を読むためには「読み書き」ができなくてはならない。
それを担っていたのが「寺子屋」だったのだ。
そう考えると、日本の文化を支えてきたのは今でいう「レンタル業」だったのでは?と、考える事もできる。

もう一つ、記事中にある「広告の役割も果たしていた」という点でも、「日本独特」だな~という気がしたのだ。
今は「環境問題に配慮して」という言葉で、それらのサービスが無くなりつつあるが、スーパーや百貨店のレジ袋などは、使う側にとっては「買い物袋」という認識だが、レジ袋を持っている人を見る側は「あ~~、○○スーパーで買い物をしたんだ」ということが、当たり前のようにわかる。
買い物先のお店のステータスのようなものを判断しているのではなく、「買い物をした」ということだけに注目している人がほとんどだろう。

それだけではなく、書店で買い物をした時何気なくつけてもらっていた「書店名の入ったブックカバー」も、同様の効果があったはずだ。
随分前に読んだ本で、海外の方が日本に来られて驚く一つにこの「書店名入りブックカバー」というものがあった。
その本には
「日本人は、広告が上手い。電車などで本を読んでいる人に、書店名入りのブックカバーをつけさせ、何気なく宣伝をしている。そして宣伝に一役買っているはずの本を読んでいる人は、そのコトを認識していない。認識していないどころか、カバーがあるため綺麗な状態で本を読むコトができる」
という一文があったのだ。
そのような視点で「書店名入りブックカバー」を見たことが無かったので、「視点を変えるとそう見えるのか!」と、驚いたのだ。

今では絶滅してしまった「レンタルレコード店」も、日本だけでしか存在しない業態だった。
それは、レコードそのものの価格が米国などに比べると高く、アイドルのレコードが欲しい世代にとって、簡単に購入する事ができなかった為に、自然発生したような業態だったからだ。
それが、時代の変化と共に「レンタルビデオ店」等に変化していった、ということは私と同世代であれば、実感としてあるはずだ。

「レンタル業」そのものは、決して日本の専売特許のような業態ではないはずだ。
しかし、「レンタル業」が文化や広告などに影響を与え、ビジネス化してきた、というのは日本だけなのではないだろうか?
そんなコトを考えながら、記事を読んだのだった。