日刊ゲンダイに、「人の心理と行動」について、興味深い記事があった。
日刊ゲンダイ:【東京五輪】五輪強行開催で自粛解除と感染拡大 人は不公平感と損に弱い
この記事は、「東京オリンピックが強行開催されたら」という前提で、専門に研究をされている方が人の心理と行動についての話が書かれている。
記事を読んで納得できるのは、専門に研究をされている方の言葉だからだ。
そして、東京オリンピックが強行開催される前の今ですら、業種別に「自粛対応策」が違うために、業界だけではなく生活者に不信感を抱かせている、という状況にある。
そのことに気づいているのかいないのか、様々な業種が以前よりも「自主的対応策」を取りながら、五月雨的に営業を再開している。
既に「不公平感」を持ち、「真面目にやっているだけ損」という気持ちが、強くなり始めている、ということなのだ。
それはビジネスをする側だけの問題ではなく、生活者自身も「1年以上自粛してきたのに、ゴールが見えないままオリンピックをするなんて、馬鹿にするのも大概にして欲しい」という気持ちの方が、勝っているような気がするのだ。
もちろん、粛々と「自粛生活」を継続されている方も数多くいるが、今の状況ではどこかの時点で雪崩を打ったように、生活者が「自粛なんてやってられるか!」という、気持ちから自粛前以上の歯止めの効かなくなってしまう、という問題を十分に含んでいると感じている。
そしてその予兆は、過去何度もあった。
国会議員さん達が、「後援会のパーティー」を開いたり、複数の議員での飲食などが報じられ、時には「直接会うことが、重要なんだ」と、嘯くようなコメントをした重鎮と言われる与党議員もいた。
このような「国を動かす人達」の行動が、報じられる度に生活者の不満は蓄積している。
そのような行動をした議員さん達は、一応に「自覚が足りず、すみませんでした」と、謝罪コメントは出すのだが、その謝罪コメントに現実味がかんじられずにいる生活者は、議員さん達が思っているよりも遥かに多い。
その謝罪の現実味が感じられない事から、少しづつ「自粛」の範囲が緩くなってきているのだ。
そして今年に入ってから「何が何でも東京オリンピックは開催する」というIOCやJOC、政府関係者の言葉などから生活者の「やってられない」気持ちは、徐々にピークに達し始めている。
「やってられない」と感じる大きな理由が、この記事にある「不公平感」と「損をしている」という感覚なのだ。
この感覚がピークに達した時に起きることは、空気をいっぱいに入れた風船がはじけるような状況と同じで、収拾がつかなくなる、ということは案に想像することができる。
だからこそ、明快な「収束の為のロードマップ」を示す必要があったのだ。
それを「気合と根性」で乗り切ろうとしてきたこと。
次々と変異株が生まれる状況。
遅々として進まないワクチン接種。
等が重なり、政府やオリンピック関係者への信頼は失墜している、という状況にある。
果たしてこのような生活者の心理と行動を、どれだけオリンピック関係者や政府関係者は理解しているのだろう。
理解していなくても、理解しようという努力をしているのだろう。
「リスク管理」の中には、「心理や行動」についても、理解をし考える必要がある。
そのような人物が、東京オリンピック関係者や政府関係者にどれだけいるのか?とても不安に感じている。