数日前になると思う、Yahoo!のトピックスに「ユニクロの160cmボディースーツ」という記事があった。
J castニュース:介助必要な子の親から、感謝の声が… ユニクロが「160cmサイズ」の子ども用ボディースーツを作ったきっかけ
「160cmの子ども用ボディースーツ」だけでは、どのような商品なのか分からない。
写真で見て初めて、新生児の頃から半年くらい(だろうか?間違っていたら、指摘をして欲しい)の間、赤ちゃんが着る肌着だということがわかる。
このような形状になっている理由は、首が座る前の赤ちゃんに肌着やロンパース(あるいは「カバーオール」)と言われる「つなぎの服」等は、寝ていても脱ぎ着がしやすいからだ。
盛んに動くようになっても、上下が繋がっているのでお腹や背中が出る心配がない、というある意味「機能子ども衣料」なのだ。
と言っても、このような肌着やロンパースを着る期間は、決して長くない。
そのため、出産祝いなどで購入すると案外高額なことに、驚くことになる。
ただ、このような肌着や服を必要としている人たちがいる、ということは社会的に知られていなかったように思う。
その背景にあるのは、おそらく身体的ハンディを持っている人たちに対して、社会的関心が低いということもあるだろうし、福祉衣料という発想が低かった(「市場が小さい」という思い込み)ということもあるだろう。
本当に市場が小さいのだろうか?
というのも、私が乳がんに罹患した時(10年前)、「日本人女性の15人に一人が乳がんになる」と言われていたのだが、今では「9人に一人」になっている。
もちろん、乳がん検診などの受診率が高くなりつつある、ということもあるとは思うのだが、冷静に考えれば相当高い確率で乳がんに罹患する人がいて、その人達の多くが「一生乳がんという病気と付き合いながら過ごす」ということになるのだ。
何故そのような話をするのか?というと、術後最初に問題となったのが「乳がん患者向けケアブラジャー」だったからだ。
私のように摘出した病巣が小さい場合(左乳房全体の1/6の摘出だった)、市販されているスポーツブラで対応することができたが、摘出した病巣が大きい場合は、ワイヤーの入ったブラは手術痕に接する為つけることができず、なおかつ「乳房パット」と呼ばれるものを入れて、左右のバランスをとる必要がある。
これらの「医療用ブラやパッド」は、高額で術後も放射線治療や薬物治療が続く患者さん達にとっては、経済的負担が大きいのだ。
私が乳がんに罹患した時ですら15人に一人だった患者数が、今では9人に一人になっている、と考えれば下着メーカーだけではなく、アパレル業界全体にとっても、決して小さな市場ではない、ということに気づくはずだ。
それは、がんに限らず他の病気の患者さんでも同じではないだろうか?
例えば、以前は「人工肛門」と呼ばれていた「ストーマ」をつけている人にとって、トイレで「ストーマ」を洗浄することは、大変な作業なはずだ。
高齢者が増えれば、今回ユニクロがつくったような形状の下着や外出着を必要とする人は、増えるだろう。
「高齢者だから、介護を必要としている人だから我慢しなさい」という発想ではなく、「その人がその人らしい生活をするには?」という視点で、様々な商品やサービスを提供しなくてはいけない時代が、既にやってきているのだ。
そう考えると、ユニクロ価格ほどではないにしても、既存のアパレルメーカーや下着メーカーにとっても市場規模は、決して小さいものではないだろうし、企業の社会的責任という視点でも、積極的に展開することが求められるようになってきているのでは、無いだろうか?