新聞各紙が、「フォーエバー21撤退」というニュースを報じている。
NHK NEWS WEB:フォーエバー21来月末に日本撤退「売上不振で赤字」
フォーエバー21本社がある米国では、既に破綻というニュースが出ているので、日本撤退は当然のことだろう。
2000年代、H&Mに始まった世界的なファストファッションブームだが、雨後の竹の子のように次々とブランドが立ち上がり、そして消滅をしていった感がある。
ブームの切っ掛けとなったH&Mについても、以前ほどの勢いは感じられない(ように思う)。
名古屋の場合、このH&Mが入っている松坂屋の向かい側にフォーエバー21があり、その裏手にはユニクロがあった。
フォーエバー21の店舗から北へ行くとGAPがあり、その先にはオールドネイビーがあった。もう少し北に行くとZARAがある。
一時期「ファストファッション通り」と言っても良いほどの、活況を呈していた場所が名古屋の繁華街・栄にあったのだ。
それが今では、H&MとGAP、ZARAの3店舗しか残っていない。
ユニクロの場合、名古屋駅の複合ビルへの移転の為の閉店、ということになっているので、フォーエバー21やオールドネイビーなどとは、撤退理由が違うにしても、ここ数年で随分ファストファッションブランドが、名古屋の繁華街から無くなってしまった感がある。
ファストファッションブランドの代表格・H&Mとユニクロ、ZARAの3店舗が残っている(GAPは「アメリカン・カジュアルブランドのSPA企業」という位置づけとして考えている)、ということを考えると「ファストファッションの終焉」と言い切ってしまうのは、早いようにも思えるのだが、残った3社も生き残りをかけ次々と新しい戦略を出している。
特にユニクロは、デザイナー起用に積極的でこれまでのファストファッションにみられた「有名ブランドの売れ筋二番煎じ」的なファッションからの脱却を図ろうとしているように見受けられる。
ZARAやH&Mは、元々自社で数多くのデザイナーを抱え、自社で「企画・商品化・製造・販売」というSPAによるビジネスを展開してきたが、ユニクロはデザイナー名を表に出すことでより「ファッション性」を高めようとしているように見えるのだ。
そう考えると、これからのファストファッションは「市場とファッションのデザイン力」が合致したうえで、SPAによる生産体制で「極力在庫を抱えない(あるいは、早期のバーゲンで売り切ってしまう)」ということが、重要になってくるということだろう。
そして日本の市場において忘れてはいけないのは、「ワークマン」の存在かもしれない。
ご存じのように「ワークマン」そのものは、ファッション産業とは基本関係が無い。
その時々の時流に合わせたファッションデザインの提案、というものは一切していない。
むしろ、着る人の意見や考え、思考といった徹底した市場重視によるアパレルづくりをしている、と言っても過言ではないと思う。
フォーエバー21そのものは、世界展開を急ぎ過ぎたのかもしれない。
ただ、名古屋店撤退前に行ったとき感じたことは「ファストファッションの一番悪い、安っぽさ感」だった。
おそらくファッションそのものは、「価格・デザイン」などがより重視されていくだろう。
逆に「ワークマン」のような「実用着」に特化することで、「実用美」へとシフトをする、ということも考えられる。
ただ忘れてはいけないのは、実店舗を持つ意味は単に「価格・デザイン」だけではなく「(肌ざわりや生地の質感などの)品質」も生活者はチェックをしている、ということだ。
ファッションの世界では当たり前だったはずの、「価格・デザイン・品質」を忘れたファストファッションが、市場から撤退をさせれらた、というのがフォーエバー21の撤退なのかもしれない。