日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

老舗だからこそ、時代の変化に敏感でなくてはならない

2019-09-23 19:02:39 | ビジネス

Yahoo!のトピックスにもあったのだが、英国大手の旅行会社「トーマス・クック」が破綻した。
BBCニュース:英旅行大手トーマス・クック、破産申請 旅行者15万人の帰国作戦が開始

「トーマス・クック」と聞いて、トラベラーズチェック(「旅行小切手」)を思い浮かべた方もいらっしゃるかもしれない。
クレジットカードが今ほど普及していない頃、学生が海外に行く時は現金以外はトラベラーズ・チェックに替えて、行くことが多かったのではないだろうか?
その時よく使われたのが、トーマス・クックだったような記憶がある。
言い換えれば、それほど「トーマス・クック」は旅行代理店としてではなく、信用の高い「総合旅行業」の顔でもあったのだ。
その「トーマス・クック」の破綻のニュースは、かつての旅行と今の旅行が大きく変化している、と感じさせるには十分だった。

破綻理由の一つに挙げられているのは、英国のEU離脱問題、欧州から近く人気のあったトルコなどの政情不安などがあるようだが、旅行代理店を利用しない旅行客が、ネットなどを利用して自分で旅行をするようになったため、ということがあるようだ。
インターネットなどによる情報収集や予約が、簡単に誰もができるようになったことが破綻の遠因になっていることには、違い無いだろう。

まだまだ日本では、ツアーによる旅行が一般的のように思えるのだが、日本を訪れる海外からの旅行客には、アジアと欧米とでは随分「旅のスタイル」が違うように感じることがある。
ここ数年「爆買い」で話題になった中国人観光客をはじめ、アジア系の旅行客の多くは、日本と同様に「ツアーに参加する」という、いわば団体旅行者が多いように思う。
確かに「ツアー」であれば、観光スポットを効率よく回ることができ、何より自分で旅行のプランを立てる手間はいらない。
逆に言えば、「自分の好きな時に、好きな場所に行く」という、「自由度」は制限されてしまう。
「自由度のある旅か、効率の良い旅か」という、二者択一をした時、アジアを中心とした国の人々は「効率の良さ」を選ぶ傾向が強いのだろう。

その一つとして考えられるのが「海外に行く」ということが、「特別なこと」という認識が強くあるからかもしれない。
地図を眺めてみても、アジア諸国は陸続きで行ける安全な観光地、というのは案外少ないようにも見える。
一方、欧州などは多くの国々が隣接しているため、「海外旅行」と言ってもその感覚のハードルは低いのでは?という、気がするのだ。
それだけではなく、オランダ・フランス・スペイン・ポルトガル・英国などはアフリカやアジアに「領土」を持っていた、という歴史的背景も「海外旅行」に対する感覚の違いがあるのではないだろうか?

おそらくトーマスクックの破綻は、上述したようなネットや格安航空などだけではなく、ネット→インターネット決済のような決済システムを含め、今という時代に遅れてしまったからなのではないだろうか?
今や海外旅行に行く為には、「トラベラーズチェック」ではなく、クレジットカードが当たり前になった。
老舗企業だからこそ、社会的信頼が高いという「ブランド価値」を認識した、時代を読み取り先取りするような発想と行動ができたはずだ。しかし多くの老舗企業が破綻する時、その時代を読み取る力が失われた時だ、ということをトーマスクックの破綻は、教えてくれているように感じるのだ。