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日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

「ファッション」という表現に苦しむグッチ

2019-05-17 19:37:29 | アラカルト

ファッション専門誌・WWD Japanに「グッチ」が発表した18-19秋冬コレクションで、「文化の盗用だ」として抗議を受け、謝罪を今年2月にしていたことが判明した、という記事があった。
WWD Japan:「グッチ」またも炎上 ターバン風ヘッドスカーフが物議を醸す  

このターバン風の帽子は「バラクラバ帽」という、名前らしい。
紹介記事の写真を見て「あ~~、インドの男性が被っている帽子」と、思う方も多いと思う。
実際、今回の「文化の盗用」として抗議をしたのもインドのシーク教徒の団体のようだ。
抗議の理由は、
「シーク教徒のターバンはファッション用のアクセサリーではなく、宗教的な信仰箇条を示す神聖なものだ。」
ということのようだ。

実は、パリ、ミラノなどの19-20秋冬のコレクションが発表されてから感じていたことの一つに「民族的」という印象があった。
「民族的=フォークロア調」というトレンドそのものは、過去にも何度かあり日本人デザイナーの高田賢三さんなどは、フォークロア調のファッションで一時代を築いたという気もしている。
と言っても、高田さんのデザインはあくまでも「フォークロア調」であり、ある特定の民族衣装などから影響を受けたというモノではなかった。
他にも、クリスチャン・ラクロワなどもフォークロア調の手の込んだ刺繍のデザインなどを、過去に発表をしていたと思う。
数多くのデザイナーが「民族的」なモノに影響を受け、それをファッションとして発表してきた、という歴史(というべきか?)はあるのだ。

しかし今回のグッチのように、炎上するようなことはなかった。
そしてグッチは今回のターバン風ヘッドスカーフだけではなく、黒人を侮蔑していると黒いタートルのセーターも、18-19秋冬コレクションで、炎上している。

これまでも「フォークロア調」のデザインは、数限りなくされてきたはずなのに、何故今炎上しているのだろう?
あくまでも想像の範囲になってしまうのだが、「(民族に対する)敬意や文化的背景の理解不足」ということのような気がするのだ。
そしてこのような「炎上デザイン」のファッションは、決してグッチだけの問題ではないような気がしている。
クリスチャン・ラクロワなどは、自身の出身アルル地方の民族的要素を積極的に取り入れていた。
高田賢三なども鮮やかな色合いなどには、民族的なニュアンスを感じさせながらも「高田賢三」というデザイナーの世界観を表現していたように思う。

インターネットの時代となり、様々な情報を得やすい時代になった。
それらの情報の中から、インスピレーションを受けファッションデザインを起こす、ということも以前より多くなってきたのかもしれない。
ただ、インスピレーションを受けるだけではなく、基となった文化的、社会的背景を知り、敬意を表するデザインでなくては、グッチのような炎上騒動が続くのかもしれない。