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応援される企業

2018-04-26 22:03:50 | ビジネス

Yahoo!のトピックスなどにも取り上げられている、任天堂の社長交代。
日経新聞:任天堂社長に古川氏、君島氏は相談役に

カリスマ的存在であった、岩田社長が病に倒れた後を引き継いだのは君島氏だった。
岩田社長が亡くなられるまでこだわっていたのが、「ニンテンドースイッチ」だったと聞く。
その「ニンテンドースイッチ」の大ヒットは、ご存じの通りだ。
朝日新聞:V字回復、任天堂が一気に「スイッチ」営業利益6倍に

発売直後から売り切れが続出し、発売開始半年たっても生産が追いつかない、という状況だったという記憶がある。
それだけではなく任天堂の人気ゲームソフト「ゼルダの伝説ブレイスオブザワールド」では、亡くなられた岩田社長をモデルとしたキャラクターが登場すると、任天堂ファンだけではなく、ゲームファンを喜ばせた。
その立役者となったのが、退任をされる君島氏だったと思うのだが、その君島氏から古川氏への引継ぎとなると、随分若返った人事という気がする。

今回の人事の発表がされると、ネット上ではこれまでの企業のトップの交代とは随分違うコメントが、あることに気づいた。
それは退任される君島氏に対する慰労と、新社長となる古川氏へのエールだ。

おそらく日本を代表する企業のトップの交代で、このようなネットの書き込みがされるケースというのは、珍しいことなのではないだろうか?
違う言い方をすれば、「退任される社長に対しての慰労や新社長に対するエール」というのは、ネットに書き込んだ人達にとって、とても近しい存在と感じる企業ということなのでは?という気がしている。

その理由は何だろう?と考えると、任天堂という企業が「自分たちの商品は、生活とは関係が無いからこそ、生活者にとって大切な存在でありたい」という思いがあり、それを製品として出し続け、それが支持されている、ということなのでは?という、気がしている。
例えば、任天堂が初めて世に送り出した「ファミコン」。
「ファミコン」の大ヒットを受け、様々な家電メーカーが次々と参入をした。
家電メーカーがつくり出したファミリー・コンピューター・ゲーム機は、任天堂の「ファミコン」よりも画質が高く、動きも滑らか(というのだろうか?)にするために高性能化したものだった。
しかし、多くのファンは高性能化したファミリー・コンピューター・ゲーム機ではなく、シンプルな任天堂の「ファミコン」を選んだのだ。
当然のことながら、参入した家電メーカーは早々に撤退をした。
何故、高性能化したファミリーコンピューターゲーム機ではなく、任天堂であったのか?というと、操作が分かり易く簡単である、ということや、コントローラーそのものが丈夫であった、ということがあると言われている。

それだけではなく、おそらく「ゲームの中に自分たちが参加できる」という仕組みがあったからでは?という気がするのだ。
それはゲームソフトを創り出した企業の力もあると思うが、顧客が企業といっしょになって「ゲーム市場」を創ってきた(あるいは、創っている)という信頼関係があり、ある種の「仲間意識」のような関係性が作られてきたのでは?と考えている。

急逝した岩田前社長は、「自分は社長という仕事をしているが、心はゲーマーだ」と、常々話していた。
その岩田前社長の思いを繋ぐことができたのが君島さんだった、と多くの任天堂ファン、ゲームファンは感じているのだろう。
と同時に古川新社長に対しては、前岩田社長のような「自分たちの仲間のような存在であってほしい」という、任天堂ファン、ゲームファンは思い・期待しているのではないだろうか?

「応援される企業」というのは、任天堂のような「顧客の心に入り込み、共感性といっしょに成長することができる企業」という気がしている。