日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

特典と売上げ

2014-08-29 20:09:52 | マーケティング

Facebookをチェックしていたら、知人の一人があるブログを紹介している人の投稿に「いいね」をしていた。
気になって、元の投稿までアクセスすると「なるほどな~」と、考えさせられる内容だった。
その内容とは、ロックバンド「ゴールデンボンバー」の「ローラの傷だらけ」について、メンバーの鬼龍院翔さんが書かれた内容を取り上げたモノだった。
ゴールデンボンバー:キリショー☆ブログ「ローラ発売一週間」

今回ゴールデンボンバーがこのシングルCDを発売する際、あえて「特典」と言う名の「オマケ」を付けずに発売をしたらしい。
その結果報告というカタチで、メンバーの鬼龍院さんがブログにアップをしたのが、ブログの内容。
このブログでとても興味深いのは「特典付き」と「特典無し」の第1週の売上げ比較をしている点だ。
詳細は省略させて頂くが、「特典付き」CDと「特典無し」CDとでは売上げが大きく違う。
「特典無し」の場合、「特典付き」の1/4にまで、セールが落ちてしまっているのだ。
と言うことは3/4の人達は、「ゴールデンボンバーの音楽」ではなく、「特典」を買いに来ていた、と言うことになる。
尚且つこの「特典」というのが、「握手券」。

この内容でおわかりだと思うが、国民的(?)アイドル「AKB48」と同じ売り方をしているのだ。
「ゴールデンボンバー」と「AKB48」と同じ結果が出るとは思わないが、実際の「AKB48」のファンの数というのは、CDセールの数字とは大きくかけ離れている、と言うことだと思う。
そして、鬼龍院さんはミュージシャンらしく「分析」をしている。

そう考えると、「人は商品やサービスそのものよりも、『特典』に引きつけられる」という見方もできる。
例えば、マックの「ハッピーセット」などは、その成功例かも知れない。
メニューそのものは代わり映えしないが、毎週のように「ハッピーセット」に付く「おもちゃ」が替わるので、子ども達(だけはないかも知れないが)は、「おもちゃ」欲しさに毎週のように、通い詰めることになる。
目的は「期間限定・数量限定・オリジナル=プレミアム」なおもちゃをコレクションしたい!と言う、欲求があるからだ。
ミスタードーナッツの「ポイントを集めて、オリジナルグッズをプレゼント」というのも、基本的な考えは同じだ。

では単純に「特典欲しさにモノを買うのか?」というと、そうとも言い切れないと思う。
「特典がつかないと、欲しいモノがない」というよりも、「欲しいものが見つからない」と言うのが、本当のところの様な気がする。
それだけ今の日本の生活者は「モノ・コト」に溢れている、と言うことだと思う。
この傾向は今に始まったコトでは無く、1980年代後半にはその傾向が現れている。
1988年の西武百貨店は、「ほしいものが、ほしいわ。」という糸井重里さんのコピーを使っている。
この頃から日本の社会は、様々な商品やサービスが溢れていた、と言うことだと思う。

だからこそ「特典」を付けるコトで、他社との差異をはかる様になったのではないだろうか?
その結果として、本体である商品やサービスの本質と生活者を視るコトよりも、目先の売上げを「成果」だと思ってしまったのではないだろうか?
日本の「失われた20年」というのは、そんなところにも原因があるのかも知れない。