朝日新聞に「乳房再建の新しい技術」という記事が掲載されていた。
朝日新聞:がん患者の乳房再建、きれいに早く 切除前に型取り
乳房そのものは「露出した臓器」なので、「臓器」という視点だけで考えれば「命が助かったのだから・・・」と言うコトを言われる方もいらっしゃる。
一方、乳房は「女性の象徴的臓器」ともいわれ、「女性の象徴」という視点で考えれば、乳房を失うと言う喪失感は、とても大きい。
その為「乳房温存術」を希望する乳がん患者さんは、多い。
私自身も乳房温存術を選択した。
と言っても、私の場合は乳房内のがんの拡がりが大きくなかったため、比較的手術による欠損も少なかったので、全摘の対象ではなかった。
ただ、早期の乳がんであっても乳房内のがんが広範囲な場合、乳房全摘という選択をせざる得ない。
実際、先日ある乳がんのセミナーで拝見した「乳房再建」のスライドには、「それは、再建とは言わない」という程、手術をしていない本来の乳房と再建をした乳房の大きさ、位置、形が大きく違っている術例がいくつか紹介されていた。
それほど、乳房の再建というのはとても高い技術が必要な「形成手術」なのだ。
その高い技術が必要な手術が、ドクター個人の技術力頼りではなく、きれいに早くという術法の開発というのは、患者さんにとっては朗報だ。
それだけではなく、他の病気などにより、体の一部を失わざる得ないようなケースにも応用できるかもしれない。
例えば、糖尿病が進行し足の指などが壊死、その為に手術をせざる得ない場合などは、病気の進行状況に合わせて、事前に型どりをしておけば、義肢を作ることが比較的簡単になるかも知れない。肉腫のような病気も同様だろう。
しかしその再建術をよくよく読んでみると、「何故、このコトに気づかなかったのか?!」と思える程、シンプル。
術前に型どりをしておけば、患者一人ひとりにあった形が作りやすいだろう、と言うのは素人でも判る。
実はこの「素人でも判る」コトに気づかないと言うコトが、専門家になればなるほどある様な気がする。
むしろ専門家であるが故に、気づかないのかも知れない。
今回の新しい術法などは、専門家であっても、発想のどこかには「素人の視点」を持ち続けるコトが大切、ということを言っている様にも思える。