日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

正月広告-3-

2012-01-07 19:36:46 | マーケティング
昨日は、ちっと違う内容をエントリさせていただいたが、今日は引き続き「正月広告」について。

お正月にだけ広告を打つ、という企業が少なからずある。
意外に思われるかも知れないが、出版社などもその一つだ。
もちろん、雑誌や新刊の広告は毎週のように新聞に掲載されるのだが、出版社の広告というのは、お正月くらいに限られている。
最近では、宝島社のように年に何度か新聞に広告を掲載する出版社もあるが、基本はお正月に限られている。

その出版社のお正月広告というのは、その出版社が力をいてている部門がその年の顔になるコトが多い、
たとえば、「週刊少年ジャンプ」が週刊雑誌として世界一の発行部数を誇っていた頃の集英社のお正月広告は、「少年ジャンプ」乃ヒーローたちだった。
小学館なども確か「少年サンデー」の創刊50周年(だったと思う)にあたる年のお正月広告は、歴代の少年サンデーのヒーローたちが登場していたと思う。

それが今年に限って言えば、一つの共通した人物像が登場していた。
新潮社は、現在日本帰化申請をしているドナルド・キーン氏、岩波書店は寺田寅彦氏、そして集英社は丸谷才一氏だった。
新潮社のドナルド・キーン氏の著作集を昨年暮れから出版し始めた、というコトもあるが、その著書の一文を大胆にも掲載している。
岩波書店の場合、随筆家・寺田寅彦ではなく、物理学者・寺田寅彦というアプローチの広告。
テーマも「防災」だった。
集英社の丸谷才一氏も、新潮社のドナルド・キーン氏のように、丸谷氏の言葉を掲載している。

よくよく考えると、各出版社と深い関係のある文筆家を正月広告として取り上げているのだが、今年ほど集まった年は無いような気がしている。
もちろん、私の記憶の中のコトなので断言できるわけではないが、その文筆家とともに掲載された言葉が、やはり「東日本大震災」後の日本人への強いメッセージとなっている。
ドナルド・キーン氏のように、日本人のつよさ(この「つよさ」は「勁」が使われている)を訴えかけている内容もあれば、岩波の寺田寅彦が物理学者としての視点で捉えた過去から学ぶべきモノ・コトを問いかけるもの、丸谷才一氏のように「日本人の持っている本来の姿」を考えさせるような文もあった。

ただ共通しているのは、その豊かな文章表現力に圧倒される、というコトだろう。
出版社は、あくまでも本を出すことが本業であって、「おまけ本」を作ることではない、といっているかのようだ。
もちろん、「おまけ本」を批判しているわけでないし、「おまけ本」を否定しているわけでも無い。

おそらく今年は、本格的な「電子書籍」元年となるだろう。
タブレット型の情報端末の種類も増え、その利便性もアプリケーションなどの充実とともに、向上するのではないだろうか?
だからこそ、「言葉」や「文章表現」を出版社として大切にしたい、という思いだったのでは?
そんなことを感じた、お正月広告だった。