はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part99 ≪亜空間 最終戦争…の前≫

2017年01月31日 | しょうぎ
≪6八と図≫

 ここから先手はどうやって勝つか。 正解手順を指せば、先手が勝てる。
 答えは―――


    [映話を“ダイヤル”する近未来]
 彼はロイ・ベイティを撃った。大男はきりきり舞いし、頭でっかちな脆い生き物の集合体のようにぐらりとよろめいた。

  (中略)

「見ないほうがいい」リックはいった。
「もう階段で見ました、プリスを」特殊者(スペシャル)は泣いていた。
「そう思いつめるな」リックはいって、ようやくふらふらと立ちあがった。「映話はどこだ?」
 特殊者(スペシャル)はなにもいわず立っているだけだった。
 しかたなく、リックは自分で映話をさがしにいき、やっとありかを見つけて、ハリイ・ブライアントのオフィスをダイヤルした。 
                         (フィリップ・K・ディック著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』より )


 フィリップ・K・ディックは1928年生まれのアメリカのSF作家。1968年に発表されたこの小説は、1982年『ブレードランナー』というタイトルで映画化されて有名になった。この原作者は、映画の完成の前に急死したそうである。
 法を犯したアンドロイドを処理(破壊)する仕事人を、映画では「ブレードランナー」と変えているが、原作では「バウンティ・ハンター」(賞金稼ぎの意味)である。また「レプリカント(複製)」と呼んでいるのも映画版の特徴で、原作はアンドロイド(またはアンディ)である。
 映画『ブレードランナー』は、近未来都市をリアルに映像で描く、というのがメインテーマになっているところがあり、それは成功しているように思われるが、小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』のテーマはまったく別のところにあり、アンドロイドとの比較によって、人間の“感情移入”とは何か、というのがテーマであるかと思われる。
 現在のネットの中に、ボーカロイドという種類の“歌手”がいる。まだそれらの存在は、人間とは違う声を持っていることを特徴として人々はそれを楽しんでいるが、やがてその技術が細やかになって進化していき、人間と区別つかないものになっていくだろう。将棋の技術で、コンピュータ・ソフトが人間棋士を凌駕しつつあるように、歌手の分野でも、他の分野でも、ロボットの繰り出す技が人間を超えるのは、もはや不思議なことではなくなってきている。
 だから、いずれは「感情」をもったロボットも登場し、人間と区別がつかなくなるかもしれない。しかし、そうだとしても、ロボットの持つ「感情」は、コピーされてつくられ学習されたものであり、するとオリジナルの“感情”というものを持った人間の、その“感情”とはなんだろう、“感情移入”する人間とはなんだろう、というテーマが浮き上がってくるのである。
 フィリップ・K・ディックの描こうとしていたことは、そのような文学的な試みだったと思われる。

 少なくとも、人間の“感情移入”がなければ、人気商売は成立せず、お金は回らない。“感情移入”をする阿呆な人間がいなければ、小説も映画も歌手も将棋もスポーツも、存在理由がなくなる。
 人間と世の中を活性化させている“感情移入”とは、なんだろうか。

 映画『ブレードランナー』の時代設定は2019年である。(この映画に登場するレプリカントと呼ばれるアンドロイドは2017年生まれで4年の寿命を持つという設定である)
 おそらく小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』のほうの時代設定は、(作中にはっきりとは書かれていないが)2000年頃と思われる。
 すでに「世界最終戦争」が起こり、戦後、そのために放射能で地球は住みにくくなっている。人間以外の生物は大変貴重で高価なものになっており、本物の生物(ペット)と偽物の生物(おもちゃ)との区別は見分けがつかないし、それをむやみに探らないことが御近所マナーになっている世界。
 そして地球が住みにくいので、火星などに移民として出ていく人も多く、その際に必要となるのがアンドロイドで、そうして植民惑星にアンドロイドが増えた。その人間型アンドロイドはすでに1990年には様々な型が生まれていた(これは作中に明記されている)という設定になっている。

 また、この小説の中には「映話」を使うシーンが多く出てくる。つまりこれは「電話」を進化させたヴィジュアル・フォンのことだが、面白いのは、この“未来”には、携帯電話(映話)が存在していないことである。だからたとえば、主人公がアンドロイドを処理する(殺す)ために追ってそれが住む部屋に入って仕事を終えたとき、その後に彼は上司に連絡するために部屋の中の「映話機」を探すのである。自分の携帯電話をもっていないから、“探す”のだ。
 そして、「映話」を見つけた主人公リック・デッカードは、“ダイヤル”を回すのであった。
 空飛ぶ自動車(ホバー・カー)が実用化され、火星移民も実現し、人間と区別の困難なアンドロイドが存在しているというのに、携帯電話がないという世界なのである。フィリップ・K・ディックが小説を書いた1968年には、スパイが「携帯型トランシーバー」を使うというシーンはすでにあったから、発想としては無線の電話機も想像はできたはずだが、それが一般の隅々にまで普及するということは、この作家の想像の範囲を超えていたということなのだろう。

 携帯電話がないのは、1982年に公開された映画版も同じである。 37年後の2019年に、火星移民、アンドロイド、飛行自動車が実現している世界が、「リアルな近未来」として描かれているということが興味深い。
 2017年の私たちから見れば、映画『ブレードランナー』の猥雑な都市風景の代表的な日本的ヴィジュアル広告が、「芸者」(強力わかもと)であって、「少女アイドル」でないことに、逆に違和感(物足らなさ)を覚えてしまう。「少女アイドル」と携帯電話の普及は、40年程前には、想像できなかったようである。


≪6五歩桃太郎図≫
 これが『桃太郎作戦』。 今、終盤探検隊はこの作戦の成否を検討している。
 5九金、6四歩、同銀、9一竜、7五金と進み―――

≪7五金図≫
 この図から、7七玉、6五桂、8八玉に、7六桂と後手が攻めた場合の検討をしている。
 以下、9八玉、7七桂成に、8九金と受け(8九香では先手負けになった)、6八ととして、冒頭の「問題図」である。
 (6八とで6七とでは7九香で先手良しなので、後手は6八ととした)

7六桂図08(6八と図)
 ここで正解手は「3三歩」である。3三同銀に「4五角」
 すなわち、「3三歩、同銀に、4五角」が正解手順。 

7六桂図09 
 これで先手が良し。
 この図の解説をする前に、3三歩を “同銀” としなかった場合について先に見ておく。

7六桂図10
 この図から、3三同桂と取る手と、それから手を抜いて7八とと攻める手を調査する。

7六桂図11
 まず3三同桂だが、これには9五角(図)が絶好手になって、この一手で先手良しが決まる。桂馬を入手して、3四に打てば、後手玉は“詰み”だ。
 9五角に7八成桂なら、やはり同金とそれを取って、3四桂と使えば後手玉は詰み。この手があるのが、8九に香ではなく“金”を打って受けた効果である。
 よって、それを後手が避けるには6七成桂しかないが、それなら5四香でやはり先手が勝ち。

7六桂図12
 先手の3三歩に、7八との場合は、以下、3二歩成、同玉、3八飛(図)と打つ。
 以下、3三歩なら、7八金、同成桂、同飛で先手が良い。 そこで、後手6七歩なら、1五桂と打って、次に7六飛、同金、2四桂の寄せをねらって先手勝ち。
 また3八飛に、3七歩には、3六香がある。

7六桂図13
 しかし後手にも、先手3八飛に、3七銀成(図)という返し技があった。以下どうなるか。
 これを同飛は、3三歩で、これは先手が負ける。
 3七銀成には、7八飛が正着で、以下、同成桂、同金。
 そこで5八飛には、6八歩、同桂成、3三歩(同桂は3四桂で後手玉必至)、4二玉、3四桂、5三玉、3五角、4四歩、6八金(次の図)

7六桂図14
 これで、先手勝ち。(後手が飛車を4八から打った場合には、この6八金に代えて5六香がある)

7六桂図09(再掲)
 というわけで、後手は先手3三歩を、同銀と取り、先手は「4五角」(図)と打つ。以下、この図が「先手良し」であることの証明をする。
 この手の意味は、第一は後手の攻め<w>7八とを「同角」と取る意味。その後は、同成桂、同金、4五角、6七歩、5七銀成が、予想される進行だが、そこで4一角と打つ(次の図)

7六桂図15
 5七銀成のところ、後手は6六歩としたくなるが、それは9二飛と打たれると、後手受けがない。(6二歩と打てないから) それで5七銀成である。
 図の4一角は詰めろではないが、6七成銀なら、3二飛、1一玉、3五香(3四歩には2四桂)と“詰めろ”をかけて、先手勝ち。
 それは後手負けなので、ここで3一歩と受ける。(3二歩だと5二角成、同歩、3一銀、1一玉、4一飛で後手受けなし)
 先手は2六香と打ち、以下、6八成銀、3五桂、3四銀、2三桂成、同銀、同香成、同角、2四飛、3二香、3四銀(次の図) 

7六桂図16
 先手勝ち。

7六桂図(再掲)
 戻って、<w>7八と以外の後手の応手を検討する。
 <x>4四銀は、4一銀、3一歩、3九香で、先手勝ち。
 他に、<y>4四歩、<z>3四歩が考えられる。

 角を追う<y>4四歩が有力だが、これには5四角と逃げた手が、後手玉への“詰めろ”になっている。(先手にとってたいへん都合の良いことだ)

7六桂図17
 3二歩と後手はその“詰めろ”を受けるが、3六香(図)と打てば、これも“詰めろに近い手”になっている。
 7八と、3三香成を、同桂なら詰まない。が、その時、7六角と桂馬を取って、これが“詰めろ逃れの詰めろ”になるのである。(ここも先手に都合よくできている)
 したがって、7八と、3三香成、同玉でどうかとなるが、3四歩(同玉は2五銀、同玉、3六角打以下の詰み)、2二玉、3三銀、同桂、同歩成、同玉、3四銀、2四玉、2五銀、同玉、1七桂以下の“詰み”となる。

 <y>4四歩の変化も、先手勝ちになる。

7六桂図18
 <z>3四歩には、2六香(図)と打てばよい。
 以下7八となら、やはり同角、同成桂、同金で先手良しだし、図で3五銀のような手なら、いきなり2三香成とし、同玉、4一角、3二香、3一飛と攻めていって先手勝ち。


7六桂図08(再掲 6八と図)
 以上の結果、3三歩、同銀、4五角があるので、この図は「先手勝ち」とわかった。


≪7五金図≫
 したがって、前回(報告part98)からここまでの検討により、これで後手7五金としたこの図が「先手良し」であると証明されたと、我々は考える。

 しかし、だからといって『桃太郎作戦』(6五歩作戦)が先手成功とは、まだ言えない。

≪9一竜図≫
 一手手を戻した≪9一竜図≫、ここで[1]7五金が先手にとって一番嫌な手と考えて、終盤探検隊はこの手以降の展開を調べてきたが、この局面はソフト「激指」もいろいろな手を挙げている。
 「激指14」(我々はずっと激指13を使ってきたが今は14を使っている)の候補手を6つめまで書いておくと次の通りである。(考慮時間は10分)
  [1]7五金  [ -388 ]
  [2]3三歩  [ -268 ]
  [3]8四歩  [ -190 ]
  [4]6六歩  [ -158 ]
  [5]5五銀引 [ -118 ]
  [6]7四歩  [ -113 ]
 しかしすでに検討した通り、[1]7五金は、先手勝てると我々は判断している。
 他の手はどうか。我々が警戒する手は[4]6六歩と、[6]7四歩である。
 それ以外の手については、検討の結果、以下の通り「先手良し」とはっきりした。
 [2]3三歩は、5四香、5三桂、8二飛、6二歩、8六玉で、先手良し。
 [3]8四歩は、3三歩、同銀、3四歩で、先手良し。
 [5]5五銀引は、5四香で先手良し。

≪7四歩図≫
 [6]7四歩(図)を調べよう。
 後手が[1]7五金と打った手をやめて、“7四歩”に代えてきたわけだが、この手の意味は、7五銀から、銀を攻めに参加させようという意味である。
 7五金と打つ手は早い攻めだが、結局6四の銀が攻めに参加できずに終わった。6四銀と出るなら、7五銀から活用するのが“筋”というもの。理にかなった手である。


7四歩図01
 先手は 3三歩

7四歩図02
 後手は7五銀とする。この手がやりたくて7四歩と指したのだから。
 これに7七玉だと、6五桂、7八玉、7六桂で先手負けなので、8五玉の一手。
 8五玉には、7四玉から入玉されると後手まずいので、今度は後手が8四金と打つ一手となる。
 先手9六玉に、そこで後手は自陣に手を戻すことになるが、3三桂3三銀がある。
 3三桂は、3四歩、9四歩、3三歩成、同玉(同銀は3四桂以下詰み)、1一角、3四玉、7三角(次の図)

7四歩図03
 この7三角は、後手9五金の一手詰を防ぐとともに、後手の狙いの7三桂打ちも消しているし、攻めては、2五銀、同玉、1五飛以下の“詰めろ”になっている。
 この図は先手優勢。 4四歩(桂)なら、5四銀で先手勝ち。

7四歩図04
 3三桂に代えて、3三銀には、3四歩と打ち、同銀に、4一銀(図)と打つ
 この4一銀に4二金は、7二飛、5二桂に、5一竜として、4一金に、5二飛成以下、後手玉に“詰み”があって先手良し。
 したがってここは3一歩と受ける。
 以下、8二飛、9四金(次の図)

7四歩図05
 先手の狙いは5一飛成だが、ここでそれを指すと8四桂で先手玉が詰むので、ここは8六歩。以下、6二歩に、5二銀成、8四桂、8七玉、7六銀、8八玉が予想される(次の図)
 (8四桂に代えて先に7六銀として先手玉に詰めろをかけるのは、6六角と王手で打ち、5五桂に、そこで5一竜で、先手勝ち)

7四歩図06
 8八玉と逃げるのがこの場合は正着で、9八玉だと、5二歩と後手が銀を取った時に、8七銀打、8九玉、7七桂、7九玉、6九金までの5手詰めが先手玉に生じる。 図の8八玉なら、8七銀打には7九玉として詰まないので、5二歩には、4二角と打って、先手勝ちが決まる。
 この図は、先手勝ち。

7四歩図07
 後手の3三銀に、先手が3四歩と叩いたとき、4二銀(図)と銀を引いた場合。
 これにも4一銀と打ちこみ、3一歩に、7三角と打ち、以下、9四金、8六歩で、次の図。

7四歩図08
 8六歩として後手の8四桂には8七玉と逃げる道をつくり、先手のねらいは4六角成である。(それを防ぐ3五銀には、5二銀成、同歩、4一飛で先手良し)
 後手は厳しく〔A〕7六銀と“詰めろ”で迫る(次の図)

7四歩図09
 我々は最初、これは7九香と打って先手良しなのだと思っていた。(ソフト「激指14」がそのような評価値を示していた)
 ところが、7九香、8四桂、同角成、同歩、7六香は、次に8三桂の好手が後手にあって、どうも先手が勝てそうにないとわかった。
 図で6六角と打ち、5五桂に、7九香も、良い結果は出てこなかった。
 しかしなにかこの図は先手に勝ちがあるはずと予感していた我々が、なんとか見つけた「先手の勝ち筋」は、この図から「6六角、5五桂、6四角成」という手順である(次の図)

7四歩図10
 アマチュア将棋の持時間の少ない終盤では見つけることの難しい手順であるが、この6四角成で先手が勝てる。
 後手がこのままなら、3三歩成として、同玉に、5五角、同銀、3五飛から後手玉は“詰み”。
 6四角成とすることによって、3三歩成を「同玉」に限定させた意味がある。(3三同銀なら、3一馬から詰むし、3三同桂は、5五馬と桂馬を取って、3四桂がある) 
 この図で、後手は<p>8四桂と、<q>5六とが考えられ、以下その2つの手を見ていく。

 <p>8四桂は、同角、同歩、3三歩成、同玉に、3六飛と打つ(次の図)

7四歩図11
 先手玉には、8五角と8七角の“2種の詰めろ”がかかっていて、ふつうならこれを防ぐのは難しいが、後手に角を使わせてしまえば、その“詰み”も2つとも消える。
 しかしこの3六飛に4四玉は4六飛があるので、ここは後手は角合するしかなく、先手勝勢が確定である。3四角なら2六桂。3五角合には、5四馬(3五飛、同銀、2五桂以下の詰めろ)で、先手勝ちだ。

7四歩図12
 後手<q>5六と(図)の場合。
 これにはまず3三歩成。これも同玉しかない。(3三同桂は5五馬と桂を取って3四桂)
 そしてこの場合は3八香と打つ。
 すると今度は後手は、「桂」を合駒に使うしかない。桂を使わせれば先手玉の安全度は高くなる。
 そうしておいて、9三角成とする。(8八角もある)

7四歩図13
 以下、9三同金、同竜となった。
 先手優勢である。

7四歩図14
 「7四歩図07」まで戻って、〔A〕7六銀に代えて、〔B〕6七とを選び、先手の4六角成に、そこで7六銀としたのが、この図。
 先手玉に8四桂の一手詰めがあるので、それを防いで先手は8五香。
 以下、8四桂に、同香、同歩。このとき、また先手玉には9五香の“詰めろ”が続いているが、しかし先手が「桂」を入手したため、今度は後手玉に“詰み”が生じていた。

7四歩図15
 3三銀(図)から後手玉は詰んでいる。同桂、同歩成、同銀、3四桂、同銀、2一飛、同玉、3三桂、2二玉、1一角、同玉、2一金という、華麗な“詰み”である。

7四歩図16
 この図は、≪7四歩図≫まで戻って、先手の3三歩に、7五銀としないで、3三同銀、3四歩、同銀と応じ、4一銀に、3一歩としたところ。
 後手は“7五銀”を保留した。このほうが、先手としては次の手がむつかしい。
 上で示したのと同じ手順で8二飛、6二歩、5二銀成と攻めると、同歩、4二角に、8四桂(次の図)となって―――

7四歩図17
 これは詰まされて、先手負け。 これが“7五銀保留”の後手のねらい。

7四歩図18
 それなら、8二飛ではなく、3九香(図)はどうだろうか。
 感じとしては先手が勝てそうだが、実はこれは先手苦戦となる。
 ここで7五銀と出て、8五玉(7七玉は6五桂、7八玉、7六桂で先手負け)、8四金、9六玉となるが、そこで4二金が好タイミングの手となる。以下、7二飛には、5二桂(次の図)

7四歩図19
 以下、3四香、4一金、8六歩は、9四歩とされ、次に9五金~8六金をねらわれ、これは後手優勢になっている。

7四歩図20
 “7五銀保留”に対しては、8五玉(図)とするのが、正着となる。
 次に9三竜から先手に“入玉”を計られると後手まずいので、ここは8四金の一手になる。(図で7三銀には、6六角~9三角成がある)
 8四金に、9六玉。(8六玉は6七とで先手悪い)
 先手としては、“後手に金打ちを決めさせた”という考えである。
 そこで後手がどうするか。9四歩は、7七角、5五桂、8五香で、先手良し。7三桂も、8六歩、7五桂に、8五香で、後手の攻めがうまくいかない。
 後手9四金(次に8四桂と打つ詰めろ)が有力手だが、先手8六歩として次の図。

7四歩図21
 この図はどっちが良いのだろうか。
 ここで8四桂、8七玉、7五銀は、5二銀成、7六銀、8八玉、5二歩、4二角(次の図)となって―――

7四歩図22
 先手勝ち。 上にもほぼ同じような図(7四歩図06)が出てきたが、これは先手の理想通りの展開だ。

7四歩図23
 戻って、7五桂(図)と、後手は工夫してみる。
 これには8五歩と一手詰めを受け、以下、8四歩に、同歩、7三桂の攻めに、7六角と打って受ける。(8九香でも先手良し)
 後手6五銀に―――

7四歩図24 
 3三歩(図)で、先手勝ち。
 この手は3二金以下の“詰めろ”だが、1四歩としても2六香で状況は変わらない。
 また3三同桂は6四角で、受けがない。4二金には9二竜がある。
 結局、3三同玉しかなさそうだが、それも1一角と打って先手勝ち。4二玉には5二銀成、同玉、4一飛、5三玉、4四金以下、“詰み”。

 どうやら8六歩とした「7四歩図21」は、先手良しのようだ。

 とすると―――

≪7四歩図≫
 [6]7四歩(図)には、3三歩 以下、先手が勝てると結論が出た。


 残るは、[4]6六歩のみ。

≪6六歩図≫
 [4]6六歩には、3三歩も有力ではあるが、我々は8五玉(次の図)のほうがより良いと判断した。
 
6六歩図01
 この場合もやはり9三竜から“入玉”されてはいけないので、後手はそれを防ぐために金を打つことになるが、9四金と、8四金とがある。
 まず9四金は、8六玉と逃げる。
 そこで7四歩以下を見ていくが、8四歩もあって、それは以下9六歩、8五金、9七玉、7六金、7九香、8五桂、9八玉の展開は、先手が良い。
 7四歩、9六歩、7五銀、9七玉、8五桂、9八玉、7七桂成、7九香(次の図)

6六歩図02
 こうなると、先手良し。 6七歩成に、7七香、同と、3四桂があるので。このように後手は桂馬を簡単には渡せない状況なのだ。

6六歩図03
 なので、7七桂成の手に代えて、7六銀としてみた。
 これには、先手6四角と打つ。これは3一銀以下の“詰めろ”。(6四にいた後手の銀がいなくなるとこの手が狙い目になる)
 よって、後手は3一歩と受けるが、3三歩で先手は攻める(次の図)

6六歩図04
 3三同玉なら1一角、3三同桂なら8六角打で先手勝ち。
 3三同銀には、4一飛がある。以下、4二桂に、3四歩で、後手受けなし。これも先手勝ち。

6六歩図05
 戻って、8四金(図)。
 これには9六玉だが、9四歩にどう受けるか。

6六歩図06
 8六銀(図)と受けた。
 先手からの3三歩、同銀、3四歩の攻めがくる前に攻めなければいけない後手は、7五銀とする。
 これには8五香。以下、8六銀、8四香、同歩、8六歩。
 どうもこれで後手の攻めは息切れ模様。
 以下8三桂には、6四角(次の図)

6六歩図07
 後手の銀がいなくなると、やはりこの角打ちがある。
 3一歩の受けに、7三歩成。5五銀打に、8三と、6四銀、9四竜、6七角、9五玉

6六歩図08
 はっきり先手優勢である。

 [4]6六歩も先手勝ちになるとわかった。

≪6四歩図≫
 しかしまだ、この『6五歩桃太郎作戦』が成功とは決められない。
 この図は、後手の5九金に、先手は6四歩と銀を取ったところ。以下、6四同銀、9一竜と進んで、その図を研究し、今、「先手良し」と確定した。
 
 どうやらこの図での6四同銀が後手にとって問題だったかもしれない。
 6四同銀ではなく、7四歩(次の図)が最善手の可能性がある。

≪5三銀型7四歩図≫
 6四銀と出てもこの銀をうまく使えないなら、7四歩として次に7五金をねらっていこうというのが、ここでの7四歩の意味だ。
 ここで<イ>3三歩、<ロ>9一竜は、先手が不利になる。

 <イ>3三歩と攻めたいのだが、ここでその手を指すと、8四桂があって先手いけない。 以下、7七玉、6五桂、7八玉、3三桂、3四歩、7六桂、3三歩成、同銀(次の図)

5三銀型7四歩図01
 この図は後手の勝勢になっている。 後手が金を手持ちにしていなければ、3四桂、同銀、1一角、同玉、3一飛から後手玉に詰みがあったところだが、この場合は3一飛に2一金と受けられて、詰まない。

 そこで≪5三銀型7四歩図≫より、<ロ>9一竜が考えられるわけだが(今度8四桂には8五玉で先手良し)、7五金、7七玉、6五桂、8八玉、6七と、3三歩、7七桂成、9八玉、3三銀、3四歩、同銀と進む(次の図)

5三銀型7四歩図02
 ここで3三香という先手の“狙いの一手”があるのだが、この場合、同玉、1一角、2二桂、3一角(次の図)となって―――

5三銀型7四歩図03
 ここで「6四銀型」と「5三銀型」との違いが表れる。「6四銀型」の場合は、ここで4四玉なら6四角成で先手良しだったのだが、この場合は、4四玉、2二角右成、3三歩で、これは後手玉が捕まらなくなって、後手良しである。

5三銀型7四歩図04
 <イ>3三歩と攻めても、<ロ>9一竜でも先手は勝てないので、第3の手が必要になるが、それがこの図の<ハ>6六角である。これがこの図での先手の最善手になる。
 そしてこれに対する後手の最善手は我々の調べたところ、どうやら3三歩。(4四歩は3三歩がある。5五桂は、9一竜の後、5五角、同銀、3四桂をねらわれる)
 先手は8五玉。(8三竜は6四銀以下、難解な形勢)
 以下、6七と、7四玉、6六と、8三玉と、角を犠牲に、一目散に“入玉”をめざす。

5三銀型7四歩図05
 続けて、4七角、7四歩、9二金、同竜、同香、8一飛、8五飛、9二玉(次の図)

5三銀型7四歩図06
 図以下は、8一飛、同玉、7四角成、8二金、6四馬、7二歩。 どうやら“入玉”は成功した。


 「激指14」は、この図を、[ +6 互角 ]と評価している。
 だが、先手に負けはないので、実際は先手有利は間違いない。
ただ、この後手玉を捕まえそこなうと、“相入玉”からの持将棋引き分けの可能性もあるため、勝てるかどうかははっきりしない図でもある。人間の感覚的には、“先手勝てるのではないか”と思うのだが、確信は持てないといったところである。

 厳密にはそういう微妙な評価ではあるが、『桃太郎作戦』は成功、と結論しておく。


≪夏への扉図≫
  【あ】5八同金  → 形勢不明
  【い】3三歩   → 3つの「先手勝ち筋」を発見!   
  【う】7三歩成  → 後手良し
  【え】9一竜   → 後手良し
  【お】6五歩   → 先手良し(桃太郎作戦) =4つ目の「先手勝ち筋」

                          『終盤探検隊 part100』につづく
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