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十分間俳句

発見・感動・創造! 子どもたちの感性を培い日本語力を高める十分間俳句

身につまされる

2010-05-06 | ジュニア俳句

5月4日のNHKの「ひめくり万葉集」は、

夢の逢ひは 苦しかりけり おどろきて 掻き探れども 手にも触れねば
  
大伴家持  (巻4・741)

がとりあげられていた。 選者は、見城徹である。
見城徹氏は、編集者。幻冬舎の社長だ。
カリスマ編集者と言われる伝説的な人物だ。
この歌を選んだ基準を問われて

「身につまされる」

事を挙げた。
「身につまされる」とは「共感」ということだ。
それも深い共感である。

教室で子どもの句をとるときの基準もこれなのだと思う。
先生が、子どものどの句に共感するかというとだ。
次の考えることは、その共感が自分一人にとどまるのか、それても教室を超えたところで共感が得られるかということだろう。
 


「波」五月号 新人賞を読む

2010-05-04 | ジュニア俳句


波俳句会は、倉崎羊村氏を主宰とする全国的な結社である。
五年ほど前、学校で俳句を始めるには自分もしないといけないと考え、芭蕉記念館の下山さんに相談したところ、波の傘下にあった「蔵の会」を紹介して頂いた。
その縁で、波に入会し現在に至っている。
作風は、必ずしも自分のと同じではないが、基本に忠実に言葉を大切にする結社であり、レベルが高いと感じている。
「波」五月号に新人賞の発表があった。
田邉幸子さんと長野保代さんが受賞されている。
何回か波の句会に出たことがあるので、あるいはお会いしているかもしれない。

田邉さんの句にびっくりする。

作品の中から気に入った句を挙げる。

「その人は優しいかェ」と祖母小春

冬うらら縁側の猫ストレッチ

かろき嘘ふくらみてゆく日向ぼこ

「誰でもよかった」この世の闇や鎌鼬


蛇穴を出づれば不況最中なり


波の中核に居る本郷秀子さんの作品に目が止まった。

極寒の死者の眦(まなじり)より涙

春立つや身の裡の何を捨てやうか

裏ばかり見せて流れて春の句も

春炬燵猫の定位置横取りす

不等辺三角形や春愁ひ


足立の山本先生の実践

2010-05-03 | ジュニア俳句

足立の山本先生から三年生で最初に行った「俳句の授業の実践記録」届きました。

先日紹介した 「季語+○○○○○○○+○年生」のバリエーション。

どうやらうまくいったようです。

山本先生の指導力の確かさがもとにありますが、入門の始動としては定番に出来そうな感じが益々出来てきました。

 


クラスは3年生27名。

「今日は五七五で新学期の様子を書いてみよう」と呼びかけると、「あ、はいくだ」と何人 か。俳句の形を知っている子たちは多少いるようだ。しかし多くの子は俳句初チャレンジ。

しかし俳句という言葉も使わず、俳句の説明もせずに始めた。

 

はじめに、新学期だから初めは春の季節を表す五音(五文字ではなく五音を説明)を書くこと(「春の空」など例をいくつか 板書)を伝えた。

次に、最後は「新学期」で終えることを伝え た。

まん中の七音をみんなで考えて、新学期の様子 を書いてと伝え、

春の○○□□□□□□□+新学期

と板書した。

児童の消しゴムをちょっと拝借し、「たとえば『春の空消しゴム白い新学期』」と例を挙げ、「白い消しゴムは、新しい消しゴムだね。新 学期だから新しい消しゴムを準備したんでしょう。とても新学期らしいね。」とつけたした。

じゃあ、みんなも書いてごらん。時間は10分。

 

児童は一人一句から多い子は八句書いた。途中、これでいいか何人もの子が聞きに来るので、うまい!いいね!と褒めると、列がどんどん伸びた。みんな見てほしそうに並ぶので、 片っぱしから褒めていたら10分があっという間に終わってしまった。

 

 

そうして全員の句から一句ずつ選んだのが、以下の俳句です。

初めてでもあり、私の指導も未熟で、説明も詳しくしなかったので、たとえば「さくらまいち る」とか「みんながんばれ」等の言葉が多く見られました。しかし行う前からそれは予想された事なのでそれ以上は求めず、今日は俳句の形に慣れればよいと考 えていました。しかし驚いたのはこの実践で全員がすんなりと五七五のリズムを会得して、十七音に仕上げたことでした。第一のステップとしてとても効果のある指導方法だと実感しました。 ありがとうございました。

次のステップは、 「春の朝ダッシュで走る新学期」の句のようなその子らしさが表れている発見や表現に、少しづつ目を向けさせていくことだと、思いました。しかしあわて過ぎ ずに子どもたちの視線に寄り添いながら進めていこうと思います。


春の朝もちものいちらん新学期

春の花みんなさいてる新学期

春の空くもがひろがる新学期

春の空そよ風ふいて新学期

春の朝ダッシュで走る新学期

春の夜あしたは楽しみ新学期

春の風ぼうしかぶって新学

春の鳥おいかけてくる新学期

春の花いい花咲かせて新学期

春の鳥かがやきながら新学期

春の花ささやいてるよ新学期

学校の教室ちがう新学期

春の道さくらまいちる新学期

春の午後つくえがきたよ新学期

春の花きれいにさいて新学期

春の鳥きもちよさそうに新学期

春の道どこまでつづく新学期

春の風はじめての道新学期

春の風クラスが気になる新学期

春の朝自分のつくえ新学期

春の空四月はさくら新学期

春風が春をよんでる新学期

春がきたこれからがんばれ新学期

春の朝ごはんを食べて新学期

春のきせつ心あたたまれ新学期

春の花きれいなさくら新学期

春の海あたたかそうに新学期

 


鹿浜第一小学校

2010-05-02 | ジュニア俳句
西新井大師を訪れたのはいったい何年ぶりだろう。
私は、初任は足立区の江北小学校であった。
そこに9年間いた。
鹿浜第一小学校は、同じブロックの学校だ。
懐かしい。
大師から鹿浜第一小学校まで、歩く。
昔の農道にそって住宅が広がっている。
道がくねくねと曲がり、下手をすると行き止まりになる。
約30分ほどで、鹿浜第一小学校についた。


校庭が広い。
天気もいい。
のどかだ。
研究会に招かれている。
「俳句(教育)の話をする」
これが私に与えられたテーマだ。
鹿浜第一小学校には、俳句の方では、大先輩の知念先生もいらっしゃる。
恥ずかしい面もある。
が、そんなことを言っていると何も出来ない。
知ったかぶりをして話すしかない。
連休の合間の3時~4時。


腕まくりをしているのが私だ。
気合いを入れて・・・・

話はどうでもいいのだが、素晴らしい収穫があった。
土田先生という実践家に出会ったことだ。
土田先生は、若い頃から子ども達と一緒に歌を作り、その学級経営が評判だった。
その土田先生が、鹿浜第一小学校にいらして、しかも俳句をやっているというのだ。


学級通信をいただいた。
俳句を軸にした学級経営の一端が述べられている。



そう言えば、深川芭蕉まつりにも鹿浜第一小学校の俳句が投句され、選者の先生の中で評判になったと聞く。ひょっとすると、土田先生の学級の子ども達かもしれない。

研究会が終わってから、校長室で俳句談義をした。
俳句と学級経営という視点からも土田先生の実践は出色であると感じた。
俳句教育を推進し広げていくためには、現場の意欲あるすぐれた実践家が結集することが大切だ。
そのために俳句指導者交流会を作ったのだ。
土田先生との出会いは、今後の俳句教育の発展にとって記念すべき出来事になると予感する。
六月五日の俳句指導者交流会では、土田先生に「俳句と学級経営」という視点で話をしていただこうと考えている。



第十回現代俳句大賞

2010-05-01 | ジュニア俳句

足立区の鹿浜第一小学校の先生方に「俳句教育」の話をし、帰ってきたら「現代俳句」の五月号が届いていた。
(鹿浜第一小学校の話は後ほど書くことにする)
ページをめくる。
「第十回現代俳句大賞」の特集が組まれている。
宇多喜代子さんが、大賞の受賞者、澁谷道さんについて「澁谷道流俳人澁谷道」というしゃれた文章を寄せている。
・・・・その周辺に満ち満ちた強い磁力によく共振しつつもけっして紛れることなく、一貫した句作姿勢をもって、「澁谷道」を保持し続けた。その後、なになにブームがめぐってきても、冷静に知的に存在しつづけ、けっして染まることなく毅然として自己流を崩すことがなかった」
と賛辞を送っている。
澁谷道さんは、大正15年生まれ、地域医療を担うお医者さんでもあったと言う。写真を拝見すると、楚々として控えめな印象があるが、句はそんなことはない。
澁谷道さんの自選八十句より十句をとってみる。

月に棄つ花瓶の水の青みどろ

母逝きて夜の石橋すべて石

人去れば藤のむらさき力ぬく

シャボン玉なかの歯車いそがしく

縞馬があそんで崩す夏景色

美濃のひと握手離せば凧になる

折鶴をひらけばいちまいの朧

米袋ひらいて吹雪みせてあげる

蝮より蝮捕り器のぶきみなる

渾身のくれなゐならむ吾亦紅