医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

腹水がんの細胞分裂活性に及ぼすビタミンCとビタミンB12混合物の阻害作用について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-28 22:47:17 | 健康・病気

ポイドック博士の研究によると、移植マウスガン、すなわち腹水がんタイプのザルコ―マ37とクレブスおよびエールリッヒガンなどに、ビタミンC(VC)とビタミンB12(VB12)の混合物をそれらの治療に用いると、がん細胞分裂が阻害され、著明な副作用が見られませんでした。これらのビタミンは、同量を単独で用いた時、ガン細胞の分裂、もしくはその生存には、明らかな効果が、この実験では認められませんでした。

ビタミンCとビタミンB12の混合物で治療したマウスから採取した腹水を染色し、顕微鏡で調べると、ガン細胞は発見されませんでした。さらに、リンパ球、単球、好中球、大食球は多いようでした。また、後の実験でもガン細胞は発見されず、単球、大食球は多いようでした。

in vivoでの結果では、VCとVB12の混合物は、全腫瘍組織において細胞分裂を阻害するが、非腫瘍性L929線維芽細胞の分裂には影響を与えませんでした。また、治療したマウスから採取した腹水滲出液の細胞容積は小さく、薄い細胞膜が遠沈管の底に多く見られました。細胞膜を取り出し、アセトカ―ミンの塗抹標本を顕微鏡で観察すると、ガン細胞は認められず、細胞分裂も認められませんでした。ガン細胞は崩壊の段階にあるようでした。しかし、リンパ球、好中球、それに単球が認められました。博士の実験の終わりには、ガン細胞は認められず、単球と大食球が腹水中に見出されました。

VB12とVCをいろんな投与量で与え、治療した担ガンマウスの細胞分裂指数では、両ビタミンは別々に投与され(VCとVCカルシウム混合物340mg/kg,VB12、 20mg/kg)、それらの小量投与では、VCもVB12もガン細胞分裂には明らかな効果が認められず、ビタミンCの大量投与(800mg/kg)すると、ガン細胞分裂が阻害されたことは明らかでした。しかし、ビタミンCの超大量投与(1,600mg/kg)の投与量では、マウスに対し有毒でした。これらの観察からVCとVB12の混合物が、宿主の免疫機構を強化する可能性と、ビタミンCの大量投与が、ガン細胞の分裂を阻害することが示唆されます。さらなる研究の積み重ねがこの証明に必要、と考えられます。

Reference

M. E ポイドック: エクスペリメンタル セル バイオロジイ、47巻、1979年


実験動物でのビタミンCの十二指腸ガンに対する効果について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-27 18:22:46 | 健康・病気

ドイツのウエルナー博士らは、ラット小腸の化学的発がんに及ぼすビタミンCの作用を研究し、ラット飲用水にN-エチル-N-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(ENNNG)を入れ、その飲料水の摂取後18週目に90%以上のラットの小腸にがんを生じせしめました。

結果は、発がんは食物中の大量ビタミンCナトリウム(2~3%)により抑制されないが、ガンの侵潤は抑制されました。ガンはENNGのみを摂取したラット30匹中29匹で進行し、ガンの侵潤は、このグループの25匹ではステージP4に相当し、また、ENNGに加えてビタミンCを摂取したグループでは、35匹中13匹でステージP4でした。ビタミンC単独投与グループでは、小腸の病理学的変化は認められませんでした。この結果から、ガンの侵潤はビタミンC投与後抑えられました。

ENNGグループ36匹中、33匹がガンになり、ガンの総数は156で、胃ガン1、十二指腸がん150匹、空腸がん5匹。ENNG+ビタミンCグループ35匹中、32匹がガンになり、ガンの総数は136で、胃ガン3、十二指腸がん133匹、空腸がん0匹。ビタミンCグループ10匹中、それぞれのガンになったのは0匹。

投与期間18週でのラット上部消化管の組織学的所見
ENNGグループ36匹中、正常所見3、腫瘍とその境界線上のガン4匹、P2は1匹、P3は3匹、P4は25匹。ENNG+ビタミンCグループ35匹中、正常所見3匹、腫瘍とその境界線上のガン8匹、P2は8匹、P3は3匹、P4は13匹。ビタミンCグループ10匹中、正常所見10匹、その他のガン所見は0匹。

動物実験でもビタミンCのガンに対する効果が確認されていますが、更なる実験の積み重ねにより、ビタミンCのガンに対する有効性が、より確かなものになる、と期待しています。

Reference

ウエルナーB: ビタミンCと十二指腸がん、ランゲンべックス、アルキィブフ―ル、キルルギ―、354巻、2号、1981年

 

 

 


疫学的調査によるガン予防とビタミンC・抗酸化栄養素(抗酸化物質)の効果について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-27 15:12:53 | 健康・病気

ベルケ博士らの疫学的調査では、胃腸管のガンと関係が深いのは、食物のビタミンC含有量であり、野菜・果物からたくさんビタミンCを摂取しているヒト、およびビタミンCを大量に補給しているヒトは、明らかに胃腸管のガンの発生率が低いことを示していました。

チョ―プ、ブレスロ博士らの研究によると、ビタミンCを平均127mg/日の高摂取者は、死亡率が、24mg/日の低摂取者に比べて、40%以下でした。また、エンストローム博士らは、65歳以上のヒト365人について、コホ―ト研究を行い、喫煙、飲酒、砂糖の摂取を避け、減塩を実施し、肥満に気をつけ、いろんなビタミン、ミネラルなど十分摂取し、ビタミンC1.7g/日、ビタミンE700国際単位/日、ビタミンA1800国際単位/日、を摂取していました。彼らを一般人と比較した時、標準的死亡率は、60%(全員)と47%(293人の非喫煙者)と、明らかに低いようでした。なお、この死亡率のデータは、この種の老人グループでの報告データの中で最低でした。以上の結果を考察すると、ガン、およびその他の疾患の罹患率を低く抑え、良好な健康を維持するには、1~10g/日のビタミンCを摂取し、これに加えて、ビタミンA,E,B群、および必須ミネラルの十分な補給が必要、と考えられます。なお、当方の考えですが、これらに加え、乳酸菌、納豆菌、それに食物酵素を多く含む食品、およびそれらの栄養サプリメントを補助的に摂取することも、
生活習慣病の予防・治療に必要、と考えられます。

以前、名古屋大学の大野博士らのガンの疫学調査によると、食道がんの多い和歌山県と低い愛知県の食道がんの入院患者201名を対照にした、ガンに罹る前の食事内容や生活習慣歴など約400項目にわたる詳細な聞き込み調査を実施し、その結果、酒やタバコを嗜まず、キャべツ等新鮮野菜を多く摂取していたヒトの食道がんに罹る危険率を1とすると、野菜を摂取しないで酒、タバコを嗜むヒトの相対的危険率は愛知県18.1、和歌山県77.4、と異常に高いことがわかりました。また、酒やタバコを嗜み、野菜を多く摂取しているヒトの危険率は愛知県6.6、和歌山県13.4で、野菜を多く摂取するだけで危険率が大幅に低下することが分かりました。また、別の研究では、緑黄色野菜には発がん抑制効果があると報告されています。野菜のポリフェノール、ビタミン、ミネラルなどが発がん抑制に働いている、と考えられます。

また、ガンや糖尿病、動脈硬化の予防には、食事での蛋白質量、動物脂肪量、炭水化物量などの量と比率も重要で、そのヒトに合ったベスト比率の研究が現在、栄養学者らによって研究されています。

References

ベルケ、E: 胃ガン、結腸がん、直腸がんの疫学的研究、特に食事の重要性について、Scandinavia Journal of Gastroenterology,Volume9,1974

チョップH.D, ブレスロ.L: 老化の栄養像、American Journal of Public Health,Volume46, 1955

藤井毅彦:ガンと栄養、日本ビタミンC研究会、1979年

 

 

 

 

 

 

 

 

 


還元型ビタミンCと酸化型ビタミンCの比と疾病指数について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-26 22:29:53 | 健康・病気

ビタミンCと言っても、還元型ビタミンC(L-アスコルビン酸)、酸化型ビタミンC(デハイドロアスコルビン酸)があり、一般的にビタミンCと言えば、還元型ビタミンCのことです。野菜や果物に含まれる酸化型ビタミンCは濃度が低いと、還元型ビタミンCと同じ作用を示し、壊血病を予防したり、治したりしますが、濃度が高いと毒性を示します。したがって、野菜や果物は、還元型ビタミンCが多い新鮮なものを摂取しましょう。

破傷風、肺炎、腸チフスなどの患者で、血液中の還元型ビタミンCと酸化型ビタミンCの量を測定し、それらの病気が悪化し、死亡するまでの過程で、還元型ビタミンCが減り、酸化型ビタミンCが増えることを、確認しました。また、患者が生き延びると、逆の動きが見られました。

研究によると、これらの結果から、総ビタミンC量は診断の手段として、適切でないことが分かります。死亡した患者は、酸化型ビタミンC量が多いため、総ビタミンC量が、生き残った患者より高くなっています。

アーウィン・ストーン博士の研究によると、還元型ビタミンC量が多ければ健康状態は良好でありますが、病気の指標には、還元型ビタミンCと酸化型ビタミンCの比が重要で、これを疾病指数と呼ばれています。健常者の疾病指数は約15ですが、ビタミンC大量摂取者はさらに高くなり、また、病気が重く、生き残ったヒトでは、疾病指数は約1.0で、死亡したヒトでは0.3~0.5でした。生き残ったヒトで、回復期には3.0~5.0に上昇しました。

健全な組織反応が行われるためには、還元型ビタミンCがきわめて多く、酸化型ビタミンCの量が著しく少なく、酸化ー還元力が低く保たれなければいけない、と考えられます。また、病理学的には、病気が進行するに従って組織の酸化力が高まり、病気が治癒すると再び低下します。

ビタミンC大量投与療法の価値は、組織の酸化ー還元力を低いレベルに保ち、疾病指数を高い水準に保つことです。常に高濃度の還元型ビタミンCが存在すると、毒性のある酸化型ビタミンCの産生が抑えられる、と考えられます。

References

Stone, I: The Healing Factor: VitaminC against Disease, Crosset and Dunlap, 1972

藤井毅彦: がんと栄養、日本ビタミンC研究会、1979年

筆者の栄養医学ブログは、ブログアドレスblog.goo.ne.jp/h35p39で発信しています。

 

 


喫煙とホルモンによるガンとビタミンCについて 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-26 21:20:25 | 健康・病気

ビタミンCと喫煙に関しては、非喫煙の対照者に比べて、喫煙者では全血ビタミンC値、
血清ビタミンC値、および白血球ビタミンC値の低値で示された様に、喫煙は、ビタミンCの貯蔵を枯渇させるという、重大な証拠が存在します。現在の状況では、慎重にビタミンCの摂取を増やすことは、習慣的な重喫煙者にとって賢明な選択となります。

また、ガンに対する宿主抵抗性に関しては、あらゆるガン患者において、宿主抵抗性を最高値まで強めることは、ガン治療に於ける改善をもたらします。ビタミンC代謝が、これらの宿主抵抗性機構全体に関わりあい、ビタミンCの適正量の摂取は、これらの目標に到達する、単純、かつ安全な方法であり、この事は証明が可能です。

ビタミンCとホルモンバランスに関しては、ビタミンCの最高濃度が副腎と脳下垂体に見出され、壊血病の末期では、副腎のビタミンCの完全な枯渇が先行し、副腎皮質の失調から壊血病死へ導かれます。また、ビタミンC-脱水素ビタミンC系は、副腎ー脳下垂体ホルモンの合成と遊離に重要な役割を演じます。

発がん性を有する卵胞ホルモン(エストロジェン)、性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の中で
エストロジェンは乳腺、子宮などに対し、あたかもアゾ色素のように細胞分裂を楽々と誘発させ、卵巣、子宮、乳房などを癌化させます。ポーリング博士らの研究によると、ビタミンCが
性ホルモン代謝に入り、性ホルモン代謝を正常化し、エストロジェン分泌過多を抑制し、性ホルモンによって起こるガンを退縮せしめる、と報告されています。更なる研究が待たれます。

References

Linus Pauling: Cancer Research,March,1979

藤井毅彦:ガンの寛解とビタミンC療法、日本ビタミンC研究会、1981年