医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病での左心室機能不全と天然型α-リポ酸の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-29 09:30:32 | 健康・病気

実験的糖尿病性心筋症での心筋線維症や心筋機能不全(障害)が、天然型のα-リポ酸(ビタミン様栄養素)の投与で改善されるという、研究があります。その理由として、天然型α-リポ酸(R-α-リポ酸)はTCAサイクルの代謝を正常化してATP産生量を増やし、さらに、その抗酸化作用により、心筋細胞内の活性酸素を除去し、その結果、心筋機能不全を改善し、糖尿病性心筋症の治療に寄与すると、考えられます。また、別の研究では、天然型のα-リポ酸には、ミトコンドリアの酸化ストレスを抑制することにより、心筋アポトーシスを減らし、糖尿病合併症である糖尿病性心筋症を軽減すると、報告されています。これらの結果やいろんな研究から、糖尿病の合併症、加齢に伴う動脈硬化、それに心筋異常などの発症・進行を天然型のα-リポ酸が防ぐと期待されています。更なる研究が期待されます。なお、糖尿病薬や心臓病薬を医師により投与されている患者は、それらとα-リポ酸やQ10の併用は、副作用のリスクが有るので、禁忌です。

エジプトのTanta大学のSahar K.Hegazy博士らの研究によると、無症状の一型糖尿病の子供と成人での糖尿病性左心室機能障害への天然型α-リポ酸の効果が研究され、30人の無症状一型糖尿病患者(10~14歳)は、ランダムに4か月間、インスリン療法(n=15)を受けるか、インスリン療法+α-リポ酸(300mg/回、2回/日)摂取を4か月、受けました。また、年齢と性がマッチした健康な対照者(n=15)が参加しました。患者は治療の前後に、二次元心エコー検査、パルス組織ドップラー、それに二次元縦ストレイン心エコー検査を、それぞれ受けました。さらに、グルタチオン、マロンデアルデヒド(MDA)、一酸化窒素(NO)、TNf-α、Fas ligand(Fas-L)、マトリックスメタロプロテナーゼ(酵素でMMP-2)、それにトロポニン-1などが測定され、それらは心エコーパラメータと相関していました。

博士らの研究結果によると、一型糖尿病(糖尿病)患者は、対照に比べ、グルタチオン値が著しく低く、MDA、NO、TNF-α、Fas-L、MMP-2、それにトロポニンー1値が著しく高い値でした。また、末梢血単核細胞のトランスホーミング成長因子β(TGF-beta)mRNAは、一型糖尿病患者では増加していました。グルタチオン(NACが前駆体)、MDA、NO、TNF-α、それにFas-Lと共に、僧帽弁e/a比(僧帽弁の検査で、心拍数の増加に伴いe/a比は上昇する)と左心室の最高の心臓収縮の引っ張り強さが、患者で調べられました。その結果、天然型R-α-リポ酸は、グルタチオン値を高め、MDA、NO、TNF-α、Fas-L、MMP-2、それにトロンポニンー1値を著しく低下させました。さらに、僧帽弁e/a比と左心室全体の最高の心臓収縮の引っ張り強さを著しく高め、心臓機能を改善しました。なお、房室弁は、心室から血液を拍出する時、心房へ逆流しないよう、乳頭筋が収縮して房室弁を引っ張り、弁はしっかり閉じる構造になっています。僧帽弁e/a比と左心室の収縮引っ張り強さを高めると、弁はしっかり閉じ、血液は、正常に拍出されます。このことがうまくいかなければ、正常な血液循環が阻害されます。更なる臨床例の積み重ねがまたれます。

References

Sahar K.Hegazy, et al. Alpha-lipoic acid improves subclinical left ventricular dysfunction in asymptomatic patients with type 1 diabetes. Rev Diabet Stud. 2013 Spring;10(1) 58-67

Anna Gvozdja Kova, et al. Q10 and α-lipoic acid effect in patients with diabetic cardiomyopathy. Medical 2008 

CJ Li. Cardiac fibrosis and dysfunction  in experimental diabetic cardiomyopathy. NCBI 2012

 

 

 

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糖尿病による細小血管障害への天然タウリンの作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-15 15:16:34 | 健康・病気

心臓を取り巻く冠動脈の奥深い場所には、微小冠動脈と呼ばれる細い血管が張り巡らされ、心筋のすみずみにまで酸素や栄養物質を供給しています。また、ヒト心臓微小血管内皮細胞は、冠動脈血流量やその毛細血管を介した物質交換の生理学的調整に重要な役割を果たしており、糖尿病による高血糖などで、その内皮細胞が障害を受け、虚血性心疾患や糖尿病性心筋症などを発症すると、報告されています。なお、糖尿病での心筋障害は、動脈硬化による冠状動脈障害に起因するが、それ以外に、糖尿病性心筋症で起こる場合があります。

内外の研究によると、天然タウリン(調整性栄養因子)の継続的摂取(1~3g/日)では、高血糖による冠状動脈内皮細胞機能障害や冠状微小血管内皮細胞機能障害を改善し、虚血性心疾患や心臓血管系疾患(糖尿病性心筋症、心不全)を改善します。そして、タウリンの摂取により、心筋のアポトーシスを抑制し、その細胞の線維化を抑制し、心臓病での生存率を高め、高血圧の症状や糖尿病を改善すると、報告されています。また、糖尿病での細小血管障害は、糖尿病腎症、白内障、足の冷感、手足のしびれ、それに手足の痛みをもたらします。そして、天然タウリン(イカ,タコ、牡蠣などに含まれる含硫アミノ酸から合成される栄養因子)のこれらの症状への効果も、現在、内外で研究されています。

アイルランドのThe Royal College of SurgensのQiong Di Wu博士らの研究報告によると、コントロール不良の2型糖尿病(糖尿病)での血糖の上昇は、糖尿病性細小血管障害の原因となって、相互的に関連してきます。そして、高血糖症が引き金となって、ヒト心臓微小血管など細小血管障害をもたらし、その内皮細胞アポトーシスを促進します。

以前に、天然タウリンは、ヒト血管内皮細胞アポトーシスに対し防御作用が証明されていました。博士らは、ヒトへその緒血管内皮細胞に30mMグルコースを、48時間と14日間、それぞれ暴露させ、正常なグルコース量(5.5mM;p<0.05)と比べて、内皮細胞アポトーシスの増大が認められました。糖尿病の高血糖によるDNAの分断は、選択的にS相細胞でもたらされました。また、マンニトール(浸透圧コントロールとして)30mMの暴露は、ヒトへその緒血管内皮細胞のアポトーシスを誘導しませんでした。このことは、高血糖による細胞内活性酸素(ROS)産生と細胞内Caイオン濃度の上昇を、天然タウリンが低下させるのと相互に関連が有ります。また、抗酸化栄養素、DMSO(ジメチルスルホキシド、有機化合物)、N-アセチルシステイン、それにグルタチオンは、高血糖によるヒトへその緒内皮細胞アポトーシスを少しだけ低下させました。グルコース(30mM)では、ヒトへその緒内皮細胞の壊死をもたらさず、グルコース(60mM)とマンニトール(60mM)は、それぞれ、酪酸塩デハイドロゲナーゼ遊離の増大と細胞崩壊により、ヒトへその緒内皮細胞壊死をもたらしました。天然タウリンは、高浸透圧による細胞壊死を防げませんでした。これらのことから、天然タウリンは、活性酸素阻害とCaイオン安定化により、高血糖によるヒトへその緒内皮細胞アポトーシスを減らすことが、考えられます。そして、天然タウリンが、糖尿病による細小血管障害を防ぎ、糖尿病による心筋機能障害、腎症、白内障、それに神経障害などに対し、ビタミン類と共に、有益な栄養因子となることが考えられます。更なる研究が期待されます。

References

 

Qiong Di Wu, et al. Taurine prevents high-glucose-induced human vascular endothelial apoptosis. the American Physiological Society. 1999

Yan-Jun Xu, et al. The potential health benefits of taurine in cardiovascular disease.Exp clin Cardiol.2008 Summer;13(2):57-65

Takashi Ito, et al. The potential usefulness of taurine on diabetes mellitus and its complications. Amino Acids.2012 may;42(5):1529-


血管性認知症、アルツハイマー型認知症に対するアセチルーL-カルニチンの作用について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-04 13:58:16 | 健康・病気

アセチル-L-カルニチン(調整性栄養因子)は、微小血管機能を改善したり、筋肉や心筋の機能を改善することにより、心臓機能や運動機能を改善することが報告されていますが、その微小血管機能改善作用により、初期の、血管性認知症やアルツハイマー型認知症を改善することが、報告されています。

"Zh Nevrol Psikhiatr Im S S Korsakova"誌に載ったGavrilova SI博士らの研究によると、アセチル-L-カルニチンが、2,250~3,000mg/日の投与量で摂取され、患者の状態は、MMSE、CGIなどの基準と神経心理学テストで評価されました。アセチル-L-カルニチンの治療効果は、プラセボに比べて2.8倍高く、CGI基準による臨床上の改善は、血管性認知症に比べて、アルツハイマー型認知症患者では著しく良く、ベースラインの認知機能の低下の重症度にはよりませんでした。

また、テキサス大学のJustin C .Shenk博士らの研究によると、博士らは、C14iodoantipyreneオートラジオグラフィーを用いて、年齢が釣り合った野生タイプマウスとApoE4遺伝子導入マウスを用いて、脳の血流に及ぼす、ヒトApoE4の年齢依存性作用を検討しました。ApoE4と結び付いた因子は、野生タイプマウスと比較した時、脳の低還流を脳血流が徐々にもたらすのを減らします。脳の血流の違いは、生後6週間から12カ月の動物としては、もっとも大きいものでした。

トランスミッション電子顕微鏡では、血管周辺細胞、血管周辺神経末端、海馬の神経単位、そしてグリア細胞の細胞質にまで広がった、若いのと老いたApoE4導入動物の微小血管内皮の構造的ダメージが認められました。これらの異常は、ミトコンドリアの構造的変化とミトコンドリアのDNAの過剰増加、そして、全脳の細胞の小室での欠失(deletion)と共存しています。

空間記憶と一時記憶テストでは、選択的ミトコンドリアの抗酸化物質であるアセチル-L-カルニチンとα-リポ酸(チオクト酸、ビタミン様栄養素)を投与したApoE4導入マウスは、認知機能の改善が認められました。博士らの発見は、ApoE4遺伝子タイプ誘導によるミトコンドリアの変化とそれに伴った構造的ダメージは、アルツハイマー型認知症で見られる、年齢による病理学的変化に対し、説明の可能性を与えています。更なる研究により、これらの栄養因子が、血管性認知症やアルツハイマー認知症への福音になることを期待しています。なお、ビタミンC、D、EやEPA・DHA、それに、その他のビタミンB群、プロバイオティクスも認知症予防効果が報告されているので、認知症の食事療法を基本にして、アセチル-L-カルニチン、α-リポ酸もそれらと共に適正量摂取するのが有益と考えられます。 

References

Justin C. Shenk, et al. The effect of acetyl-L-Carnitine and lipoic acid treatment in ApoE4 mouse as a model of human Alzheimer's disease. J Neurol Sci.2009 Aug15;283(1-2):199-206

Gavrilova SI, et al. Acetyl-L-carnitine in the treatment of early stages of Alzheimer's disease and vascular dementia.Zh Nevrol Psikhiatr Im S S Korsakova. 2011;111(9):16-22

 

 

 

 

 

 

 

 


心筋組織損傷抑制とL-カルニチンの効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-07-01 11:00:58 | 健康・病気

微小血管狭心症は、更年期女性に多く見られ、男性には少ないようです。症状は背中の痛みを始め、いろいろな症状が報告され、検査でも発見が難しく、医師泣かせの疾患と言われています。

微小血管狭心症と関係があるヒト心臓微小血管内皮細胞の異常は、心筋細胞と強い相互作用が有り、他の微小血管内皮細胞とは異なる形質を有しています。また、ヒト心臓微小血管内皮細胞は、冠状動脈血流量やその毛細血管を介した物質交換の生理学的調整に重要な役割を果たしています。

"Circulation"誌に載ったG Brevetti博士らの研究によると、摂取量にもよりますが、L-カルニチン(調整性栄養因子)には毛細血管を拡張し、その血流を改善することにより心筋細胞の損傷を防ぎ、また心筋内の微小血管の損傷も改善します。さらに、3g/日のL-カルニチン摂取量では、L-カルニチン欠乏による末梢血管が関係した、筋肉機能の低下による歩行距離の短縮を改善すると、報告されています。また他の研究では、L-カルニチンには心筋組織損傷抑制作用があり、狭心症の発症率リスクを約4割ほど低下させると、報告されています。また、外国では、L-カルニチンの誘導体は、心臓病の薬として医師が処方したり、サプリメントとして発売されています。

Canadian collegeのHeidi Fritz博士の報告によると、心臓血管性虚血は、心筋に張り巡らされた微小血管の損傷による、心筋のL-カルニチン量の急速な枯渇と細胞内遊離長鎖脂肪酸の、同時発生的上昇を伴います。さらに、糖尿病合併症による心筋微小血管症の心不全症患者では、血清L-カルニチン値は、心臓血管超音波診断での左心室収縮機能の低下と相互に関連していました。虚血状態中、L-カルニチンは、ミトコンドリアでの遊離脂肪酸の取り込みと利用の促進により、遊離脂肪酸濃度の上昇を低下させ、それゆえ、L-カルニチンは、遊離脂肪酸の上昇によるダメージを防ぐと、考えられます。なお、そのダメージは、虚血の結果生じる、細胞の腫れと微小血管の収縮、不整脈、心筋機能の低下などを伴った代謝不全です。

また、他の研究によると、L-カルニチン誘導体のプロピニ―ル-L-カルニチンは、血管創傷の治癒を高め、微小血管内皮細胞機能不全を改善します。微小血管内皮細胞組織の機能不全は、皮膚の微小血管内層障害を特徴とし、皮膚の創傷治癒の遅れと皮膚の慢性潰瘍の一因になっていると、報告されています。これらの内皮の機能不全は、NO産生の減少、それに酸化ストレスと増大、炎症の憎悪の結果として、血管弛緩と血管収縮の間のインバランスをもたらし、皮膚微小血管の血流を悪化させます。

この研究により、プロピニ―ル-L-カルニチンには虚血後の血流の回復を改善さすことが考えられます。更なる研究により、心臓病の食事療法だけでなく、タウリン、Q10、ビタミン類、ホーソンベリー、それにプロバイオティクスと共に、プロピニ―ル-L-カルニチンが、糖尿病合併症による微小血管性心不全や微小血管性狭心症、冠状動脈性心臓病で苦しむ人々への福音になることを期待しています。

References

R Lango, et al. Influence of L-carnitine and its derivatives on myocardial metabolism and function in ischemic heart disease and during cardiopulmonary bypass. Cardiovascular Research. Vol51, Issue 1, July2001, Pages21-29

G Brevetti, etal. Increases in walking distance in patients with peripheral vascular disease treated with L-carnitine. Circulation.1988;77:767-773

 

Heidi Fritz. Feature L-carnitine. IHP Feb 2011