医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

統合失調症対策とナイアシン、R-リポ酸、イノシト―ルヘキサニコチネ―トの効果について 栄養医学ブログ

2013-04-08 21:52:04 | 健康・病気

イノシト―ルヘキサ二コチネ―トは、ビタミンB3(ナイアシン)とイノシト―ル(ビタミンB複合体)の両栄養素を化学結合させた化合物で、日本では医薬品、米国ではサプリメントとして用いられ、いろんな血液循環障害の治療薬として、日本では臨床で用いられています。

Hoffer博士やPauling博士のような分子矯正精神疾患研究の医学者らは、統合失調症の治療にナイアシンアミド+ビタミンB6+ビタミンCを併用投与し、効果を確認していますが、Ban博士(統合失調症の薬物療法の専門医)は、この効果に反論しています。しかし、Ban博士はナイアシンのみの効果を否定しているのであって、ビタミンB6、ビタミンC、グリシン、αーリポ酸(ビタミン様物質)などの併用効果については研究をしていません。更に、彼が効果を再現できなかったのは、研究方法やそのデザインに問題が有る、と言われています。ナイアシンアミドも他のビタミンやアミノ酸のグリシンを併用することにより、統合失調症に対する効果が高まることは、念頭になかったようです。また、!g/日より多いナイアシンアミドの摂取を長期に続けることは、肝障害の危険性をもたらす可能性がありますが、500mg/日程度ではその副作用を避けることができると、臨床研究は示しています。したがって、ナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)の投与量を減らし、治療するという選択肢も有ります。なお、ナイアシン(ニコチン酸)は少量投与でも皮膚の不快な紅潮をもたらすので、米国では臨床に使われていません。現在は、ニコチンアデニンジヌクレオタイド(ナイアシンの補酵素型)の統合失調症に対する効果が、米国で研究中です。

イノシト―ルヘキサ二コチネ―トは、紅潮しないナイアシンとして販売されていますが、薬理学的性質がナイアシンやナイアシンアミド(ニコチン酸アミドとも呼ばれ 、タバコのニコチンとは違う物質です)と違います。また、脂質を減らす作用にも疑問がもたれています。なお、1g/日より多いイノシト―ルヘキサ二コチネ―トやナイアシンアミドを経口摂取する場合、酵素値と肝機能をモニターしながら摂取することが必要で、医師の監視の下に実施することが必要と考えられます。長期摂取の場合、摂取量を次第に減らし、500mg/日まで減らし、維持する方法もあります。量を減らせば、血中尿酸値の上昇や、胃炎、糖尿病などの発症のリスクを防げる可能性があります。また、研究文献によると、副作用は体質により出たり、出なかったりいろいろですので、これらに詳しい分子矯正精神科医に相談下さい。なお、向精神病薬よりは安全性は高いようです。

2010年、12月の"Medical Hypothesis Model"という論文によると、αーリポ酸(チオクト酸)をナイアシンアミドに併用して摂取すると、ミトコンドリアの酸化を防ぐことにより統合失調症のリスクを減らせるに違いないことに、研究者は注目しています。なお、米国では臨床に、R-リポ酸も他のビタミン(ナイアシンなど)と併用して、統合失調症、に用いられています。更なる研究を期待しています。R-リポ酸と統合失調症、うつ病、認知症との関係については、近々に、このブログで紹介したい、と考えています。

また、統合失調症にR-リポ酸を用いて、効果をヒトで調べた研究は少ししかないけれども、Seybolt博士の研究による仮説では、ナイアシンアミド(ビタミンB3)に併用して、補助的にR-リポ酸に投与すると、ミトコンドリアの機能不全の改善により統合失調症の兆候や症状を軽減する可能性があります。すなわち、グルタチオン値の増加、電子輸送鎖の複合体1の機能と電子供与の改善、ニコチンアデニンジヌクレオタイドの増加と抗酸化能の強化などです。

 

References

Niacin and Inositol Hexanicotinate for Schizophrenia: LIVESTRONG.COM, July9, 2011

Medical Hypothesis Model; Is it time to reassess Alpha Lipoic Acid and Niacin therapy in
Schizophrenia ; December 2010

A massive dose of vitamins for depression and schizophrenia: LIVESTRONG.CO... ,Jun
12,2011

Alpha lipoic acid administration for psychiatric disorders(alzheimer's desease, post--stroke depression, schizopherenia, and major depressive disorder):Krystal Plonski's blog.Aug 28, 2011

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PM2.5による大気(空気)汚染と抗酸化物質の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-04-06 22:22:38 | 健康・病気

大気(空気)汚染(pM2.5やpM10など)による人類の酸化ストレスに対し、食物性抗酸化栄養素(抗酸化物質)を十分補給することが有効であることが、多くの研究により明らかになりつつあります。空気汚染による毒性の隠された姿である人体の酸化ストレスと、それに対する抗酸化作用のある食事性抗酸化栄養素の有効性の、生物学的・疫学的証拠が、米国の研究者らの再調査で明らかになりつつあります。

調査では、酸化ストレスと栄養素のバイオマーカーを調べ、空気汚染による酸化ストレスの生物学的・疫学的証拠では、酸化ストレスの調整物質として食事性抗酸化栄養素が役割を担い、また、ヒトのそれに対する応答では個々に変異が認められます。

最近の空の汚れなどのPM2.5による汚染への暴露が酸化ストレスの増大をもたらし、食事による抗酸化栄養素(ビタミンC、ビタミンE、カロチノイドなど)やオメガー3不飽和脂肪酸(EPA、DHAなど)の補給が、大気(空気)汚染による急性作用(毒性)に対し、調整的役割をする可能性があるという、重要な証拠があります。将来、大気(空気)汚染に曝される地域の、長期にわたる空気汚染による長期の毒性に対し、抗酸化栄養素(野菜、果物、それに豆類などに多く含まれる)を戦略的物質として啓蒙することは、人類の安ねんに必要と考えられます。

現在、PM2.5などの大気(空気)汚染に対するキーワードは、大気汚染、酸化ストレス、炎症、抗酸化栄養素(VC,VE,カロチノイド)、オメガー3不飽和脂肪酸、それに遺伝などです。さらに、欧米の研究者らは、酸化ストレスのバイオマーカー、抗酸化栄養素(セレン、フラボノイド、ポリフェノール、カロチノイド、VC,VE、グルタチオン、それにオメガー3不飽和脂肪酸)に注目し、研究しています。

ところで、、これらの栄養素は安全性が高いので、野菜、果物、それに豆などの抗酸化食品に加えて栄養サプリメントで適正量を併用摂取することも、PM2.5とPM10の毒性から自分の体を守る、栄養医学的手法と考えています。体質にもよりますが、これらのサプリメントの併用摂取は安全性が高いようです。ただし、セレンはミネラルなので、摂取量を100μg/日以下が望ましい、と考えます。腎臓の悪いヒトやアレルギー体質のヒトは、摂取量を減らすか、摂取しないかを栄養医学に詳しい医師・薬剤師に相談して下さい。

References

Air pollution, oxidative stress and dietary supplementation: a view, I Romleu et al. Eur
Respir J 2008;31: 179-196

Antioxidant therapy attenuates oxidative stress in the blood of subjects exposed to occupational airborne contamination from coal mining extraction and incineration of hospital residues: D Wilhelm  Filho et al, Ecotoxicology,
19: 1193-1200

 

 

 


PM2.5とPM10のin vitroでの研究とビタミンC,グルタチオンの効果について 栄養医学ブログ  日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-04-02 20:20:40 | 健康・病気

60年程前に比べて、近年、空が汚れ、濁ったことに心が痛みますが、この事が人類の生存に警笛を鳴らしています。最近の疫学的研究は、大気汚染と健康障害の間に関連が有る可能性を強調しています。広く受け入れられた仮説では、空気で運ばれて来た微小粒子(PM)は、急性症状と慢性症状の両方において、その原因となる可能性があります。このように、罹患率と死亡率の一定した統計的増加は、大気中の微小粒子の量が上昇している間、大気汚染による発病と結び付いています。根本的原因を解決し、昔のように青い、澄んだ空にすることが最重要ですが、なかなか困難なようです。ここでは、PM2.5やPM10が原因の罹患率や死亡率に対し、ビタミンCとグルタチオンのそれらに対する減少作用について考えていきたい、と思います。

抗酸化栄養素(ビタミンC,グルタチオンなど)は、都市や工場、車などから出る微小粒子(PM2.5やPM10など)が原因の肺疾患に対し、防御作用を示すことを、英国のCardiff大学のL L Greenwell博士らの研究グループが明らかにしました。吸い込んだPM2.5やPM10に対する防御作用に於いて、肺内の液性抗酸化物質(ビタミンCとグルタチオン)の効果を説明するために、英国のサウス・ウエルズで採取した、いろんな空気中のPM2.5やPM10を、それらの毒性の比較のためにin vitroで分析することに、彼らは焦点を当てました。

都市や工場から採取したPMは、それぞれ、12.9±2.1μg/ml、4.9±0.9μg/mlであり、in vitroでは低い濃度であり、DNAの酸化の50%の低下をもたらしました。この生体反応の第一の原因は、両方のPMを集めた溶解性フラクションであることが判明しました。両方のケースでは、もっと大きいPM10-2.5のフラクションは、PM2.5-0.1のフラクションより、もっと強い生体反応を示しました。人工肺の内部液(200μMの尿酸塩、グルタチオン、ビタミンC)と新鮮な肺洗浄液の低分子量フラクションが存在する時、それを繰り返した時、DNAの損傷は、すべてのケースで著しく減少しました(p<0.05)。

それらの抗酸化物質は、都市の空気サンプルより、工場の空気サンプルにおいて、もっと強い効果があり、PM2.5-0.1のフラクションよりPM10-2.5のフラクションにおいて、もっと強い効果がありました。

呼吸に適したPM濃度と都市部の空気サンプルは、呼吸できるPM濃度と工場の空気サンプルより、フリーラジカル源がもっと少ないという発見を支持するものです。したがって、これらのデータは、ビタミンCやグルタチオンなどの抗酸化栄養素が、PM2.5やPM10による生体のフリーラジカルを増やすのを防御することを示していますが、更なる研究を期待しています。また、PM2.5やPM10に対する戦略では、それらがフリーラジカルを人体内で大量に発生さすので、抗酸化栄養素などで消去さすことが、主たる戦略と考えられます。なお、食生活では、野菜、豆、果物、それに海藻など抗酸化栄養素を含む食品を多く摂取することが肝要と考えられますが、不足分は、抗酸化栄養サプリメントで補うのも一つの方法です。

References

Pulmonary antioxidants exert differential protective effects againist urban and industrial
particulate matter:L L Greenwell et al, J. Biosci. February 2003

Particle-induced oxidative damage is ameliorated by pulmonary antioxidants:L L Greenwell et al, Free Radical Biology and Medicine 32(9),2002

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