医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

実験動物でのビタミンCの十二指腸ガンに対する効果について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-27 18:22:46 | 健康・病気

ドイツのウエルナー博士らは、ラット小腸の化学的発がんに及ぼすビタミンCの作用を研究し、ラット飲用水にN-エチル-N-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(ENNNG)を入れ、その飲料水の摂取後18週目に90%以上のラットの小腸にがんを生じせしめました。

結果は、発がんは食物中の大量ビタミンCナトリウム(2~3%)により抑制されないが、ガンの侵潤は抑制されました。ガンはENNGのみを摂取したラット30匹中29匹で進行し、ガンの侵潤は、このグループの25匹ではステージP4に相当し、また、ENNGに加えてビタミンCを摂取したグループでは、35匹中13匹でステージP4でした。ビタミンC単独投与グループでは、小腸の病理学的変化は認められませんでした。この結果から、ガンの侵潤はビタミンC投与後抑えられました。

ENNGグループ36匹中、33匹がガンになり、ガンの総数は156で、胃ガン1、十二指腸がん150匹、空腸がん5匹。ENNG+ビタミンCグループ35匹中、32匹がガンになり、ガンの総数は136で、胃ガン3、十二指腸がん133匹、空腸がん0匹。ビタミンCグループ10匹中、それぞれのガンになったのは0匹。

投与期間18週でのラット上部消化管の組織学的所見
ENNGグループ36匹中、正常所見3、腫瘍とその境界線上のガン4匹、P2は1匹、P3は3匹、P4は25匹。ENNG+ビタミンCグループ35匹中、正常所見3匹、腫瘍とその境界線上のガン8匹、P2は8匹、P3は3匹、P4は13匹。ビタミンCグループ10匹中、正常所見10匹、その他のガン所見は0匹。

動物実験でもビタミンCのガンに対する効果が確認されていますが、更なる実験の積み重ねにより、ビタミンCのガンに対する有効性が、より確かなものになる、と期待しています。

Reference

ウエルナーB: ビタミンCと十二指腸がん、ランゲンべックス、アルキィブフ―ル、キルルギ―、354巻、2号、1981年

 

 

 


疫学的調査によるガン予防とビタミンC・抗酸化栄養素(抗酸化物質)の効果について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-01-27 15:12:53 | 健康・病気

ベルケ博士らの疫学的調査では、胃腸管のガンと関係が深いのは、食物のビタミンC含有量であり、野菜・果物からたくさんビタミンCを摂取しているヒト、およびビタミンCを大量に補給しているヒトは、明らかに胃腸管のガンの発生率が低いことを示していました。

チョ―プ、ブレスロ博士らの研究によると、ビタミンCを平均127mg/日の高摂取者は、死亡率が、24mg/日の低摂取者に比べて、40%以下でした。また、エンストローム博士らは、65歳以上のヒト365人について、コホ―ト研究を行い、喫煙、飲酒、砂糖の摂取を避け、減塩を実施し、肥満に気をつけ、いろんなビタミン、ミネラルなど十分摂取し、ビタミンC1.7g/日、ビタミンE700国際単位/日、ビタミンA1800国際単位/日、を摂取していました。彼らを一般人と比較した時、標準的死亡率は、60%(全員)と47%(293人の非喫煙者)と、明らかに低いようでした。なお、この死亡率のデータは、この種の老人グループでの報告データの中で最低でした。以上の結果を考察すると、ガン、およびその他の疾患の罹患率を低く抑え、良好な健康を維持するには、1~10g/日のビタミンCを摂取し、これに加えて、ビタミンA,E,B群、および必須ミネラルの十分な補給が必要、と考えられます。なお、当方の考えですが、これらに加え、乳酸菌、納豆菌、それに食物酵素を多く含む食品、およびそれらの栄養サプリメントを補助的に摂取することも、
生活習慣病の予防・治療に必要、と考えられます。

以前、名古屋大学の大野博士らのガンの疫学調査によると、食道がんの多い和歌山県と低い愛知県の食道がんの入院患者201名を対照にした、ガンに罹る前の食事内容や生活習慣歴など約400項目にわたる詳細な聞き込み調査を実施し、その結果、酒やタバコを嗜まず、キャべツ等新鮮野菜を多く摂取していたヒトの食道がんに罹る危険率を1とすると、野菜を摂取しないで酒、タバコを嗜むヒトの相対的危険率は愛知県18.1、和歌山県77.4、と異常に高いことがわかりました。また、酒やタバコを嗜み、野菜を多く摂取しているヒトの危険率は愛知県6.6、和歌山県13.4で、野菜を多く摂取するだけで危険率が大幅に低下することが分かりました。また、別の研究では、緑黄色野菜には発がん抑制効果があると報告されています。野菜のポリフェノール、ビタミン、ミネラルなどが発がん抑制に働いている、と考えられます。

また、ガンや糖尿病、動脈硬化の予防には、食事での蛋白質量、動物脂肪量、炭水化物量などの量と比率も重要で、そのヒトに合ったベスト比率の研究が現在、栄養学者らによって研究されています。

References

ベルケ、E: 胃ガン、結腸がん、直腸がんの疫学的研究、特に食事の重要性について、Scandinavia Journal of Gastroenterology,Volume9,1974

チョップH.D, ブレスロ.L: 老化の栄養像、American Journal of Public Health,Volume46, 1955

藤井毅彦:ガンと栄養、日本ビタミンC研究会、1979年