医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガンのビタミンC療法の実際について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-02-26 15:21:01 | 健康・病気

ガンのビタミンC療法では、点滴と経口投与を併用しているのが現実のようです。多くのクリ二ックでは、リオルダン博士が開発したプロトコールを中心に実施しているようです、この実際を知ることにより、安心して治療に臨むことができます。

リオルダンクリニックによると、ガンとその症状の診断は、クリニックへ提供された情報に基づき、病理医と腫瘍医のデータから行われます。それから、G-6PHD欠損症のガン患者は溶血反応があり、ビタミンC大量点滴ができないので、その検査が行われ、合格したガン患者が、ビタミンC点滴のプロトコールに従って、インフォームドコンセントを経て点滴が実施されます。

リオルダンクリニックでは、最初、生理的食塩水の補液にビタミンCを混注し、ゆっくり点滴します。その際、正常な腎機能、正常な水和機能、それに正常な尿排泄機能などを有するかどうか確認するため、基準となる試験では、血清化学プロフィールと尿検査が実施されます。そして、最初のビタミンC点滴(10g/回)に耐えることができると、次に週3回まで5~50g/回の点滴を続けるオプションが与えられます。なお、インフォームドコンセントにサインし、プライバシーと匿名のガイダンスは、分析のためのデータを集めるため行われます。リオルダンプロトコールにより実施された45名のガン患者でデータが分析され、その内訳は、前立腺がん24名、乳がん9名、膀胱がん3名、すい臓がん3名、肺がん3名、それに甲状腺がん1名、皮膚がん1名、B-細胞性リンパ腫1名よりなり、数名のガン患者は転移していたと、報告されています。

このクリニックへ来る前にガン患者の多くは、伝統的治療法、手術、放射線療法、それにホルモンと抗ガン剤により治療されていました。患者の年齢の中央値は68歳で、47~85歳の間でした。ビタミンC点滴に対する臨床上の応答は、炎症、腫瘍マーカー、血液検査、脂質像、それに栄養状態のパラメータのスクリーニングにより評価され、追跡期間の中央値は、7.2年で、1年から18年の範囲でした。結果からは、ステージが早いガン患者は、寛解率と生還率が高い傾向にあり、QOLや腫瘍マーカーの改善が認められました。今後の課題として、患者の状態に応じた、適正なビタミンC点滴量(例えば50g/回か70g/回)と適正な投与回数、期間が検討される必要が有ると、考えられます。以上、リオルダンクリニックのビタミンC点滴の臨床研究の概略を述べましたが、他のクリニックでも独自のアイデアとアレンジで、ビタミンC療法を実施されている所もあるようです。

References
Nina Mikirova, et al. Effect of high dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translation Medicine. 2012, 10:189
Roxburgh CS, et al. Role of systemic inflammatory response in predicting survival in patients with primary operable cancer. Future Oncol. 2010.6:149-163

 

 


ガンの腫瘍マーカー、炎症マーカーとビタミンC療法 について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦 

2018-02-21 14:31:35 | 健康・病気

ガンのビタミンC療法については、基礎研究を始め、臨床研究など数多くの研究が、世界中でなされ、現在、ガンの臨床では、基礎療法として、米国を始め、多くの医療機関で実施されています。

米国のリオルダンクリニックでの臨床研究によると、前立腺ガン患者にビタミンC点滴療法が行われ、腫瘍マーカーのPSA値とCRP値の低下が見られ、ガン患者の炎症を抑制する可能性は、血清サイトカイン値から示唆されます。このことは、ビタミンC点滴期間中、炎症促進サイトカイン値が低下することを示しています。また、IL-2、TNF-α、それにeotaxin値は、ビタミンC点滴を受けているガン患者でたえず低下していますが、IL-1α、IFN-y、IL-8、IL-2、TNF-α、eotaxinなど六つのサイトカインは、50g/回のビタミンC点滴後、実際に低下しました。また、Cameron博士らの研究では、腫瘍マーカーの生化学的検査が実施されない場合でも、quality of lifeの改善や患者の倦怠感の改善などの症状の改善が見られました。

リオルダンクリニックによると、IL-1の抑制率は6名のガン患者では20%、eotaxinの平均抑制率は25%でした。また、IL-1は炎症のプロセスと転移の拡大を促進さすことが知られ、それはガンの部位で多く見られ、発がん現象のプロセス、腫瘍の成長と浸潤、それにガンと宿主であるヒトの間の相互作用のパターンに影響しています。IL-1はUPAの発現とNF-kB活性化を誘導します。その他の、カギとなる炎症性サイトカインのTNF-αは、ガンの進行において中心的役割を演じます。ガンの微細環境でのTNF-αの発現は、多くの悪性腫瘍の特性であり、それが存在することはしばしば悲惨な予後を伴います。eotaxin-1は、ガン細胞の成長に影響する化学的誘引物質とリンパ球活性化物質です。多くのガンでのキモカイン受容体発現は、悲惨な予後と関係し、eotaxinが脈管形成とガンの転移を誘導するという証拠もあります。

これらの研究から、サイトカイン値の検査とそのデーターの分析では、ビタミンCの点滴が、ガン患者の炎症を低下させ、この低下は、腫瘍マーカーのPSA値の低下と関係が有ることが、示唆されます。最後に、ガンでのビタミンC療法が、これほど多く研究されているのは、他の分野の研究では見られないことです。

References
Nina Mikirovo, et al. Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journalof translation medicine. 2012. 10. 189
Joyce JA, et al. Microenvironmental regulation of metastasis. Nat Rev Cancer.2009.9.239-252

 

 


心不全対策としてのプロバイオティクスの役割について栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-02-13 10:52:09 | 健康・病気

近年、プロバイオテイクスのいろんな疾患に対する治療効果の可能性が、多くの研究でなされ、報告されています。最近の研究では、プロバイオティクスの摂取が、血圧の改善など心臓血管系システムへの利点を有する可能性が示唆されております。心不全患者は、心臓の機能的・器質的変化の進行ゆえ、そこに軽度の炎症が見られます。さらに、心臓が機能不全に陥った時、心筋細胞では、癒着分子やTNF-α、IL-6、それにその他の炎症因子など炎症性化学伝達物質の発現の亢進が見られます。慢性心不全患者は、組織還流と浮腫を伴った、腸管の運動性と絨毛での吸収の阻害が通常見られます。これらの腸管変化は、腸管病原叢の増殖を促進し、細菌(エンドキサン)性転座(染色体異常の一つ)を増加させます。

これらの心臓ー腸管の相互作用下では、炎症性サイトカインとキモカインは、左心室駆出分割(心臓の収縮機能の指標)により判断されるように、症状と心臓機能を悪化させるため、ほとんどが上昇すると考えられます。これらに対し、プロバイオティクスがどの程度改善できるかにより、慢性心不全患者に対する寛解が判断できると、考えます。

プロバイオティクスを入れた餌を与えたラットでの研究では、組織重量と心臓でのナトリウム排泄の増加性ペプタイドの遺伝子発現と左心室駆出分割の改善が見られ、左心室肥大の著しい減衰が認められました。

Federal Fluminense 大学(ブラジル)のAnnelise C. Costanza博士らの研究によると、Saccharomyces boulardii(プロバイオティクスの一種)を三か月間摂取した慢性収縮期性心不全患者は、プラセボに比べて、生化学的バイオマーカーと炎症性バイオマーカー(クレアチニン、尿酸、hsCRP)値の減少と心臓血管系機能(左心房径、LVEF)の改善が認められました。また、安全面では、このプロバイオティクスは安全で、副作用などは認められず、三か月の摂取に十分耐えれました。これらの結果からSaccharomyces boulardiiは、慢性心不全のプロバイオティクス療法に向く可能性があると考えられますが、更なる研究が求められます。他のプロバイオティクスも、今後、研究が期待されています。

References
Annelise C. Costanza, et al. Probiotic therapy with Saccharomyces boulardii for heart failure patients .International Journal of Cardiology. 11 November 2014
Thushara RM, et al. Cardiovascular benefits of probiotics. Food Funct. 2016 Feb;7(2):632-42
Probiotics against heart disease. News View. 23 March 2016

 

 

 


二型糖尿病とグリセミック指数の関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-02-10 11:13:47 | 健康・病気

二型糖尿病は、近年、腸内環境との関係が注目され、プロバイオティクスやプレバイオティクス( 食物繊維など)、それに食事療法などでその改善が求められています。このことと並んでグリセミック指数(糖化指数)との関係が注目されております。数十年前までは、日本では精製食品の消費量が少なく、食物繊維の多い、グリセミック指数の低い食生活でしたが、食品加工産業の発達により、食物繊維の少ない、グリセミック指数の高い食生活へと変遷していきました。このことが、二型糖尿病(糖尿病)の増加と関係あると、疫学的研究では報告されています。

糖尿病患者は、膵臓に負担をかけないよう、精製度の低い、ゆっくり分解する食品を選ぶことが血糖値の急激な上昇を防ぎ、インスリンの急激な分泌を防ぎ、すい臓の疲弊を防ぎます。グリセミック指数は、このために役立つようデザインされたもので、それは、代謝システムにおいて食物が糖へと、どの程度の早さで分解されるかを示した指数です。グリセミック負荷は、その食品のグリセミック指数(GI)と炭水化物量の両方で見られ、その食品が血糖値にどのように影響するかについて正しい考えをもたらします。

高GI値食品は急速に血糖値を上げますが、低GI食品は穏やかに血糖値を上げるため、すい臓の負担が少なく、血糖値スパイクを防ぎます。Michael Moore博士の研究によると、博士は、食品をfire foods、water foods、coal foodsの三つのカテゴリーに分類し、体にとって炭水化物は、分解するのがむつかしければむつかしい程、糖尿病患者にとって体に負担が少なくなります。博士の分類によると、fire foodsは高GI値を有し、食物繊維とたんぱく質が少なく、白い色の食品(白米、白いパン、白いパスタ、焼いた食品など)、スイ―ツ、チップス、加工度の高い食品などです。これらの食品は、出来るだけ摂取を控えるのが賢明です。water foodsは、胃腸への負担のない食品で、食べてもいいことを意味し、全ての野菜や生の果物です。果物で食べていいのは生の果物やドライフルーツで、シロップ漬けのカン詰のフルーツは、急速に血糖値を上げるので、water foodsではありません。coal foodsは低GI値で、食物繊維とたんぱく質を含み、玄米、全粒小麦粉、全粒粉うどん、全粒粉そば、全粒粉パスタなどで、糖尿病によくないwhite foodsにとって代わります。、

低GI値食品を摂取するには、非でんぷん質の野菜、豆、それにリンゴ、なし、柿、桃、それにベリー類のような果物を常食することです。また、生のバナナ、マンゴ、パパイア、ドリアン、ジャックフルーツなどのトロピカルフルーツなども、一般的な甘いデザートよりも低GI値の傾向を有しています。さらに食生活では、出来るだけ加工度の低い穀物を食べる必要が有ります。そして、魚、豆類、皮なし鶏肉のような健康に良いタイプのタンパク質食品を選び、油脂類では、オリーブ油、亜麻仁油を選び、ナッツやアボガドなど健康に良い油脂の摂取が望まれます。また、酪農製品や動物製品由来の飽和脂肪酸も摂取量を減らし、トランス脂肪酸(加工油脂)はファーストフード、包装した食品などに含まれているので、避ける必要が有ります。そして、時間栄養学で言われているように、規則正しく、ゆっくり食べ、過食を避けることも必要です。なお、実践面では、これらに詳しい管理栄養士(食事療法、栄養サプリメントのプロ)に相談してください。

References
Maya W, et al. Diabetes Diets&Food Tips. HELPGUiDE. Aug 2013
Mikel Theobald. The best and worst foods to eat in a Type2diabetes diet. everydayHEALTH.



二型糖尿病と脂肪の関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-02-06 09:53:56 | 健康・病気

日本では、糖尿病予備軍を含めて二型糖尿病患者が約一割いると、報告されています。そこで、糖尿病(二型糖尿病)対策は、主として食事が重要になり、脂肪の選択が必要です。脂肪は、有害であったり、有益であったり、デリケートな、扱いにくい栄養素です。そして、糖尿病患者は、合併症として心臓病のリスクが極めて高いので、脂肪の選択について賢い選択が必要です。

健康に悪い脂肪で、健康にダメージを与える脂肪は、牛肉などに含まれる飽和脂肪酸とパン、クラッカー、ビスケットなどに含まれている人工的なトランス脂肪酸(加工油脂)です。なお、メーカーによってはトランス脂肪酸やショートニングを入れてないものもあります。飽和脂肪酸は、赤身の肉、酪農製品など動物性食品に多く含まれていますが、量的に適正であれば、体に必要です。特に、成長期の人と老齢期の人では、適正摂取量に違いが有り、老齢期では、糖尿病、心臓病、腎臓病の人は減らした方が賢明です。その分、豆や魚介類の不飽和脂肪酸のオメガー3不飽和脂肪酸の摂取が必要です。油が腐らないために水素を人工的に添加したトランス脂肪酸は、食品にサクサク感を与えるため、多用されていますが、体には大変悪く、動脈硬化や心臓病を促進するという研究報告もあります。また、米国では、トランス脂肪酸の多用は心臓病のリスクが高まるため、2018年から禁止されています。日本でも加工食品やファーストフードの摂取が増え、食生活の欧米化でトランス脂肪酸の摂取が増えていると、報告されています。

健康に良い脂肪は不飽和脂肪酸ですが、現在の食生活では、リノール脂肪酸は十分摂取されており、オメガ-3不飽和脂肪酸(DHA、EPA、α-リノレン酸など)やオレイン酸が不足しており、このベストの脂肪酸の摂取が求められています。オメガ-3不飽和脂肪酸は、炎症と戦い、脳や心臓を守ってくれます。オリーブ油、ナッツ、アボガド、亜麻仁油、それにサケ、マス、タラ、サバ、イワシなどに含まれています。昔の日本人はこれらの魚をよく食べましたが、漁業資源の減少や食生活の欧米化などで減少しています。

健康に良くない脂肪を減らし、健康により良い脂肪を摂取するには、バターや野菜油を減らし、オリーブ油(オレイン酸を含む)や亜麻仁油、魚油(青魚に含まれる)をよく利用します。肉類は脂肪を取り除き、鶏肉は皮を取り除きます。また、おやつには、ポテトチップスやビスケット、クラッカーの代わりに、ナッツ類を適正量摂取します。ナッツバターは、オメガ-3不飽和脂肪酸の良い供給源です。フライや赤身の肉の代わりに、魚や魚介類の煮たものを2~3回/週、摂取します。飽和脂肪酸の多いチーズ、バターの代わりに、サンドウィツチにはアボガドを載せ、食物を焼く時には、ショートニングやバターの代わりに、リンゴソースを使うのも一法です。また、低脂肪のクリームがお勧めです。

規則的に食事をし、食事日記をつけ、家事や庭仕事、家庭菜園、日曜大工などの適度な身体活動も必要です。また、補助的に、生姜や玉ねぎなどネギ類、プロバイオティクス、プレバイオティクス、それに食事性ビタミン、ミネラル、ポリフェノール類の適正量の摂取も糖尿病の寛解につながると、報告されています。また、糖尿病患者は、腸内環境が悪化しているので、その細菌叢を改善するために善玉菌(乳酸菌、酪酸菌、納豆菌、ビフィズス菌)優位の環境にすることが大切と、最近の研究で報告されています。さらに、肉や飽和脂肪酸の多い食品と高度精製穀類やその粉製品は、腸内フローラを悪化させます。野菜、豆、生の果物、それに精製度の低い炭水化物は、逆に、腸内フローラを改善します。また、適度の身体活動、食事の改善、ストレスの緩和、十分な、良質な睡眠、それにアルコールやたばこの断念も合併症の予防に必要と、米国の研究で報告されています。されなる研究が期待されます。

References
Maya W, et al. Diabetes diet &Food Tips. HELPGUIDE. August 2013
Mikel Thebold. The best and worst foods to eat in a type2 diabetes. everyday HEALTH