医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガン細胞でのTNF-α誘起、NF-kB活性化、ICAM-1とマイクロRNA発現とビタミンCの阻害作用 藤井毅彦 日本ビタミンC研究会

2018-04-24 10:00:35 | 健康・病気

ガンや潰瘍性大腸炎、自己免疫疾患、その他の疾患では、炎症因子のTNF-αの血中濃度の異常が観察されています。潰瘍性大腸炎では血中TNF-α値が対照に比べて大変高くなっており、TNF-αを阻害する薬剤が治療に使われていると、報告されています。しかし一方、米国での研究によると、ビタミンCや乳酸菌などプロバイオティクスのTNF-α阻害作用も報告されています。また、ガン細胞でも同様にTNF-α値が高く、ガンの主たる炎症因子となっています。そこで、ビタミンCやプロバイオティクスでガン細胞のTNF-α値をコントロールできないかという発想が浮かんできます。

Son EW博士らの研究によると、ビタミンCがヒト神経芽細胞腫(ガンの一種)でのTNF-α(炎症因子の中心)誘起によるNF-kB(核内因子kBのことで、転写因子として働くたんぱく質複合体)の活性化とICAM-1(免疫系の細胞間相互作用を司る接着分子の一つ)発現をブロックすることが分かりました。このことはガン細胞の活動を抑制することに繋がると、考えられます。

細胞接着分子の相互作用は、炎症の媒体において重要な役割を演じます。炎症促進サイトカインのTNF-αは、NF-kBシグナル経路を活性化し、ICAM-1の発現をもたらします。ヒト神経芽細胞腫において、ビタミンCの作用では、その濃度依存による投与量では、TNF-αの誘起によるICAM-1の上方発現の阻害とmRNAの下方調整がもたらされ、さらにゲルシフト分析では、ビタミンC濃度依存による投与量では、TNF-α誘起によるNF-kB活性化が阻害されました。

これらの結果から、ビタミンCが、NF-kB活性化の阻害により、TNF-αにより誘起されたICAM-1発現を下方調整することが示唆されます。また、他の研究では、ビタミンCやビタミンD3、乳酸菌などプロバイオティクスは、TNF-αの過剰産生を低下さす作用があることが報告され、上記疾患への栄養医学的対策の手段になる可能性があると、報告されています。

References
Son EW, et al. VitaminC blocks TNF-α-induced NK-kB activation and ICAM-1 expression in human neuroblastoma cells. Arch Pharm Res. 2004 Oct;27(10)
Yuanyuan Chen, et al.VitaminC mitigates oxidative stress and TNF-α in severe community-acquired pneumonia and LSP-induced macrophages. Mediators of Inflammation. 2014

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飲酒による腸内環境悪化とビタミン類欠乏について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-04-22 16:52:59 | 健康・病気

酒を飲むと多くの栄養素の欠乏や腸内環境の悪化をもたらし、臓器の障害をもたらす可能性が有ります。アルコール依存症患者は、飲酒により小腸の善玉菌優位環境を壊し、消化酵素の働きを鈍らせ、腸内環境を悪化させ、小腸のビタミンB群やセロトニン、ドーパミンの産生能を低下させ、代謝が停滞し、精神機能などにも影響します。また、善玉菌が死滅するため免疫能が低下し、腸管バリアーに障害をもたらし、細菌やウイルスの侵入をもたらします。

アルコール依存症では、腸内環境の悪化により腸と脳の連携機能が阻害され、脳の萎縮を始め、知能指数の低下や認知症など精神機能の重大な障害をもたらす可能性があると、報告されています。摂取したビタミンなど重要な栄養素の吸収阻害や、腸内環境の悪化によるビタミンB群産生能の低下によりビタミン欠乏症をもたらし、特にビタミンB1の欠乏が著名です。

ビタミンM(葉酸)は新しい細胞を作り出したり、それを維持するのに役立ちます。酒に含まれるエチルアルコールは、食事性葉酸塩の摂取、その吸収、必要な組織へのその輸送、それに肝臓での葉酸塩の貯蔵と遊離に拮抗し、その結果、体内の正常な代謝を乱します。次にビタミンB12はDNAの合成に必要で、健康な神経細胞と赤血球を維持するのに必要です。普通のアルコール摂取量と多量のアルコール摂取量は、血中ビタミンB12値に影響し、その摂取量が0g/日から30g/日に増加した時、平均血清ビタミンB12濃度の5%の減少が見られ、アルコールがビタミンを消費することがわかります。他のビタミンB群も同じ傾向が見られると、報告されています。

ビタミンAは、視力や免疫システムの維持、骨の成長、生殖、細胞の分割と分化に必要で、アルコールが大量摂取された時、その欠乏を促進し、その毒性が強まります。また、ミネラルのCaは、飲酒により尿中へのCaの排泄の増加により体内のCaの損失をもたらします。これらはアルコール摂取による腸内環境の悪化により腸の機能が阻害されることも関係しています。アルコール依存症の人は、ビタミンや必須ミネラルを多く含むバランスの良い食事とともに、発酵食品やプロバイオティクス、プレバイオティクスのサプリメントでアルコールにより悪化した腸内環境を改善することも重要と、考えられます。更なる研究が待たれます。

References
Alcohol and nutrition. MedicineNet.com.March 28,2015
A lower IQ has been linked to greater and riskier drinking among young adult men. ScienceDaily. Feb20,2015

 

 

 


ガン予防の栄養素・食物について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-04-09 16:15:28 | 健康・病気

ガンの原因は、感染や環境要因などいろいろですが、日頃の食事も重要な要因です。ニュヨークのシャクタークリニックのSchachter博士によると、ガンの予防には、野菜、生の果物、全粒粉、それに全粒米など出来るだけオーガニック作物を摂取し、全体的に有機栽培食品と魚介類、豆類などを中心とした食生活に転換することが大切と、言われています。できることなら、酵素補給のため生の果物や、腸内環境改善し、免疫能を高めるため、乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌など腸内環境を改善するプロバイオティクスやプレバイオティクスなどを含む発酵食品の摂取が望まれます。

ガン患者や遺伝的にガンになりやすい体質の人は、これらのガンの食事療法に加え、適正量のビタミン類、必須ミネラル類(過剰摂取に注意、特に鉄)、パパイヤなどに含まれるタンパク分解酵素、オメガー3不飽和脂肪酸、EPA、DHA、ポリフェノール類など植物性栄養素、それに生姜などの抗ガンハーブの適正量の摂取が望まれます。なお、これらの栄養素は、ラットでの実験では、摂取量を増やし、併用摂取すると治療効果が高まると、報告されています。

ミルコ・ペルジェンスキー博士らの研究によると、ハーブエキス(Pao PereiraとRovol Vomitoria)、異常創傷組織形成を抑制するハーブエキス(Ginkgo Biloba)、血小板や白血球を刺激する(特に放射線療法や化学療法を受けたガン患者に有益な)非病原性大腸菌のRNAエキスなどがガンに有効との報告が有りますが、更なる研究が望まれます。別の研究では、発酵小麦胚芽製品、マイタケD-フラクションとビタミンC点滴との併用でガン細胞を抑制し、正常細胞の機能保持に有効との報告もあります。これらはマイルドな効果ですが、強烈な副作用が少ないと考えられ、研究する価値があります。さらに、適度の身体活動の実行と共に、飲酒や喫煙、化学物質、それに、いろんなストレスなどの発がんリスクを減らすことも重要と、考えられます。更なる研究が待たれます。

References
Dr.Schachter. Schachter Center for Complementary Medicine. www.schachtercenter.2009

 

 

 

 


喫煙者、カフェイン高摂取者の発がんとビタミンC、D、Eの作用について 藤井毅彦 日本ビタミンC研究会

2018-04-06 13:45:23 | 健康・病気

長年にわたる喫煙習慣のある人は、喉頭がん、肺がん、胃癌、膀胱がん、それに気管支ガンなどガンの発症リスクが、そうでない人に比べて高いと、疫学的研究では報告されています。また、喫煙者の発がんリスクを、長期にわたるビタミンCの摂取やそれを含む野菜や生の果物の摂取が、減少さすという研究報告も多くあります。

米国での研究によると、5名の喫煙者と5名の非喫煙者での60日に及ぶ追跡調査では、尿中ビタミンC値が、一か月、一日おきに測定されました。これらの人々は、ビタミンCやオレンジジュースを摂取するよう指示されていない条件での正常な尿中ビタミンC排泄値は、5.2~6.2mg/%の間で変動しました。常時喫煙者の排泄値は1.2mg/%を超えませんでした。しかし、非喫煙者の多くは、排泄値が約2.0mg/%まで上昇しました。これらの対照期間に続いて、5名の喫煙者と5名の非喫煙者は、一か月間、凍結オレンジジュース(ビタミンCを300mg含む)を解凍し、コップ3杯摂取し、ビタミンC(還元型ビタミンC)値の測定は、非喫煙者同様、一日おきに実施し、喫煙者では10~11mg/%の範囲で尿中ビタミンC値の増加を示しました。一か月の対照期間、オレンジジュースを飲んでいない喫煙者の平均値は、0.68mg/%で、非喫煙者の平均値は4.98mg/%でした。

この研究の目的は、測定した還元型ビタミンC値が尿中物質の酸化を防いだり、発がん性の可能性のリスクを防ぐのに十分であるかどうか調べることでした。また、シュレ―ゲル博士の研究では、発がん性のある水酸化βナフチルアミンは、ビタミンC20mg/%の濃度で2時間インキュベイトすることにより、その間、急速な酸化をその濃度で受け、20mg/%より高い濃度ではナフチルアミンの酸化を防ぐ結果でした。この結果をヒト被験者での研究と関連づけると、この尿中ビタミンC値に達するには、解凍オレンジジュースをコップ3杯摂取することにより、平均濃度4~5mg/%が達成されます。これらの結果から、尿中還元型ビタミンC値をいつも飽和状態にすることが、喫煙者の発がんリスクの減少につながると、考えられます。喫煙者は、意識的に野菜や生の果物、ビタミンCのサプリメントの摂取が必要と、考えられます。更なる研究が期待されます。

また、諸外国の研究によると、コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインは、膀胱がんのリスクを高める可能性があり、カフェインは、膀胱がんRT4細胞のアポトーシスを抑制します。非喫煙者での調査では、コーヒーを一日一杯以上飲む人群では2.24倍、緑茶5杯以上の人は1.14倍、エナジードリンクに含まれるカフェインを毎日摂取する人では2.05倍、それぞれ摂取しない人に比べて、膀胱がんのリスクが高くなっています。カフェインによる膀胱上皮細胞への悪さによりその細胞が遺伝子異常を起こし、発がんに至ると考えられています。また、帯状疱疹などで長期にビタミンB12を摂取する老人も膀胱がん発症のリスクが高まると、いろんな研究で報告されています。なお、ビタミンE(アルファトコフェロール),ビタミンDなど膀胱がんを抑制する作用が報告されており、またビタミンCには、膀胱がん患者への延命効果も報告されております。これらは、抗がん剤や他の医薬品と相互作用がないか専門家に相談したり、ネットで調べる必要があります。これらのビタミンEとDには、膀胱がんによる頻尿を改善するとの、報告もあります。また、膀胱がん患者で、エナジードリンク、カフェイン飲料、コーヒー、紅茶をやめ、緑茶も減らすと、日中頻尿や夜間頻尿が改善されたとの報告もあります。これらのビタミンによる効果か、カフェイン高摂取中止による効果か、それとも両方による相乗効果か判断できないと、考えられます。。更なる研究が待たれます。


References
Ewan Cameron, linus Pauling. Cancer and vitaminC.Warner books. 1981
JN シュレーゲル.膀胱がん予防におけるビタミンC摂取の提案。Annuals New York academy of Science. Volume 258,1975

Zeljic K,et al.New insight into vitaminD anticancer properties: focus on miRNA modulation. Mol Genet Grnomic. 2017 Jun; 292(2);511-542

Ma Y, et al. VitaminD and miRNA in cancer. Gurr Gene Ther.2014;14(4):269-75

Emma L. Beckett, et al. Modulation of microRNA by vitaminD in cancer stufdies.Hand book of nutrition , diet, and epigenetics. pp1-22. 15 June 2017

Hamid Mazdak,et al. VitaminE reduces superficial bladder cancer recurrence. Int J Prev Med. 2012 Feb,;3(2):110-115

VitaminD and cancer prevenrion. NIH.2013

One form of vitaminE appears beneficial in rreducing bladder cancer risk. University of Texas. Science Daily. March 31,2004 

ProfRoc.Vitamin C and for cancer treatment. Mayo Clinic. Jul.23.2016

With you have bladder cancer with vitaminB12-from FDA reports. eHealthMe

 

 

Coffee consumption and bladder cancer. PMC. 2015 May12

 


疾患でのTNF-α、IL-6上昇とビタミンC、乳酸菌の関係について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦 

2018-04-01 10:31:37 | 健康・病気

クローン病、潰瘍性大腸炎など自己免疫疾患、がん、感染症などではTNF-α(炎症の中心的因子)の著しい上昇が、多くの研究で報告されています。このTNF-α値の上昇を抑制することが、これらの疾患の軽減につながる可能性が有ることから、ビタミンCや乳酸菌が研究され、これらの抗TNF-α作用が報告されています。

乳酸菌による研究では、Hegazy sK博士らは、潰瘍性大腸炎患者に8週間にわたって乳酸菌のLactobacillus delbruekiiとLactobacillus fermentumを摂取してもらい、IL-6の結腸濃度の低下とTNF-αとNFkappaBp65の発現の減少を確認しています。他の研究でも、乳酸菌の同様の作用を報告しています。

生体の酸化ストレスは、外部からの病原体の侵入による宿主(ヒト)の生得免疫応答の重要な一部ですが、ビタミンCの肺炎に対する効果は報告されていましたが、酸化ストレスと炎症に及ぼすビタミンCの影響は、肺炎患者の集団では研究されていませんでした。Luzhou医科大学のYuabyuan Chen博士と他の大学の研究によると、登録した肺炎患者の活性酸素(ROS)、DNAの損傷、superoxidedimutase(SOD)活性、TNF-α、IL-6(生物学的反応修飾物質)が調べられ、さらにリポポリサッカライドの刺激によるマクロファージが調べられました。また、MH-S細胞は、RFP-LC3プラスミドでトランスフェクト(遺伝子操作の一方法)されました。オートファジィ(自己消滅)は、マクロファージ細胞で調べられました。その結果、重度の肺炎患者は、活性酸素、DNAダメージ、TNF-α、IL-6値の著しい増加が認められ、SOD値の著しい低下が認められました。

肺炎患者の細胞は、血清を含まない培地で24時間、リポポリサッカライド、もしくはビタミンC100nMで処理され、ビタミンCの培地は、マクロファージの活性酸素、DNAのダメージ、TNF-α、IL-6、それにP38をそれぞれ抑制しました。さらに、ビタミンCはマクロファジーのオートファジィも抑制し、炎症性因子に有効なことが分かり、DNAをも守ることがわかってきました。これらのことから、以前に報告された乳酸菌による炎症因子の抑制だけでなく、ビタミンCにもいろんな炎症因子の抑制作用があることが分かってきました。更なる研究により、ビタミンCとプロバイオティクスが、いろんな難病の炎症因子を抑制することが、期待されます。

References
Yuanyuan Chen, et al.VitaminC mitigates oxidative stress and TNF-α in severe community-aquired pheumonia and LPS-induced macrophages. Mediators of inflammation. 2014
EI-Taukhy MA, et al. Effects of chronic ethanol and vitaminC administration on production of TNF-α and IL-6 in rats. Egypt J Immunol. 2006;13(1):1-10
Hegazy SK, et al. Effect of probiotics on pro-inflammatory cytokines and NF-kappaB activation in ulcerative colitis.World J Gastroenterol. 2010 Sept 7; 16(339;4145-51