腸内細菌の重量は約1.5kgほどあり、腸内細菌は腸内環境に大きな役割を果たす一方、腸管は一層の粘膜上皮に囲まれた空間で、粘膜上皮によって体の内部と外部が区切られています。粘膜上皮は、栄養素の消化・吸収だけでなく、有害物質や細菌の体内への侵入を防ぐバリアとして、腸管免疫系に関わっています。また、腸管上皮細胞は多様な細胞群で構成され、腸内環境を調整すると考えられています。
腸管フローラと腸管免疫
研究によると、腸管バリア機能の低下が自己免疫性膵炎の発症に関係し、腸内環境の悪化により、免疫系に異常を起こし、腸管バリア機能の低下をもたらし、病原性細菌(シウリ菌)が血中に漏れ出、膵臓に炎症を発症さすと考えられます。すなわち、腸内細菌のバランスの乱れが腸管バリアの破綻をおこし、それに乗じてシウリ菌が血中に入り、膵臓に移動し、自己免疫性膵炎を発症すると、考えています。
腸管の炎症とプロバイオティクス、L-カルニチン
プロバイオティクスは、直接的、間接的にNF-kBの誘導に対し防御効果を有し、IKB-αの低下を遅らせます。そうすることで、プロバイオティクスはNF-kBの活性化を阻害し、TNF-αとその他の炎症性サイトカインの発現を阻害します。加うるに、SODとカタラーゼのような抗酸化酵素を産生することにより、抗ROSとして作用し、腸管の炎症を抑え、腸管バリアを保護します。次に、L-カルニチン(リジンとメチオニンから体内で生合成されるビタミン様栄養素)は、酸化ストレスの活性因子であるmyeloperoxidaseとmalondialdehyde値を減少させ、抗酸化作用を有します。L-カルニチンは、SODをを強く調整し、glutathione値の減少を防ぎ、lipid peroxidesの蓄積を阻害します。それゆえ、ROSの形成と活性化を抑制し、NF-kB経路の阻害をもたらし、腸管の炎症を抑え、腸管バリアの損傷を防ぎます。これらは、単独でも効果があるが、プロバイオティクスや酪酸塩を併用することにより、効果が高まると考えられます。更なる研究が期待されます。
References
Sahar K Heqazy, et al. Effect of probiotics on pro-inflammatory cytokines and NF-kB activation in ulcerative colitis. World J Gastroenterol. 2010 Sep7
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Mahsa Moeinian ,et al. Synergistic effect of probiotics, butyrate and L-carnitine in treatment of IBD. Journal of Medical Hypotheses and Ideas. Vol7, Issue2, July2013