医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ベリー類(イチゴ、ブルーベリーなど)摂取と心臓発作の関係について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-06-30 18:37:09 | 健康・病気

イチゴやブルーベリーは、果物好きの米国人にとって、ポピュラーな果物です。また、英国や北欧の国々では、野菜や果物が日照量の不足や、低気温の関係で、収穫も少なく、種類も少ないようです。その不足を、豊富なベリー類(ブルーベリー、ブラックベリー、アサイベリー、ラズベリーなど)で補っているようです。しかし、日本では、上記、ベリー類を頻回に摂取する食習慣が有りません。そのベリー類が、心臓病や二型糖尿病のリスク減少に有益との報告が、ハーバード大学や東アングリア大学の研究で報告されています。今回は、その事について考えていきたい、と思います。

ハーバード大学のEric Rimm D. Sc博士らの研究によると、一週間にイチゴとブルーベリーを三回より多く摂取する女性は、それより少ない人や全然摂取しない人に比べて、3分の1ほど心臓発作のリスクの減少が認められました。これらのベリー類は、ビタミンCを始め、フラボノイド(アントシアニンなど)など抗酸化栄養素を多く含み、アントシアニンは、血管を拡張させ、プラ―クの増強を阻害させ、その他心臓血管系に対する利点を有する可能性があります。

ハーバード大学と英国東アングリア大学の研究者らは、看護師健康調査に登録した93,600名の25~42歳の女性で、予備的研究を実施し、18年間、4年ごとに食事の摂取状況について質問票に記入してもらいました。この研究期間中、405名の心臓発作が発症しました。そして、もっとも多くイチゴとブルーベリーを摂取した女性は、他の果物と野菜を豊富に摂取し、一か月に一回かそれ以下のベリー類を摂取した女性に比べて、心臓発作のリスクの32%の減少が認められました。また、東アングリア大学のAedin Cassidy博士らの研究では、若い時にこれらのベリー類をより多く摂取した人は、その後の人生において心臓発作のリスクの減少が見られる可能性がある、と報告しています。従って、若い時の食生活がその後の健康状態に影響する可能性があります。

この発見は、年齢、高血圧、心臓発作の家族歴、ボデイマス、運動、喫煙、カフェイン摂取、それにアルコール摂取のような、他のリスク因子の影響は受けていませんでした。この事から、野菜と果物、豆類、イモ類、全粒穀物を含む全体的にバランスのとれた食事に、ベリー類の摂取を加え、できるだけ加工度の低い、いろんな食品を摂取することは、栄養素を適正量摂取する一里塚となり、健康に寄与します。

なお、ブルーベリーは、苗木(1,000円前後)を鉢植えし、ベランダや自家菜園などで手軽に栽培でき、すぐに収穫できます。

References

Aedin Cassidy et al: High anthocyanin intake is associated with a reduced risk of myocardial infarction in young and middle-aded women. Circulation. 2013 DOI

Strawberries, blueberries may cut heart attack risk in women : ScienceSaily. January 14, 2013

 

 

 

 

 


生の果物の摂取と二型糖尿病のリスクの低下について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-06-26 15:11:37 | 健康・病気

二型糖尿病のリスクと果物の摂取の関係は、今までは、果物に糖分が含まれているため、栄養指導では、頻回の摂取を勧めておりませんでした。しかし、新しい研究では、生の果物を丸ごと摂取すると、二型糖尿病のリスクが減少する結果でした。それとは逆に、果物ジュースの摂取は、二型糖尿病のリスクを増やす結果でした。したがって、これからは果物に対する認識が変わるものと思われますが、新しい研究を基に、これらについて考えていきたい、と思います。

ハーバード大学の新しい研究では、3件の長期にわたる研究において、187,382名の被験者から、1984年から2008年にわたって集めたデータが調べられました。登録した人では、二型糖尿病、心臓血管系疾患、あるいはガンと診断された被験者は除外されました。その結果12,198名が、その研究期間中、二型糖尿病が発症しました。また、米国では、日本に比べて果物をよく摂取するという報告もあります。赤身の肉をよく摂取し、それによるいろんな疾患のリスクを生の果物の摂取によりカバーしている、という報告もあり、最近では、野菜の摂取量が日本国より多いようです。

その研究者らは、個々の生の果物(ぶどう、レーズン、桃、あんず、アプリコット、プルーン、バナナ、マスクメロン、リンゴ、梨、みかん、グレープフルーツ、イチゴ、ブルベリー)の摂取だけでなく、全フルーツの摂取状況を調査しました。また、果物のジュースの状態(リンゴ、みかん、グレープフルーツ、その他の果物)での摂取状況を調査しました。

特定の生の果物(特にブルベリー、ブドウ、それにリンゴ)を2回/週、摂取した人は、1回/月以上摂取した人に比べて、23%程二型糖尿病の発症リスクが減少していました。それとは逆に、果物ジュースを、1回/日もしくはそれ以上摂取した人は、21%程二型糖尿病の発症リスクが増大しました。また、3回/週の果物ジュースの摂取を、生の果物に変えると、二型糖尿病の発症リスクが減少したことを、その研究者らは発見しました。したがって、果物ジュースを愛飲している人は、そのリスク予防のため、明日から生の果物に変えるのが二型糖尿病予防の一環、と考えます。

果物のグリセミック指数は、二型糖尿病の発症リスクと果物の関連を調べる、重要な因子であるかは証明されていません。しかし、果物ジュースの高グリセミック指数は、食物繊維の豊富な生の果物に比べて急速に消化システムを通過するので、果物ジュースと二型糖尿病のリスクの増大の明らかな関係を説明できる可能性があります。

研究者らは、特定の個々の生の果物の利点となる作用は、ビタミン、ミネラル、食物酵素、食物繊維、アントシアニンなど抗酸化栄養素など成分の協働作用によることを、立証しています。なお、以前の研究では、心臓発作のリスクの低下は、ベリー類やブドウなどに含まれるアントシアニンの作用と関係していると、報告されています。

ハーバード大学のIsao Muraki博士らの研究によると、二型糖尿病糖尿病予防のための対策として、果物ジュースではなく、農薬などで汚染されていない生の果物を丸ごと頻回に摂取することが、勧められています。また、野菜、果物、それに豆類などに優しい土作りをして、愛情をこめてそれらを育てることが、二型糖尿病予防への一里塚になります。そして、更なる研究の積み重ねが、二型糖尿病のリスク対策の希望ある未来に繋がります。

References

British Medical Journal: August 29, 2013

Eating whole fruits linked to lower risk of Type2 diabetes: scienceDaily. Aug 29,2013

 

 

 

 

 


二型糖尿病のリスクと緑葉色野菜摂取量の関係について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-06-25 15:38:07 | 健康・病気

緑葉色野菜の摂取は、栄養調査などで、その摂取量が多い人は、糖尿病を始め生活習慣病のリスクが少ないことが、以前から報告されていますが、本格的な調査研究は、日本国では行われていませんが、外国では、近年、それが行われましたので、その事について考えていきたい、と思います。

"British Medical Journal"誌によると、レイセスタ―大学のPatric  Carter博士らの研究では、食事において緑葉色野菜を多く摂取する人は、そうでない人に比べて、二型糖尿病の発症リスクが減少している、という結果でしたが、その利点の可能性について更なる調査研究が必要と考えられます。

野菜や生の果物、それに豆類の多い食事は、ガンと心臓病の両方を減らすのに役立っていますが、しかし、野菜と生の果物の摂取と二型糖尿病の間の関係は、栄養調査以外、わかっていないのが現実です。2002年の研究では、その関係が発見されており、英国の成人の86%は、野菜と生の果物の一日あたり推奨量の5品目以下の消費量でした。また、その62%は、3品目より少ない状態でした。不十分量の野菜と不十分量の生の果物の消費は、2000年には英国の2,600,000人の死亡の原因となっている、と報告されています。

Carter博士らの研究によると、220,000人以上の被験者を含む6件の研究の再調査では、一日あたり緑葉色野菜を推奨量の1.5倍余分に摂取すると、14%だけ二型糖尿病のリスクを減らすことが、わかりました。しかし、更に多くの野菜と生の果物を併用摂取することは、このリスクに著しく影響しておりませんでした。小数のメタ分析による研究では、二型糖尿病の予防のための野菜と生の果物の併用摂取の利点が、全体的に不明確でした。ここに、食品や栄養素の効果の検定の難しさがあります。その原因として、検定方法や長期調査の必要性、それに食生活の多様性などが考えられます。、

Carter博士や多くの栄養学者らは、野菜や生の果物がいろんな抗酸化栄養素を含んでいるため、慢性疾患を防ぐ、と考えています。単離された抗酸化栄養素より、野菜や生の果物のように、いろんな抗酸化栄養素や、その他の栄養素をバランスよく含んでいるので、健康により有益、と考えているようです。また、栄養サプリメントを摂取する場合、野菜や生の果物、豆などと多めに併用摂取する事が、必須です。そのことにより、健康効果を増し、また、サプリメントの大量摂取によるリスクを減らせる、といろんな研究は示しています。更なる、調査研究により、野菜と生の果物の利点を期待しています。

References

Green leafy vegetables reduce diabetes risk, study finds: British Medical Journal. August 20,2010

ScienceDaily: Aug 20, 2010

 


二型糖尿病のリスクの減少と全粒穀物、野菜、生の果物の摂取量との関係について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2014-06-23 17:33:18 | 健康・病気

以前のこのブログでも述べたように、二型糖尿病のリスクを減らすためには、カロリーの制限だけでなく、摂取する食物の質の改善も必要です。このことが、最近、ハーバード大学の研究でも確認されました。今回は、この問題について、米国の研究を参考にしながら、考えていきたいと思います。

"the American Diabetes Associations 74th Scientific Session"によると、人の食事の全体的質の改善は、他の生活スタイルとは関係なく、二型糖尿病を防ぐのに役立つことが、わかりました。

ハーバード大学のSylvia Ley博士らの研究によると、4年より長く食事の質指標スコア―を10%だけ改善した(全粒穀物、生の果物、それに野菜をもっと多く摂取、糖分を含む飲料、食塩、飽和脂肪酸の制限)人は、そのような食事をしない人に比べて、約20%だけ二型糖尿病のリスクが減少しました。そして、食事の質は、2010年度の110ポイントある代替健康度指標を用いて、調べられました。

食事の改善は、体重の減少、あるいは運動量の増加が関係なく、二型糖尿病に対し、リスクを軽減するとしても、そのような他の生活スタイルの変化のマ―カーであるかどうか、調べました。

研究の結果、Ley博士らは、食事が、体重の減少や運動量の増加とは関係なく、二型糖尿病と関係することを、発見しました。もしも人が、その他の生活スタイル因子を改善するなら、もっと二型糖尿病のリスクを減らすと考えられますが、食事の質のみを改善することは、意義のある利点です。そのリスクを減らすため、管理栄養士の指導により、長期のカロリー制限食を摂取することは、二型糖尿病患者にとって、しばしば困難を伴います。食事の全体的質を改善できるのなら、赤身の肉、加工肉、食塩、糖を含む飲料を減らし、もっと野菜、生の果物、それに全粒穀物の摂取を増やすと、健康状態が改善され、二型糖尿病のリスクを減らせる、と博士は述べています。

日本国でも、ファーストフード摂取の増加と食生活の肉食化など、欧米の影響による食生活の変化で、二型糖尿病を始め、生活習慣病の増加が懸念されています。ここで述べた食生活の質を改善することにより、昔のスリムで、元気な日本人のようになれる、と考えています。

References

Improving diet quality reduces risk for type2 diabetes: ScienceDaily. June 14,2014

the American Diabetes Associations 74th Scientific Session.

 

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腎臓結石のリスクの軽減と野菜、果物、ナッツ、全粒穀物の頻回摂取の関係について 栄養医学ブログ 

2014-06-23 13:56:19 | 健康・病気

今までの米国での研究でも、頻回に野菜や果物、豆類を多めに摂取し、獣肉や動物性脂肪の摂取の少ない食習慣のヒトは、腎臓結石のリスクが低いと報告されています。今回は、そのことを裏付ける新しい研究が有りましたので、ポイントを紹介し、それについて考えていきたい、と思います。

"the American Society Nephrology"によると、野菜、生の果物、ナッツ、低脂肪酪農製品と全粒穀物を多く摂取し、一方、塩分、赤身の肉、加工肉、それに糖分の多い飲料の摂取を制限することは、腎臓結石を防ぐ効果的な方法です。その理由として、腎臓結石は、高血圧、糖尿病、体重の増加、そしてその他の心臓病などのリスク因子との関係の比率の高さと関連しています。そして、これらの発見は健康と深い関わりがあります。

Brigham and Women's HospitalのEric Taylor博士らは、腎結石の形成に及ぼす健康な食事習慣の影響を調べる大規模な研究を実施しました。そして、3件の臨床研究に登録された人々から食生活と健康情報を集めました。1件目は、医療従事者の食生活と健康追跡調査(45,821名の男性での18年の追跡調査)、2件目は、看護師の食生活と健康調査(94,108名の中高年女性での18年間の追跡調査)、そして3件目は、看護師での食生活と健康調査(101,837名のもっと若い女性での14年間の追跡調査)となっております。

Taylor博士らは、DASH食(高血圧の食事療法)は、野菜、果物、豆類、低脂肪酪農製品、そして全粒穀物の高摂取と塩分、糖類の多い飲料、それに赤身の肉、加工肉の低摂取を基本としたものです。DASH食の高スコアーの人々は、高Ca、高カリウム、高Mg、高シュー酸塩、
高ビタミンC、それに低ナトリウムの食事を摂取しました。

総計5,645名の腎臓結石の発症が3件の研究の参加者で見られました。3件の研究のおのおのでは、DASH食スコア―のもっとも高い参加者(被験者)は、DASH食スコア―のもっとも低い参加者に比べ、40%~45%、腎臓結石の発症が少ない結果でした。また、腎臓結石のリスクの低下は、年齢、体のサイズ、水分の摂取量、それにその他の因子とは関係がないようでした。なお、更なる追試を希望します。

博士によると、DASH食は、腎臓結石と関係した高血圧、糖尿病、それにその他の慢性疾患の発症に影響を及ぼす可能性が有ります。また、高血圧、あるいは糖尿病を患っていない被験者を研究するため、限定した分析を実施し、これらの被験者の間でさえ、DASH食では、腎臓結石のリスクが低下しました。したがって、肉食や炭水化物食に偏った食生活のヒトは、野菜、生の果物、豆類、全粒穀物などを、多めに食生活に導入することが、腎臓結石、高血圧、糖尿病のリスク低下に必要、と考えられます。また、一日一個のリンゴの摂取が腎臓結石のリスク低下と関係がある、という研究もあります。

腎臓結石の治療に用いられている医薬品の多くは、不快な副作用があるので、DASH食を食生活に取り入れることは、効果的な代替療法になり、副作用がなく、体に優しいので、一般人でも実施可能、と考えられます。

References

Eric. Taylor et al: DASH-style diet associates with reduced risk for kidney stones. Journal of American Society Nephrology, 2009;DOI

An apple a day keeps kidney stones away: more fruits and veggies, less salt prevents stones from forming. ScienceDaily. August 14,2009

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