医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

フリーラジカルの免疫系への影響に対するビタミンCの効果について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2016-12-16 12:27:36 | 健康・病気

免疫系は、絶えずフリーラジカルの攻撃を受け、その機能が十分働かなくなることがあり、自己免疫疾患やガンを始めいろんな疾患を発症します。その対策が、いろいろ考えられていますが、今回は、ビタミンCについて考えていきたい、と思います。

免疫系の機能は、ガンの予防や治療の結果に影響し、免疫系は、年齢と共に体内で発生するフリーラジカルの攻撃を受け、その機能が障害を受けます。現在、このことに関して、重要な二つの網内系器官の脾臓や肝臓などの、内因性、外因性抗原に対する食作用での酸化現象に注目が集まっています。このことに関して多くの研究がされていますが、それによると、いろんなフリーラジカル(過酸化アニオンラジカル、水酸化ラジカルなど)は酸化的殺作用に必要ですが、これらのフリーラジカルは、微生物、マクロファージに対しても細胞毒で、これらの自動酸化と機能変化をもたらす可能性が有り、結果として、免疫系に障害をもたらし、その機能を働かなくさせ、いろんな病気の発症の原因になります。また、長年のフリーラジカルの攻撃により遺伝子に傷を負い、ビタミンやポリフェノール、カロチノイドなどの抗酸化栄養素などで、日々、その傷を修復しています。

多形核白血球、単球、それにマクロファージなどの機能は、フリーラジカルにより傷つきます。シーゲル博士等の研究によると、成熟核白血球の酸化反応は重要であり、マウスの器官で還元型ビタミンCと酸化型ビタミンCよりなる総ビタミンC量に及ぼす、その酸化反応の影響を調べました。その結果、血清と胸腺総ビタミンC値は、異なった量の羊白血球で免疫法を行ったが影響を受けず、脾臓と肝臓総ビタミンC値は著しい減少を示し、投与量に依存していました。

このことから、脾臓と肝臓は、食細胞作用の観察から総ビタミンC値を減少させる可能性が有り、ビタミンCのような抗酸化栄養素によりフリーラジカルが消去されるという観察と一致します。よって、タンパク質や細菌、ウイルス、発がん性物質など外部の異物が体内に侵入し、フリーラジカルが発生し、いろんな病気を発症さす際、脾臓と肝臓の総ビタミンC量、特に還元型ビタミンC量の減少が認められるので、十分量の還元型ビタミンCの供給が必要になります。それを十分補給することにより、脾臓や肝臓の機能は回復し、免疫系が十分機能します。その際、免疫系の約70%を占める腸管免疫系を十分機能させるため、腸内環境を善玉菌優位の環境に整えることも、ビタミンCに増して重要、と考えられます。

References
J. Nコンセル編集: VitaminC, Applied Science Publisher.1982
A Hank編集: ビタミンCの免疫学、脂質代謝、およびガンへの新しい臨床上の応用。Hans Harber Publisher. 1982

 

 


ガン修復遺伝子BRCA2のDNA修復機能について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2016-12-14 14:57:43 | 健康・病気

ヒトの細胞は、活性酸素などの攻撃で、日夜、DNAが損傷を起こしていますが、幸いなことに、DNA修復遺伝子が傷ついたDNAを修復し、ヒトをガンの発症から守っています。ところが、その修復遺伝子が変異を起こすと、乳がんを初め、卵巣がん、前立腺がん、すい臓がんなどを発症する、と報告されています。

ロンドン癌研究所のShahid博士等の研究によると、精製したガン修復遺伝子BRCA2を電子顕微鏡で撮影し、BCRA2が他のタンパク質やDNAとどのように作用するか調べ、その画像からBRCA2がダメージを受けたDNAをどのようにして修復するか、明らかになりました。

バラバラになったDNAの線維の上に、短いフィラメントを形づけるのにRAD51(DNAの二重鎖切断の修復に関与するたんぱく質)が役立っており、BRCA2は、RAD51がDNAの釣り合った線維を探すのを可能にしています。ところが、以前は、BRCA2は、DNA修復に関係しているけれども、その形状と作用メカニズムは分かっていませんでした。よって、ガンの治療での標的にすることができませんでしたが、BRCA1とBRCA2は、DNAの修復に関係したタンパク質をコード化(機能するたんぱく質を塩基配列として暗号化すること)することが分かりました。

ところで、英国人の場合、約1,000人中1人がBRCA2遺伝子に変異が有りますが、日本人の場合、BRCA2に変異が認められる女性は、乳がんの発症により寿命が40~85%短くなり、一般的な遺伝子変異による寿命が約12%短くなるのと比較しても、BRCA2の変異では多いようです。なお、英国では、BRCA1とBRCA2変異の陽性の女性は、予防的に、ビタミンCの点滴やグルタチオンの点滴、あるいは、それらの栄養素を経口摂取したり、中には乳房の外科手術をする女性もいる、と報告されています。

ところで、DNAは、毒性化学物質、代謝産物、紫外線、PM2.5、それに放射線などにより、一日あたり数千回ダメージを受けますが、体の修復機構によりダメージの多くを修復し、修復できなかったDNAはガンを発症させます。米国や英国の研究によると、抗酸化栄養素などが、その修復機能を高める、と報告されていますが、抗酸化栄養素が、BRCA2の変異を修復させるかどうかは、今後の研究が待たれます。

References
First picture of BRCA2 protein show how it works to repair DNA. ScienceDaily. Oct 5,2014
Tana Shahid, et al: Structure and mechanism of action of theBRCA2 breast cancer tumor suppressor. Nature Structure &Molecular Biology. 2014;DOI: 10.1038/nsmb.2899

 

 


二型糖尿病のグリセミック指数の改善について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2016-12-13 12:34:10 | 健康・病気

二型糖尿病の管理がうまくいかない場合、合併症のリスクが高まります。the Daily Mail誌によると、二型糖尿病患者は、そうでない人に比べて、65%ほど高く心不全になる、と報告されています。さらに、二型糖尿病はそれだけで心臓病のリスク因子であり、他のリスク因子を伴った時、心臓病のリスクが更に高まり、早期に、より深刻な心臓病の問題を引き起こします。なお、十分管理されていれば、そのリスクは低くなります。

次に、二型糖尿病患者の高血糖値は、血管にダメージを与え、深刻な合併症(心臓発作、心不全、脳卒中発作、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、狭心症、足の潰瘍化による下肢部と足の切断など)をもたらします。なお、一型糖尿病患者は、糖尿病性ケトージスの危険な合併症を発症します。この合併症では、代替的エネルギー源として脂肪を分解し、治療をしないと致命的になります。さらに、The Guardian誌によると、別の英国での調査でも、上記と同じような結果でした。

また、The National Diabetes Auditのレポートは、糖尿病への取り組み方を述べております。詳細は、下記、参考文献を参照してください。なお、当方での調査でも、従来の食事療法に加え、腸内環境の改善(善玉菌を増やす)や薬膳料理(たとえば、米を炊く時、生姜やウコン、シナモン、クミン、ローズマリーを少々加えて炊くご飯など),それにビタミン・ミネラルのサプリメントの摂取などで二型糖尿病の管理に成功している人もいますが、深刻な合併症やアレルギーを持っている二型糖尿病患者は、これらに詳しい専門家に相談する必要があり、あくまでも、自分に合っているかどうか確かめる必要もあります。

References
What is Diabetic Heart Disease? NIH(USA)
Diabetes increases heart attack risk by 48%: NHS choices. Dec 10, 2012





グルタチオンなど硫黄系栄養素、セレンとがん対策 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2016-12-07 11:54:58 | 栄養医学、ニュートリシィオナル サイエン

Sircus博士によると、硫黄を含む栄養素やセレン(栄養素)は、体内でガンの防御や代謝系に関与しています。しかし、オキシラジカルは、多くの代謝に関与して健康な細胞をガン細胞に変えます。ここで、グルタチオンやグルタチオン産生酵素は、オキシラジカル誘導変異を防ぐことができるレベルで、正常細胞で抗酸化物質が存在出来るようにします。代謝での硫黄経路と硫黄の充足では、グルタチオンが関係しています。これらの事から、グルタチオンが、ガンの治療において有益で、化学療法や放射線療法の副作用の軽減に有益なことが報告されています。また、パーキンソン病にもグルタチオンが有益なようです。ところで、ある研究では、グルタチオンが肝臓がんの退縮をもたらし、生存期間が延びたという報告もあり、また、別の研究では、6名のガン患者のうち3名は、グルタチオン療法の後、がんの退縮とガンの成長の停止が確認されたと、報告されています。なお、ヨーロッパでは、多くのガンに対しグルタチオンの点滴が、標準的治療法となっています。

セレン(セレニウム)化合物は、強力な抗発がん活性を有することが欧米の研究で証明されています。セレン化合物と硫黄化合物(グルタチオンなど)の生化学的類似性を調べるため、selenocystamine、cysteamine、semethylselenocysteine、s-methylcysteine、それにselenobetaine、sulfobetaineなどが研究されています。

これら硫黄化合物やセレン化合物は、ガンの予防において活性が有り、発がん物質への暴露後のガンの発現の遅延と阻害だけでなく、正常細胞の悪性細胞への変異の予防において、マルチモデルメカニズムを有する可能性が有ります。

なお、ニンニクを始めネギ科野菜類は硫黄やセレンを含み、グルタチオン酵素にも必要で、ガン予防野菜として活用されています。また、セレンは、魚介類、全粒穀物、ビール酵母、野菜類に幅広く含まれており、ガン予防のため、これらの摂取が、管理栄養士により推奨されています。また、栄養サプリメントなどで摂取できますが、過剰摂取には注意が必要で、安全量の範囲内での摂取が必須です。さらに腎臓にトラブルを抱えている人は、サプリメントでの摂取は禁忌と考えられます。食品で摂取する分には問題がないと考えられます。また、NAC(N-アセチルシステイン)は摂取することにより、体内でグルタチオンに変換されます。更なる研究により、これらの栄養素に光が当たることが期待されます。

References
Dr Sircus: Cancer,sulfer,Garlic&Gultathione. June 25,1012
Breast Lumps and Cancer: all About Glutathione. choister@ ymail.com
You can be helpful-You still have option:SunridgeMrdical

 

 

 


ビタミンC点滴によるガンの腫瘍マーカーの改善について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦 

2016-12-04 19:15:03 | 健康・病気

世界各国では盛んにガンに対するビタミンCナトリウム点滴療法(IVC)が実施され、QOLの改善や元気になった、気分が爽快になったなど症状の改善が報告されています。また、腫瘍マーカーの改善も報告されています。

リオルダンクリニックの臨床研究の報告では、前立腺がん患者は、IVCにより炎症性腫瘍マーカーのPSA値とCRP値(c-反応性タンパク質)の低下が見られ、ガンによる炎症が低下したことを示しています。このことは、IVCによる治療期間中、炎症促進サイトカイン値が低下することを証明したことになり、ガンが寛解に向かっていることを表わしています。

炎症因子であるIL-6、TNF-α(注目されている炎症因子)、それにeotaxin値は、IVC治療を受けているガン患者では、絶えず低下していますが、6つのサイトカイン(IL-α,INF-y、IL-8、IL-2、TNF-α,eotaxin)値は、50gのビタミンCナトリウムの点滴後、実際に低下しました。IL-1の平均抑制率は、6名のガン患者では20%、eotaxinの平均抑制率は25%でした。

また、IL-1は、炎症のプロセスと転移の拡大を促進することが知られています。IL-1は腫瘍の部位で多く、その部位では、発がんのプロセス、ガンの成長と浸潤、それにガンと宿主の相互作用のパターンに影響し、uPA発現とNF-kBの活性化を誘導します。

炎症性サイトカイン(炎症性タンパク質)のTNF-αは、ガンの進行において中心的役割を担い、研究者に注目されていますが、ガンの微細環境からのTNF-αの発現は、多くの悪性腫瘍の特徴で、それが存在することは、悲惨な予後を伴います。別の研究では、ビタミンCやビタミンDにTNF-α抑制作用が有ることが報告されています。次に、eotaxin-1は、ガン細胞の成長に影響することが示される化学誘引、リンパ球活性物質です。

多くのガンでは、キモカイン受容体発現は、悲惨な予後と関係し、eotaxin-1が、ガンの脈管形成と転移を誘導するというエビデンスがあります。以上、これらの研究をまとめると、
サイトカインの検査と共にIVCを受けたガン患者からのデータ分析では、IVC(ビタミンCナトリウム点滴)がガン患者の炎症を抑制し、PSA値の低下とも関係が有ることが示唆されます。
このように、IVCが腫瘍マーカーの改善効果があり、ガン患者の補助療法になることの証でもあります。また、実際、世界中でガンの補助療法として、伝統的治療に併用して実施されています。

References
Nina Mikirova, et al: Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translational Medicine. 2012,10:189
Joyce JA, et al: Micro enviroonmental regulation of metastasis. Nat Rev Cancer. 2009,9:239-252