Schahram Akbarian博士らの研究によると、脳の皮質と脳の他の領域の機能障害は、多くの遺伝上の調整不良の発現を、しばしば伴っています。DNAとヌクレオソーム(クロマチンの基本単位)の中心のヒストンの共有結合性の修飾を含む、遺伝子発現のエジェネティクな制御因子の研究では、対応するRNA値の変化と結びついた、統合失調症被験者の死後の脳での特定遺伝子とプロモーターでの、DNAシステインメチル化とヒストンメチル化の変化を報告しています。しかし、死後サンプルであることから、疑問視され、生きた被検者での研究が求められています。
そこで、Gavin DP博士らは、統合失調症でのエピジェネティクな機構の異常を調べるため、培養した末梢血液単核細胞を用いたモデルを開発し、統合失調症被験者の末梢血液単核細胞の異常なクロマチン状態では、正常にクロマチンを解放(open)する因子に応答できない可能性があることを、発見しています。また、多くの統合失調症被験者の遺伝子は、異常なヒストン修飾と異常なDNAメチル化の結果として、特に、転写活性において変化する可能性が、報告されています。
統合失調症患者のエピジェネティクな異常の改善対策として、ビタミンCは、TET酵素の変異を修正し、TET酵素の活性を高める性質が有ることから、DNAメチル化の異常とヒストンメチル化の異常を制御し、統合失調症での異常なクロマチン状態を制御出来る可能性が考えられます。また、ビタミンB3(ナイアシンアミド)にもメチル基をキャッチする性質があることから、統合失調症患者の過剰なDNAメチル化と過剰なヒストンメチル化を制御できるのではないかと、考えられます。事実、米国やカナダでは、統合失調症患者へのビタミンB3とビタミンCの投与の有効性が、精神科医から報告されています。更なる研究が期待されます。
References
Schahram Akbarian, et al.The molecular pathology of schizophrenia. Brain Research Bulletin.30 Sept 2010
Gavin DP, et al. Histone modification, DNA methylation, and schizophrenia.Neurosci Biobehav Rev. 2010 May;34(6):882-8
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