医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

膵臓ガン細胞を殺す、フラボノイド(ポリフェノ―ルの一種)のアピゲニンについて 日本ビタミンC研究会 栄養医学ブログ 

2013-08-28 17:45:20 | 健康・病気

メラノ―マと並んで、致死率の極めて高い膵臓ガンについては、長年の飲酒、喫煙、動物性脂肪の過剰摂取と野菜、果物、豆、イモなどの摂取不足などが発症の誘因の一つと報告されています。今回は、野菜や果物、ハーブなどに含まれているフラボノイドの一種、アピゲニンの膵臓ガンに対する抗腫瘍作用が報告されていますので、それについて考えていきたいと思います。

イリノイ州にある二つの大学の研究によると、セロリー、アチコケス、それにハーブなど野菜や果物など、特に、メキシコオルガノなどは、アピゲニンとルテオニンなどフラボノイド(植物色素)を含み、それらは、重要な酵素を阻害することにより、実験室ではヒト膵臓ガン細胞を殺します。

食品化学と食物毒性学が専門のElvia de Mejia博士らの研究では、アピゲニンは、単独で、二つの攻撃的タイプの膵臓ガン細胞群の細胞死をもたらしました。アピゲニンで24時間の間、ガン細胞を前処置して、その時、36時間の間、化学療法剤gemcitabineを加えました。この実験の特徴は、前処置としてgemcitabineを加える代わりに、フラボノイドを用い、同時に化学療法剤を用いているようです、とJodee Johnson博士は述べています。このことは、フラボノイドが抗酸化物質として作用し、化学療法剤が酸化促進作用によりガン細胞を殺すので、ほぼ同時にフラボノイド(アピゲニン)と化学療法剤(抗ガン剤)を投与することは、お互いに競合する可能性がありますが、Mejia博士の研究は、ガン細胞死をもたらしています。なお、この問題は、現在、論争中です。おそらく、アピゲニンの酵素阻害作用が、前述の競合とは違う、別のメカニズムによる抗腫瘍作用である、と当方は考えています。

ところで、膵臓ガンは大変攻撃的なガンで、初期には症状が少しも有りませんが、進行すると背中の痛みなどが見られますし、広がる前には、多くは発見されません。目標は治癒ですが、患者の生命を延ばすことも重要な治療の進展です(延命効果、quality of life の改善など)。

また、生化学的メカニズムでは、グリコ―ゲン合成キナーゼー3β(GSK-3β)と呼ばれる酵素を、アピゲニンが阻害し、膵臓癌細胞の抗アポトーシス遺伝子の産生を減らすことを、研究者らは発見しました。

アポトーシスは、核のDNAがダメージを受けた時、ガン細胞が自殺することを意味しています。ガン細胞群の一つでは、細胞の受けるアポトーシスのパーセントは、アピゲニンを投与しなかった細胞では8.4%で、アピゲニンを50μモル投与した細胞では、43.8%であった。なお、このケースでは、抗ガン剤は投与されませんでした。

このように、アピゲニンでの治療は、遺伝子発現を変えました。また、炎症を促進さすサイトカインと結び付いたある種の遺伝子は、その調節が過剰でした。Johnson博士によると、アピゲニン療法は、膵臓細胞でinterleukin17sの増加をもたらします。なお、膵臓癌患者は、アピゲニンの血漿濃度が、膵臓癌に有効な濃度まで達していなかった、と考えられます。おそらく、フラボノイドを豊富に含む食物の摂取が少なかったのも一因と考えられます。生涯にわたって、有益なフラボノイドを食べ続けましょう。なお、野菜や果物は、ビタミンCだけでなく、フラボノイド、カロチノイドなど、ガン予防作用のある栄養成分を含んでいるので、よく食べることが、恐ろしいガンを寄せ付けない体にする秘訣です。また、疫学調査でも、野菜や果物をよく食べる人は、そうでない人より、がんが少ないというデータがでています。

 

References

Celery, artichokes contain flavonoids that kill human pancreatic cancer cells: ScienceDaily, Aug. 15,2013

Bitter melon juice prevents pancreatic cancer in mouse models: ScienceDaily, Mar.12,2013

 

 

 

 


乳がん対策とアピゲニン(フラボノイドの一種)の予防効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-08-26 22:41:23 | 健康・病気

ガンの予防・治療効果については、ビタミンCやビタミンDは知名ですが、数多くあるポリフェノール(栄養成分)の中で、アピゲニンやクルクミンなどが候補に挙げられ、その抗ガン活性が、主として米国で研究されています。今回は、アピゲニンの抗ガン作用について、その研究を紹介したいと、考えています。また、私見ですが、毒性もないし、副作用のないアピゲニン栄養サプリメントを、ガンのビタミンC点滴療法に併用して、経口摂取すれば寛解がもたらされるのではないかと、考えています。毒性がないので使いやすいです。もちろん、これらに加え、アピゲニンは野菜や果物に豊富に含まれているので、そちらで摂取することも、重要です。

ミズリー大学の研究によると、マウスでの研究では、乳がんは、セロリー、パセリー、その他の野菜や果物などに含まれる栄養物質で、毒性のないアピゲニンで効果的に治療が可能になるのではないか、と注目されています。研究者らは、アピゲニンが合成ホルモンのプロゲスチンにより刺激されるある種の乳がんを縮小させることを、発見しました。

べテリナリイー医科大学のZalk Endowed博士らは、ホルモン療法に用いられるある種の合成ホルモンに影響されるヒト乳がん細胞に対し、アピゲニンが有効である、と述べています。

この研究では、特別の系統を引くマウスに、BT-474として知られている、致命的に、急速に生長するヒト乳がんの細胞を移植しました。その時、マウスの幾匹かに閉経期後の婦人に一般的に投与される、あるタイプのプロゲスチンであるMedroxyprogesterone acetate(MPA)で治療しました。後ほど、MPAで治療した一つのグループは、アピゲニンを投与しました。ガン性腫瘍は、アピゲニンを摂取しなかったマウスでは急速に生長しました。アピゲニンで治療したマウスでは、乳がんの生長は、対照グループのそれに対して遅れました。そして、そのガンは小さくなりました。

Hyder博士によると、どのようにしてアピゲニンが化学的レベルでこのように作用するか、正確にはわかっていませんが、可能性として、次の三つが考えられます。すなわち、細胞死を誘導する、細胞の増殖を阻害する、ガンの生長と関係する遺伝子の発現を減少さす、などです。

ガン細胞に栄養を供給する血管は、アピゲニンを摂取しなかったマウスに比べて、アピゲニンを摂取したマウスでは、直径がもっと小さかったです。より細い血管は、ガン細胞に流れる栄養が制限されることを意味します。そして、ガンの広がる能力だけでなく、ガン細胞を餓えさすのに役だっている可能性があります。

ところで、人類は長年にわたって野菜や果物を摂取することにより、ビタミンCやビタミンA,ビタミンD、それに抗酸化栄養素を摂取し、健康を保ってきましたが、近年、日本国では、これらの摂取が減り、動物性食品(魚介類は除く)の摂取量が増え、ガンを始め生活習慣病が増えてきています。もともと、日本民族は、植物性の食物を中心に、長年、暮らしてきました。従って、体質的にそのように順化しています。それを無理やり変えると、ガンなどの恐ろしい病気に見舞われる、と考えられます。明日からでも、野菜や果物、いも、豆、海草など多めに食べましょう。

References

Breast cancer effectively treated with chemical found in Celery, Parsly, Mouse study suggests: ScienceDaily, May. 2012

Apigenin induces apoptosis and growth of Medroxyprogesterone acetate-dependent
Bt-474 Xenograft tumors: Benford Mafuvadze et al. Hormones and Cancer,2012

 


メラノ―マのリスク対策とカルシウム、ビタミンDの併用効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-08-25 14:15:32 | 健康・病気

メラノ―マのリスク対策については、いろんな方面からのアプローチが米国で行われていますが、今回は、スタンフォード大学の研究について、当方の私見をはさみ、ポイントを紹介したい、と考えます。

カルシウムとビタミンDを併用摂取することにより、幾人かの女性では、メラノ―マになる危険のリスクを減らす可能性がでてきました。カルシウムとビタミンDの併用摂取は、命を脅かす皮膚ガンの発症のリスクが高い幾人かの女性にとって、メラノ―マになる危険を半分にする可能性があります。大規模な臨床試験の既存データを用いたこの研究は、一般的に致命的でない病気の人が、更に致死的病気(メラノ―マ)になりやすい、メラノ―マでない病歴のある女性に集中しています。

Jean Tong博士によると、かってメラノ―マに罹っていない非メラノ―マ性皮膚ガンの病歴を有する、カルシウムとビタミンDを併用摂取した婦人らは、それらを摂取しなかった同じ病歴の婦人達に比べて、57%しかメラノ―マに罹っていませんでした。なお、基底細胞ガンや扁平細胞ガンは、皮膚ガンの最も一般的な形です。もしも以前に非メラノ―マ性皮膚ガンに罹っていたら、カルシウムとビタミンDの併用摂取は、致命的なメラノ―マのより高いリスクを減らせるに違いないと、博士は述べています。

また、Jean Tong博士によると、カルシウムの1,000mg/日、ビタミンDの400国際単位/日の摂取量では、全員に皮膚ガン予防効果をもたらすものでないし、また、これらの栄養サプリメントを摂取した非メラノ―マ性皮膚ガンの病歴がない婦人は、対応するプラセボグループと比較して、リスクの減少は見られませんでした。この結果から、もう少しビタミンDの摂取量を増やせば結果は違ってくると、当方は考えています。ちなみに、ガン治療にはビタミンDを5,000国際単位/日、米国では用いられているようですが、脂溶性ビタミンなので副作用に注意して摂取しなければいけません。なお、腎臓や肝臓が悪いガン患者は、量を減らす必要が有ります。これらに詳しい医師に相談下さい。

ビタミンDは、骨の発育だけでなく、非骨格細胞にもやはり影響を及ぼします。皮膚を含む体の多くの部位では、ビタミンDは、大変早く細胞が複製するのをコントロールし、ガンでの、しばしば細胞が間違って複製されるプロセスを、ビタミンDがコントロールします。いろんな国際学会での報告では、ビタミンDが結腸ガン、乳がん、前立腺ガン、その他のガンに対して、そのリスクの低さと結び付いていることが、示唆されます。更なる研究の積み重ねにより、難敵、メラノ―マ予防のための栄養医学的アプローチを期待しています。

References

Calcium plus vitaminD may reduce melanoma risks in some women, stanford study finds: EurekAlert!, 27-jun-2011

Jean Tong et al, Journal of Clinical Oncology, June27, 2011

 

 

 

 


野菜、果物のアピゲ二ンの抗腫瘍作用(p53の活性化)について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-08-24 14:30:12 | 健康・病気

最近、ビタミンCやビタミンDだけでなく、フラボノイド、ポリフェノール、カロチノイドなどの植物性栄養素のガン予防作用が解明されつつありますが、今回は、野菜(パセリー、バジル、セロリ―、ア―テイチョークなど)、果物(リンゴ、チェリー、ブドウなど)、それにナッツ類、茶などに含まれている天然の食物成分であるアピゲ二ン(apigenin)を摂取すると、ガンの化学療法に対するガン細胞の応答(反応)が改善されたと、カリフォルニア大学の新しい研究が報告されました。

Xuan Liu博士らは、アピゲ二ンがガン抑制因子p53蛋白質に集まる性質が有ることを、発見しました。ちなみに、p53蛋白質は、細胞の核の中にあり、化学療法に応答する、いくつかのガン細胞由来の細胞を殺すのに必要な蛋白質です。なお、この研究は、化学療法に対するガンの抵抗性を抑制する、新しいアプローチを提供しています。そして、天然の食物成分によって安全な化学療法を発展させるための方法を示唆するものです。

一般に、細胞はそれらの細胞質と核にあるp53値が低い値です。核のDNAがダメージを受けた時、細胞の増殖をストップさせたり、細胞死をもたらす遺伝子を、p53が活性化するべく核へ移動します。この方法で、p53は、ダメージを受けたDNAが存在する細胞が殺されることを、確かなものにします。

多くのガンでは、p53は、細胞質の壊死と呼ばれるプロセスで不活性化します。アピ二ゲンはp53を活性化することができ、p53を核の中へ運び、細胞の増殖をストップさせます。

ガン治療に於いて、患者は、自分のガン細胞を殺すことを望みます。しかし、細胞の増殖をストップさせ、細胞を殺すため、p53は作用するため、細胞の核へ移動することが必要です。アピゲニンは、この方法でp53を核に集めるのに、大変有効です。アピゲ二ンは、いくつかのガン群(乳がん、結腸がん、皮膚ガン、甲状腺がん、それに白血病など)において、増殖阻害の性質を有することが、証明されています。したがって、ガン予防のため、野菜や果物の摂取を意識的に増やすことが必要で、ビタミンCの点滴療法をしているガン患者は、さらに、塩分を控え、野菜や果物などを多く摂取することにより、ビタミンCとアピゲニン、それと他の栄養素の相乗効果により、寛解に持ち込むことが可能と、考えられます。

References

Cancer treatment: How eating fruit and vegetables can improve cancer patient's response to chemotherapy: ScienceDaily, October, 2008

Xuan Liu et al: The Proceedings of the National Academy of Sciences


メラノ―マ治療のためのターゲットPannexin(Panx1)について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-08-23 14:07:47 | 健康・病気

現在、世界の研究者は、メラノ―マと関係した蛋白質を探していますが、ウエスタン大学のSilvia Penela博士らは、悪性のメラノ―マの治療の可能性を秘めた新しいターゲット(標的)を確認したので、そのことについて、ポイントを解説します。

博士らは、健康な皮膚細胞の表面に正常な量で発現されるPannexin(Panx1)と呼ばれる、新しいチャネル形成蛋白質を発見しました。Panx1は、メラノ―マでは、病的量で過剰に産生されます。

このPanx1の過剰産生が、メラノ―マを大変攻撃的にします。メラノ―マ細胞は、これらの余分のPanx1チャネルを有し、早期癌になり、他の組織を侵襲すると、Laird博士は述べています。

メラノ―マのような病気の細胞中で強く制御される蛋白質が発見される時、疑問となる点は、その産生を減らしたり、その機能をブロックする蛋白質に対する化学物質を標的にすることが治療的価値が有るかどうか、です。

Laird博士らは、ヒトメラノ―マバンクを用いた患者のサンプルでその発見を証明しょうとしています。メラノ―マの病変部位に、この蛋白質がたくさんあるとしたら、そのことが、診断の手段になるに違いないと、博士らは考えているようです。なお、この蛋白質が皮膚にあるので、より治療に反応するに違いありません。可能性としての治療法は、メラノ―マの病変部位に用いる局所的治療の形にあるに違いないことが示唆されます。更なる研究の積み重ねを、期待しています。また、メラノ―マに対するいろんな面からのアプローチが治療に貢献すると、当方も考えています。

References

Potential new treatment target identified for melanoma skin cancer: Science Daily, August. 2012

Silvia Penuela and Dale Laird: The Journal of Biological Chemistry. August 17, 2012