医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

認知症の栄養医学的治療について 栄養医学ブログ

2012-09-30 17:05:35 | 健康・病気

日本人の65歳以上では、10人中一人がなると言われている認知症、明日は我が身かと思う人も多数いると思います。このブログでは、医師が患者に語らないと思われる、認知症に対する体に優しい栄養医学的治療法を紹介したい、と考えています。

Melvyn werbach博士によると、老人の認知症のすべての内5分の1までは、元の健康状態に回復します。認知症の原因の一つは、栄養失調、栄養素の吸収障害、もしくは、多くの栄養素量のアンバランスなどです。アルツハイマー症を示唆させる症状の人々は、有毒金属が体内で高値かどうか調べ、除去と解毒のためのプロトコールに続いて、有毒な金属をキレション療法などで除去するのが賢明です。

次に、新鮮な野菜や果物、必須脂肪酸(EPA,DHA,オメガー3不飽和脂肪酸)が豊富であり、肉などに多い飽和脂肪酸が少なくて、精製していない食品の多い食事をし、胃酸のコントロールをし、食物の吸収状態を調べることも重要です。また、ビタミンB群のナイアシンの栄養サプリメントが必要かどうか、調べて下さい。認知症はナイアシン欠乏の古典的症状です。ナイアシン欠乏による認知症は、血中ナイアシン値が正常に戻るなら、元の健康状態に回復します。葉酸欠乏もチェックして下さい。記憶力障害、見当識障害は、葉酸の血中低濃度からもたらされます。葉酸(ビタミンM)の補給により、重度の認知症の女性が軽快した症例を、この博士は紹介しています。

アルツハイマー症では、ビタミンB1(VB1)に依存する脳の酵素が、減少している可能性があります。VB1を補給することは、更なる酵素の減少を防ぐことができます。ビタミンB12(VB12)の欠乏は、錯乱、記憶力の低下、それに、その他の神経系のトラブルを長期にわたって伴います。VB12を補給することは、VB12の血中濃度が正常で、その欠乏の症状がない患者においてさえ、有効です。初期のアルツハイマー症でVB12の欠乏症状のない73歳の女性においては、VB12の筋肉注射では、3ケ月でアルツハイマー症の症状が認められなくなりました。

次に、脳の神経細胞の消失をもたらす亜鉛欠乏の可能性を調べる必要も有ります。いろんなニ重盲検テストでは、イチョウ葉は脳の血流を増やし、脳波を改善し、認知症患者の思考力を改善するのに役立ちます。また、予備的研究では、アミノ酸のトリプトファンとフォスファチルコリンのようなコリン作動性栄養素は、認知症に希望ある結果を示していますが、更なる研究が必要です。なお、トリプトファンは大量摂取の場合、副作用の発現が、米国で報告されています。

Reference

Nutritional cures for dementia: Nutritional Health Profiler, Vol 5,Issue 12

 

 

 


乳がん予防と野菜の摂取量について 栄養医学ブログ

2012-09-27 23:16:40 | 健康・病気

Boston大学の研究者らは、野菜をもっと多く摂取するアフリカ系米国人は、野菜の摂取がもっと少ないアフリカ系米国人より、エストロゲン受容体ーネガティブ乳がんの進行がより遅い、と報告しています。

研究者らは12年間、彼女らの健康に関する研究に於いて、51,928の被験者で、1268名の乳癌が進行している症例を追跡調査しました。ホルモン受容体像が得られた症例では、35%がエストロゲン受容体ーネガティブ/プロゲストロン受容体ーネガティブ(ER-/PR-)であった。ER-/PR-乳癌の発生率は、一週間あたり4種類の野菜より少ない種類の野菜を摂取した女性と比較して、少なくとも一日あたり2種類の野菜を摂取する女性では43%程低いようでした。アフリカ系米国人の女性は、エストロゲン受容体ーネガティブ癌と診断されている白人の女性より、もっと乳癌になりやすい傾向が有ります。このことは、エストロゲン受容体ーポジティブ癌より、気の毒な予後となります。

この研究者らによると、特別な野菜は、乳がんのリスクを減らすのに、もっと大きい役割を演ずる可能性があります。特に、十字花科の野菜(ブロッコリー、辛子、緑コラード、キャベツなど)を多く摂取すると、全体的に乳がんのリスクを減らす可能性があります。また、十字花科の野菜はグルコシノレイトを含みます。グルコシノレイトは、エストロゲン代謝と解毒酵素に及ぼす作用により、乳がんの進行を防ぐ役割をする可能性があります。次に、人参消費の増加が、乳がんのリスクを減らすエビデンスがあります。人参はフラボノイドの一種のカロチノイドが豊富で、その抗酸化作用により、癌のリスクを減らす可能性があります。なお、癌予防には、ビタミンCやポリフェノールなど抗酸化栄養素の豊富な野菜類、果物、豆、イモ、海草をまんべんなく摂取し、EPA、DHAの豊富な魚介類なども摂取し、肉、脂肪分、塩分、砂糖、それにアルコール飲料などを減らし、禁煙することが重要、と考えられます。

ところで、話は変わりますが、仏国のCaen大学の研究では、マウスに遺伝子組み換えトゥモロコシを与えた群には、対照に比べて、ガンの発症率が高いとの結果でした。追試が必要ですが、ショッキングな結果でした。

References

Consuming vegetables linked to decreased breast cancer risk in African-American women: Science Daily, Oct. 13, 2010

ガンを予防し、治す(寛解)ビタミンC療法:藤井毅彦、日本ビタミンC研究会、1982年

AFP:Sep 21, 2012

 


糖尿病性腎症対策と紫トゥモロコシのアントシアニンについて その二 栄養医学ブログ

2012-09-27 00:41:57 | 健康・病気

紫トゥモロコシのアントシアニン(PCA)が糖尿病性腎症の進行に影響するかどうか、どのように影響するかを調べるため、アントシアニン(ムラサキイモ、赤キャベツ、ブドウなど紫色した野菜、果物などに含まれている栄養色素)の細胞活性と分子活性が、研究者により調べられました。

腎臓の高血糖状態でのヒト内皮細胞において、内皮細胞の癒着分子の誘導は、PCAの投与での用量依存では減少し、このことは、PCAが、糸球体の細胞と細胞の癒着を阻害したことを意味しています。PCAは、腎臓内皮細胞への白血球の供給や癒着を妨げるようでした。糖尿病マウスでは、糖尿病性糸球体硬化症の原因である炎症細胞の侵潤と糸球体の癒着が始まる可能性がある、メサンギウル拡大を遅延させ、その細胞の信号経路を中断します。

PCAは、腎臓組織のマクロファージ炎症性蛋白質ー2と走化性単球蛋白質ー1値を阻害し、腎臓の炎症と強く関連したマクロファージの侵潤を阻害する可能性が有ること、を示しています。

PCAは、紫トゥモロコシの主たる生物学的機能を有する化合物である可能性があり、糖尿病性腎症の主たる原因である単核細胞のメサンギゥル活性とマクロファ―ジの侵潤を防ぐことができることが、示唆されます。

メサンギゥル活性に対するPCAの腎臓保護作用は、糖尿病性糸球体硬化症と腎臓の炎症を標的とした、効果のある治療法となる可能性が有ります。紫トゥモロコシのアントシアニンの栄養サプリメントは、二型糖尿病による腎臓血管病を予防する、重要な戦略となる可能性があり、さらなる追試が求められています。また、一般には、フラボノイド、カロチノイドなど色のある成分は、糖尿病、ガン、生活習慣病などの予防効果が期待され、米国で研究されています。なお、今後、アントシア二ンは、栄養医学研究者の研究テーマのターゲットになると考えられます。

Reference

Compound found in purple corn may aid in developing future treatments for type2 diabetes,kidney disease: Science Daily , Sep. 18, 2012

なお、nutr-blog.blogspot.comでも栄養医学ブログを発信しています。

 

 


糖尿病性腎症対策と紫トゥモロコシのアントシアニンについて その一 栄養学ブログ 

2012-09-26 20:40:53 | 健康・病気

紫トゥモロコシ(PCA)に含まれるアントシアニン(抗酸化栄養素)は、糖尿病、腎臓病に対する将来の治療の進展に寄与する可能性が出てきました。なお、他のアントシアニンも米国で研究中です。

糖尿病腎症は、糖尿病が原因の、もっとも重大な合併症の一つであり、しばしば末期腎臓病に進行します。ペルーやチリで生育しているPCAは、米国の青トウモロコシと同類です。一般にトゥモロコシは、抗酸化栄養素のアントシアニン(フラボノイドの一種)を多く含んでいます。研究によると、アントシアニンは抗糖尿病作用を有することが報告されています。

Hallym大学の研究者らは、アントシアニンが糖尿病腎症の進行に影響するかどうか、どのように影響するか調べるため、PCAのアントシアニン(いろんな種類のアントシアニンがあります)の細胞活性と分子活性を研究しました。PCAのアントシアニンは、糖尿病の進行に関係する多くの経路を阻害します。このことは、ニ型糖尿病と腎臓病に的を絞った治療法の進展に、有益な可能性があります。

研究者によると、高血糖状態の腎臓で培養したヒト内皮細胞の作用を調べるin vitroの研究、そして、糖尿病マウスの腎臓組織に及ぼす紫トゥモロコシ(PCA)のアントシアニンの作用を調べるin vivoでの研究です。in vitroでは、培養した細胞を、6時間、PCA(1~20μg/ml)に浸けました。対照細胞は浸けられていません。そして、単核内皮細胞の癒着の程度が調べられました。in vivoでは、糖尿病マウスと対照マウスに8週間にわたってPCAが投与され、腎臓組織の変化が調べられ、免疫組織学的分析が行われました。腎臓組織は、さらに炎症の化学運動性値が分析され、それは糖尿病性腎症のカギとなる因子です。なお、結果と考察は、次回のブログで紹介します。

References

Compound found in purple corn may aid in development future treatments for tupe 2 diabetes,kidney disease: Science Daily, Sep.18,2012

食品化学概論:藤野安彦、しょ華房

 


ガン対策とビタミンC,HIF-1について 栄養医学ブログ

2012-09-25 19:48:19 | 健康・病気

Otago's大学のVissers博士らによると、ビタミンCが、ガン細胞の増殖を抑制することが明らかになり、ガンの予防と治療に有益であるようです。ガンに対しビタミンCの有益な役割に関する多くの報告がされるにつれて、長年、議論の的となっています。

Vissers博士らの以前の研究は、細胞の健康を維持するのに、ビタミンCが重要であることを明らかにし、ガンなどの限定的疾患に対する、ビタミンCの可能性を暗示していますが、最近の研究は、ビタミンC値が子宮内膜ガン患者で低い事に、注目しています。

正常な健康組織と比較して、ガン細胞はビタミンCの蓄積が、もっとできなくて、このことは、ガンが生存し、増殖する能力と関連していることが、博士らの研究で判明しました。ビタミンC値が低いガンは、ストレス状態下のガンを成長さす、NIH-1と言われる蛋白質が大変多いようです。

ガンに於けるHIF-1とビタミンCの直接的関係を、博士が証明したように、この発見は重要です。もっと多くビタミンCを摂取することが、ガン患者に有益であるに違い有りません。さらに、ガンの増殖率を抑制し、化学療法に対する反応性を高め、固型ガンの形成を阻害する可能性があります。

ビタミンCの抗ガン作用のメカニズム

ビタミンCが低値であるガンは、蛋白質複製HIF-1を多く含み、HIF-1はストレス状態下のガン細胞を増殖させ、転移させます。細胞にビタミンCが多い場合、HIF-1を減少させ、ガンの進行を阻害します。また、同じ結論を、Johns Hopkins大学の研究も示しています。

References

VitaminC can curb cancer growth , say New Zealand researchers: THE HINDU, July 26, 2010

ガンを予防し、治す(寛解)ビタミンC療法:藤井毅彦、日本ビタミンC研究会、1982年

Earth Times:Mon,26 July 2010