医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

疼痛性疾患の神経障害性疼痛へのビタミンCの作用について その一 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2023-06-30 10:20:56 | 栄養医学、ニュートリシィオナル サイエン
神経が障害を受けて疼痛を生じる疾患はいろいろあります。帯状疱疹後神経痛、悪性腫瘍による疼痛、糖尿病性神経障害による疼痛、脊柱管狭窄症による疼痛、それに手術やけがによる疼痛など、いろいろあります。これらの疼痛について外国では、ビタミンCが、これらの疼痛を軽減するとの研究が報告されていますので、このことについて考えて行きたい、と思います。

Anita C. Carr博士によると、ビタミンC欠乏病である壊血病は、筋骨格の痛みを特徴としており、最近の疫学的エビデンスでは、最善に近いビタミンC状態と脊髄の痛みの間には関係があることを示しています。さらに、蓄積したエビデンスでは、ビタミンC投与は、一部の臨床症状で鎮痛効果を示しました。また、外科手術や外傷、感染症、それにガン患者のようなグループでは血中ビタミンC濃度の低下が見られます。

Tara Smith博士によると、ペジェット病(細菌やウイルスによる感染性疾患)患者16名に3g/日のビタミンCを経口で2週間、投与して、骨の痛みの軽減が見られました。また、チクングニア熱(蚊のウイルスによる感染症)とパロウイルスB19血症に伴う重い関節痛患者の2例では、伝えられるところによると、ビタミンCの10g/日の経口投与とビタミンC点滴では反応が見られ、チクングニア熱では、関節痛が40%から10%まで軽減し、パロウイルスb19血症では、40%から10%まで軽減したと、報告されています。

References
Anita C. Carr. The  role of vitaminC in the treatment of pain:new Insight. J Trasl Med. 2017;15:77
Tara Smith.Vitamins and minerals for pain management.2022.Mar15






パーキンソン病とグルタチオン(栄養素)の関係について その二 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会

2023-06-22 10:09:44 | 栄養医学、ニュートリシィオナル サイエン
Sechi Gらの研究によると、早期の治療していないパーキンソン病患者が、一ヶ月間、毎日二度、グルタチオンの点滴を受け、9名の患者で治療後著しい改善が認められ、病状が42%ほど改善しました。二ヶ月から4ヶ月続いた治療効果は、未治療の患者において、グルタチオンが症状の改善に有益と考えられ、また、別の研究では、血清グルタチオン値は、進行した症例では著しく低い値でした。なお、黒質の細胞死は、パーキンソン病の昔から知られた病理学的所見です。

脳神経の退化は、酸化ストレスとミトコンドリアのダメージから生じます。ミトコンドリアは、フリーラジカルによりもたらされた毒性による障害での重要な標的で、グルタチオンの消耗、ミトコンドリアのダメージと神経細胞死の関係は強い、と考えられます。そこで、グルタチオン点滴を補助的に加えることは、パーキンソン病の改善効果を高めると考えられます。更なる症例での効果を期待しています。

References
Sechi G, et al. Reduced intravenous glutathione in the treatment of early Parkinson'disease . Proq Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 1996 Oct;20(7):1159-70
David Permutter. Parkinson's disease and glutathione. Hoffman Center. Intelligent Medicine
Glutathione and Parkinson's disease. GlutathionePRO

パーキンソン病とグルタチオン(栄養素)との関係について その一 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 

2023-06-21 17:23:17 | 栄養医学、ニュートリシィオナル サイエン
難病のパーキンソン病の治療では、現在、薬物療法が中心ですが、グルタチオンも症状の改善に有益な補助療法になる可能性があるという研究報告があります。なお、グルタチオンは、グルタミン酸、システイン、グリシンなどアミノ酸よりなるトリペプチドで、人体を酸化(サビ)から守り、いろんな疾患の予防・治療効果があると報告されています。栄養素なので、酵母、ほうれん草、トマト、ニンジン、キャベツ、キウリ、ブロッコリ、クルミなど食品に含まれています。今回は、パーキンソン病とグルタチオンの関係について考えて行きたい、と思います。

Hoffman centerのDavid Perimutter博士らの研究によると、グルタチオンはパーキンソン病の症状の改善に有益なことが、研究により明らかになり、その補助療法としての可能性が出てきました。その研究データによると、グルタチオンを30分にわたって点滴すると、ほとんどのパーキンソン病患者の足取り、体のバランス、運動筋肉の協働性、それに気分などの改善が報告されています。また、米国や日本では、グルタチオン点滴が、臨床でいろんな疾患に補助的に用いられています。

グルタチオンは、中枢神経系に浸透する強力な抗酸化栄養素です。Perimutter博士らの研究によると、パーキンソン病患者の脳の黒質(中脳の一部を占める神経核で、大脳基底核の中心的構成要素)でのグルタチオン値の変化において、グルタチオン点滴グループと対照グループの比較検討試験では、臨床上の症状と神経病理学上の相違が認められました。この研究では、主として、黒質のグルタチオン値と酸化グルタチオン値が測定され、パーキンソン病グループではグルタチオン値は約40%ほど減少し、酸化グルタチオン値は29%ほど増加した、と報告されています。これらのことから、黒質のグルタチオン値/酸化グルタチオン値の比の変化は、酸化ストレスがパーキンソン病患者の黒質死の発症機序に関係している可能性が、データから示唆され、パーキンソン病の重症度に比例する傾向が認められた、と報告されています。更なる研究の積み重ねが待たれます。

References
David Permutter, et al. Parkinson's Disease and glutathione. Hoffman Center, Intelligent Medicine
Glutathione and Parkinson's Disease . GlutathionePRO
Sechi G,et al. Reduced intravenous glutathion in the treatment of early Parkinson' disease. Proq Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 1996 Oct ;20(7):1159-70

ガン、糖尿病、喘息、白内障、緑内障などとビタミンCとの関係について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2023-06-13 14:49:58 | 健康・病気
ビタミンCのガンに対する作用については、膨大な研究が世界で報告されています。特に、Linus Paulin博士とEwan Cameron博士との共同研究は有名ですが、博士らと前後して多くの研究者が、この課題について研究報告しています。そのポイントは、ビタミンCの抗酸化作用が細胞を保護し、DNAをダメージや遺伝子変異から守ってくれることです。また、ガンに対する第一防御線である免疫システムをサポートし、そして、体内で形成されたある種の発がん性物質を阻害します。このような理由から、ビタミンCは、ほとんどあらゆる癌腫の発がんリスクを減らします。なお、ビタミンCは、すでに発症したガンを直接攻撃しませんが、ガンに対する免疫システムの正常化に貢献し、ガンとの戦いに有益性を発揮すると考えられます。

2型糖尿病の人は、ビタミンC摂取(2g/日以内)から利点を得ます。なお、ビタミンCは、血糖値の調整(糖化ヘモグロビン値の低下)に有益です。ビタミンCが細胞内に十分存在しないとき、グルコースが細胞内に入ることができません。十分存在するときには、グルコースが細胞内に入るよう、インスリンの働きの代わりをすると考えられています。このことにより、多くの糖尿病合併症が予防できると、考えられます。野菜や生の果物(糖質の少ない果物)、それにイモ類などビタミンCを多く含む食品の頻回摂取が推奨されます。

アレルギー性気管支ゼンソク患者(好酸球性気管支ゼンソク患者)は、肺や気道におけるビタミンCの抗酸化作用により、ビタミンCをより多く必要としています。!~2g/日のビタミンCの摂取は、喘息症状を改善し、喘息の炎症の原因であるヒスタミンを減らします。また、喘息の炎症の原因であるロイコトルエンは、EPAで減らせる、と報告されています。これらの効果に関しては、長期の追跡調査が必要ですが、これらのビタミンは栄養素なので長期の摂取に耐えれる、と考えられます。

抗酸化栄養素としてのビタミンCは、白内障の予防に有益で、太陽光によるフリーラジカルの産生を減らすのに大量のビタミンCが必要です。ビタミンCは水晶体に多く含まれ、太陽光による水晶体のダメージを防いでくれます。このような理由で、ビタミンCは失明から水晶体を守ってくれます。また、ビタミンCは、その強い抗酸化作用により紫外線のダメージから視神経や網膜細胞を保護し、緑内障の予防と進行抑制作用が、報告されています。これらに関しては、更なる研究の積み重ねが待たれます。

その他に、ビタミンCは、心臓疾患、脳卒中、パーキンソン氏病、潰瘍性大腸炎(自己免疫疾患)、歯槽膿漏の予防・治療効果も、米国での研究で報告されています。更なる研究が期待されます。なお、プレバイオティクス、プロバイオティクス食品、食事療法とともにビタミンCも疾患予防のパートナーとして活用するのも一案です。


References
Linus Pauling, Ewan Cameron. Cancer and vitaminC. A Warner Communication Company. June, 1981
Erwin Stone. The healing factor, vitaminC. Grosset Runrap company. 1972
Jennifer Brett, ND. Benefits of vitaminC . HowStuffWorks

好酸球性副鼻腔炎と気管支ゼンソクなど呼吸器系アレルギー疾患と栄養の関係について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2023-06-12 15:58:08 | 健康・病気
好酸球性副鼻腔炎が合併する、気管支ゼンソクはアレルギー性疾患で、いろんなアレルゲンに感作すると全身でいろんな病気が起り、気管や肺では気管支ゼンソクが発症し、鼻では副鼻腔炎を発症します。そして、好酸球性副鼻腔炎ではステロイド剤の内服を中止すると、風邪やインフルエンザなどの呼吸器系感染症への感染を機会に、鼻茸が再度大きくなり、その患者がウイルスに感染するたびにどんどん大きくなります。なお、アレルギー性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)にアレルギー性気管支炎を伴っている場合は、IL-4、IL-13が関係し、鼻茸が再発する事があります。また、アレルギー性気管支ゼンソクの治療で吸入ステロイド剤を用いるようになって、好酸球性副鼻腔炎が増えてきたとの報告もあります。これらの疾患は、鼻、気管、肺などすべてに関係する全身性の呼吸器疾患です。これらの対策として、栄養的アプローチについて考えて行きたい、と思います。

2007年の米国での研究によると、ナッツやブドウ、リンゴ、トマトなど抗酸化栄養素を多く含む食品を摂取する児童は、アレルギー性気管支ゼンソク症状が起りにくいという報告があります。また、ビタミンCや天然由来ビタミンE、それにオメガ-3不飽和脂肪酸などの栄養素を多く含む野菜や果物、ナッツ類を十分摂取しない児童は肺の機能が十分でない、という研究もあります。さらに、乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌など善玉菌を含むプロバイオティクスと水溶性食物繊維のプレバイオティクスを多く含む食品の摂取が多い人は、アレルギー性気管支ゼンソクが少ないという、研究報告もあります。その理由として、腸内環境の改善による免疫系が正常化したと考えられます。なお、工場の多い大都市に住んでいたアレルギー性気管支ゼンソク児童が、水と空気のきれいで、病原菌の少ない山村に移住して喘息の症状が改善された、という報告もあります。

また別の研究によると、アレルギー性喘息マウスにビタミンCを130mg/kg/日、5週間摂取させ、喘息の指標である好酸球の浸潤が抑制され、免疫物質のインターフェロン、IL-5が増加したことから、ビタミンCの抗アレルギー作用と免疫力の向上が示されました。また、栄養素のタウリンにもアレルギー性気管支ゼンソクによる気道の収縮を抑制する作用があることが報告されました。さらに、藍藻類のスピルリナにはアレルギー改善作用があり、気管支ゼンソクに有効との報告もあります。さらなる研究の積み重ねが期待されます。

References
Allan K, et al. Diet and asthma. Nutrition implications from prevention to
treatment. J Am Diet Assoc. 2011;Feb11 1(2):258-68
Asthma and Diet. Asthma Health Center. WebMD