医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

トランス脂肪酸と冠状動脈性心臓病の発症について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-11-29 20:14:53 | 健康・病気

マーガリン、ファーストスプレッド、ショートニングなどを用いた、パン、菓子類、揚げものなどは、日常の食生活と切っても切れないものです。パンや菓子類を買う時、成分表示を見ますが、それらの名前はよく見かけます。欧米で問題になっているトランス脂肪酸(加工油脂に含まれる)がそれらに含まれているからです。WHOでも、トランス脂肪酸による摂取エネルギーを1%未満にするよう、勧告していますが、加工食品工業界が反対しているようです。ここでは、欧米での研究のポイントを紹介し、トランス脂肪酸について考えていきたい、と思います。

欧米人での研究によると、トランス脂肪酸の摂取の2%の増加は、約25%だけ冠状動脈性心臓病のリスクを高めます。エネルギー摂取の2%(約5g/日)にすぎない、現在の推奨量を守ることは、そのリスクを減らせる可能性が有ります。オランダのZutphen博士らの研究では、被験者は、64~84歳の677名の男性で、冠状動脈性心臓病に研究開始時、罹患していませんでした。食事の追跡調査、医学的検査、それに質問表などが1985年、1990年、それに1995年に情報を集めるために利用されました。被験者らは、研究の開始時に、総エネルギー摂取量にトランス脂肪酸の割合がどれだけかにより、3群に分けられました。冠状動脈性心臓病の発症率は、全国的な記録、病院の退院データ、それに開業医などから得られました。10年後、98名の冠状動脈性心臓病の症例が報告され、49名は致命的、49名は致命的ではありませんでした。

これらの結果を統計処理し、平均的トランス脂肪酸摂取は、1985年4.3%から1995年1.9%に減少し、トランス脂肪酸摂取(規準ラインにおいて)からの、総エネルギー摂取の約2%の違いは、冠状動脈性心臓病の28%の増加と結び付いていました。なお、この結果は、年齢、BMI、喫煙、ビタミンサプリメントの使用、エネルギー摂取、アルコール、その他の脂肪酸、食事性コレステロール、それに食物繊維などの摂取が調整されました。博士らは、これらの結果を3件のその他の追跡調査からの結果と組み合わせ、トランス脂肪酸と冠状動脈性心臓病との関連を調べました。その結果、冠状動脈性心臓病のリスクは、加工油脂などに含まれる、トランス脂肪酸摂取によるエネルギー量の2%の増加に伴っており、そのリスクは25%でした。

トランス脂肪酸のほとんどは、加工食品や揚げた食品(フライしたもの)から摂取され、それらの摂取を少なくすることが必要です。食品成分表示ラベルには、トランス脂肪酸ではなく加工油脂として載っており、水素添加食用油や一部水素添加食用油はトランス脂肪酸を含んでいるので、使用を避けるか、摂取量を減らすことが、冠状動脈性心臓病のリスクを減らせることに繋がります。なお、トランス脂肪酸と各種疾患に関しては、多くの研究が現在行われています。更なる追試を期待します。

Reference
Trans fatty acids and risk of coronary heart disease: Bandolier

 

 


寄生虫(T.gondii)と統合失調症の関係について 日本ビタミンC研究会 栄養医学ブログ

2014-11-16 12:34:50 | 健康・病気

統合失調症は、その原因がいろいろあり、遺伝や環境など多くの因子が、統合失調症の診断リスクを高めると報告され、統合失調症の家族歴などのいくらかは、土壌、加熱処理していない肉、それに猫などの大便などにより伝染した寄生虫(トキソプラズマ)の感染など、他の原因であることが報告されており、未だに懐疑的に見られております。

ペンシルバニア大学のGary Smith博士らは、トキソプラズマ・ゴンデイ(T.gondii)の感染によると考えられる可能性がある統合失調症の症例の割合を、疫学的モデルの方法を用い、研究しました。その結果、統合失調症の症例の約5分の1がT.gondiiと関係していることが示唆されました。今までは、統合失調症は、代謝異常、脳の炎症、脳のアレルギー、それに遺伝的にある種のビタミンの大量必要性などが原因と報告され、寄生虫に関しては、報告されていませんでした。

トキソプラズマの感染は普通のことで、米国では、人口の5分の1以上が、T.gondiiに感染していると言われています。その原因の一つ十分加熱していない肉の摂取も関係しています。また、日本では、生の魚貝類の摂取も関係しています。例えば、女性が妊娠中に始めて感染したなら、胎児は死亡するか、重大な発達上のトラブルに苦しみます。また、免疫システムを弱めるHiVや他の疾患患者は、トキソプラズム脳炎と呼ばれる、T.gondiiの感染による合併症をもたらす、と報告されています。

長い間、T.gondiiの感染は有害な作用をもたらさないと信じられていましたが、最近の研究によると、筋肉だけでなく、脳にもその寄生虫が見出され、統合失調症だけでなく、やっかいな影響をヒトに与えることがわかりました。また、他の研究では、いくつかの抗精神病薬がその寄生虫の繁殖をストップさせることが証明されました。さらに、マウス、ラット、それにヒトでの研究では、T.gonndiiの感染は、行動と人格の変化の引き金をなることを示しています。

この関係を研究すべく、Smith博士らは、分画、あるいはPAFが原因と考えられる人口群を算出すべく、詳しく調べました。T.gondiiの感染がないなら、PAFは人口群で統合失調症が発症しない比率となることを明らかにしています。いずれにせよ、新しい研究なので確認のため追試が必要、と考えられます。

References
Parasite-schizophrenia connection: one-fifth of schizopherenia cases may involve the parasite T.gondii: ScienceDaily.Oct 29,2014
Gary smith: Estimating the population attributable fraction for schizopherenia when Toxoplasma gondii is assumed absent in human populations. Preventive vetennary Medicine,2014

なお、当方の栄養医学ブログ記事は、ブログアドレスnutr-blog.blogspot.comとblog.goo.ne.jp/h35p39の両ブログで発信しています。

 

 


発ガンのリスクとアクリルアミドとの関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-11-12 14:13:06 | 健康・病気

私たちが口に入れる食品と発がんの関係は、世界中で数多くの研究が有ります。もちろん、遺伝や細菌・ウイルスも癌と関係がありますが、食生活と発ガンの関係が大変強いことが、研究により明らかになりつつあります。ストックホルム大学の研究によると、ジャガイモや穀類の食品を揚げたり、焼いたり、炒めたりすると、それらの食品中にアクリルアミドが増えることが、研究により明らかになりました。したがって、食品は煮たり、蒸したりして摂取することが、ガン予防に必要と考えられます。今回は、そのアクリルアミドが発ガンのリスクを有するという研究がありますので、そのポイントについて考えていきたい、と思います。

外国の研究論文によると、げっ歯類(ラット、ラビットなど)での研究では、アクリルアミドは、それらの動物でいろんなタイプのガンのリスクを高める、と発表されています。その実験は、飲料水にアクリルアミドを入れ、実験動物に投与したものでした。

一連の対照を置いたヒトでの研究では、アクリルアミドの食事性摂取と、口腔、咽頭、食道、喉頭、大腸、腎臓、乳房、それに卵巣などの器官でのガンの進行リスクの間の相関関係を研究し、アクリルアミドの摂取に伴った癌の増加は認められませんでした。しかし、アクリルアミドを含む食品すべてが、ヒトに暴露があるとは推測されません。また、別の研究では、アクリルアミドは、遺伝毒性を有する発ガン物質であることが判明しました。なお、今後、数多くの追試がなされ、アクリルアミドが、発がんの原因の被疑者か犯人かは、明らかになると考えられます。

ヒトでの対照を置いた研究は、その症例や対照被験者とのインタビュー(個人的、もしくは質問票による)によるもので、アクリルアミドへの暴露に関して、彼らの報告に正確さに於いて違いが有る可能性があります。アクリルアミドへの暴露を正確に測定することの限界を避けるため、暴露のバイオマーカーは、閉経後の女性の乳がんに続くリスクを評価するべく、デザインしたデンマークのコホ―ト研究に、最近、用いられました。血中ヘモグロビンに結び付いたアクリルアミドのより高い値の婦人では、エストロゲン受容体ー陽性の、乳がんリスクの統計的に著しい増加が認められました。この発見は、内分泌ホルモンが関係した作用が示唆されます。このことは、子宮内膜ガンや卵巣ガンで多く、アクリルアミドへの高レベルの暴露による閉経後の乳がんでは多くないようです。また、オランダでのコホ―ト研究では、食事性のアクリルアミドと腎臓細胞ガンのリスクとの間の正の相関を示唆していましたが、前立腺がんや膀胱がんでは正の相関を示していませんでした。これらの結果から、ヒトが食事でどれだけのアクリルアミドを摂取するか、定量的に把握できる方法が必要で、それができれば、臓器別にアクリルアミドへの暴露が発ガンにどれだけ関係しているか、把握できやすくなると考えられ、暴露のバイオマ―カーは、そのための一つのツールです。更なる研究を期待しています。

References
Acrylamide in food and cancer risk: National Cancer Institute. 07/29/2008
Tareke E,et al: Analysis of acrylamide, a carcinogen formed in heated foodstuffs. Journal of Agriculture and Food Chemistry 2002;50(17):4998-5006

 


2型糖尿病の分子生化学的アプローチについて 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2014-11-05 21:39:49 | 健康・病気

2型糖尿病の複雑な分子生化学的メカニズムを解明することにより、その治療法へのアプローチに近づきます。Jin博士によると、2型糖尿病や糖尿病予備軍に見られるインスリン抵抗性が発症する主たる原因は、筋肉組織だけでなく、肝臓の細胞に法外な脂肪の蓄積(脂肪肝)によります。したがって、食生活や運動により、筋肉や肝臓に蓄積した脂肪を燃やし、インスリン抵抗性が発症するのを防ぐ事が肝要です。特に、昔と違って、現在は、食品工業の発達により加工度の高い食品を摂取する機会が増えています。加工度の高い食品は、筋肉や肝臓に余分の脂肪を蓄積する負の作用があります。

筋肉や肝臓に蓄積された脂肪は、インスリンが、正常にグルコースを吸収するよう体の組織に供給されるのを阻害します。そして、それらの脂肪は、このプロセスを崩壊させ、グルコースの行き場がなくなり、法外のグルコースの多くは、血液中に留まり、最悪の糖毒性をもたらします。そして、高濃度の糖は、体の組織にダメージをもたらし、失明、腎臓障害、心臓血管系疾患、それに多くの健康上の問題をもたらします。

ミトコンドリアの脱共役として知られているプロセスを通じて肝臓の法外な脂肪を燃焼さす、食事療法や栄養素、ハーブなどが研究され論文で発表されています。以前のこのブログでもそれらについて紹介しています。また、ミトコンドリアは、それぞれの細胞に対し、微小なエネルギー発生器官で、車のエンジンにたとえられます。ミトコンドリアでは、細胞の機能を保つため適正量の脂肪と糖を含む燃料を燃やします。細胞は車にたとえられます。2型糖尿病患者の細胞内で行われていることは、車のトランスミッションを切り離すことにより、ニュートラルにするのにたとえられます。アクセルを踏み、ガソリンが入り、エンジンがフルスロットルになりますが、ニュートラルのためのため車は動きません。脂肪が邪魔になって、糖は正常に細胞に入りません。したがって、車は空転して動きません。それと同じ現象が細胞で起こっています。

肝臓や筋肉組織の、脂肪によるインスリンの働きを阻害することを免れることは、インスリンに反応する細胞の能力の回復のカギとなります。このことは、細胞に取り込まれる糖の適正量を補給し、糖尿病の回復につながります。肝臓の法外な脂肪量は、肥満だけでなく、標準体重の人々でもみられ、脂肪肝と2型糖尿病の進行に繋がります。その脂肪を燃焼さす研究は、現在、いろんな研究者が行っています。また、それに関して今までも、ずいぶん多くのページをこのブログは、2型糖尿病の寛解に関してアップしました。参考になれば幸いです。更なる研究を期待しています。

Reference
Attacking type 2 diabetes from a new direction with encouraging results: ScienceDaily. October 5,2014