医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガンのリスクとビタミンAの作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2019-06-29 11:14:33 | 健康・病気

以前からビタミンAのガンリスクへの効果は、多くの研究で報告されていますが、一方、それらに対する否定的な報告もあります。その原因として、ビタミンAは、なにぶん栄養素なので、医薬品と違い、ガンリスクへの効果の研究は、食生活を始め複雑な要因が多すぎて、医薬品の効果を調べるための二重盲検テストでは、はっきりとした結果が出にくいことが、難点と考えられます。

米国でのラットの研究によると、食事でのビタミンAの欠乏は、歯牙腫、唾液腺癌、胃粘膜の前がん状態である組織変化、および結腸癌の進行に結び付いていた。また、別の研究では、ビタミンAの欠乏は、化学物質(医薬品、食品添加物、天然の発がん物質など)とそれらの相互作用による科学的発がん現象(膀胱癌など)への生体の感受性を高めることが、わかってきました。さらに、Spoon博士らの研究によると、食事性ビタミンAの高摂取は、胃がん細胞の増殖を減少さすと、報告しています。しかし、バター、ヤツメウナギ、海苔、チーズ、それに卵黄などに含まれる天然型ビタミンAは、食品での過剰摂取は考えられませんが、過剰に摂取した場合、毒性があり、適正量摂取では、癌のリスクを防ぎ、合成ビタミンAは、動物での癌の予防に有益の可能性があり、毒性が少ないと、報告されています。また、発がん性物質アフラトキシンB1とビタミンAを種々の量投与したラットでの肝がんと結腸癌の発生率において、ビタミンA投与群では、肝臓癌、結腸癌の発症が認められず、アフラトキシンB1(かび毒)を投与してもビタミンA投与量が多い場合、肝臓癌の発症は少ししか抑えられないが、結腸癌の発症は著しく抑えられたという報告があります。

Jennifer Brett博士によると、ビタミンAは、ガン細胞のDNA産生を阻害することにより、癌と戦い、すでにできている癌細胞の成長を抑え、白血病細胞の分裂を抑制する可能性があります。NIHによると、食事調査では、ベータカロテンとビタミンAの豊富な食事と多くのタイプのガンのリスクの少なさの間の相関関係が示唆されます。そして、緑黄色野菜やベータカロテン、ビタミンAを含む食材の高摂取は、肺がんリスクを減らします。また、全植物性食品からの適正なビタミンAの摂取は、子宮頸がん、肺癌、膀胱ガンを始めホジキンリンパ腫などのガンリスクを減少させます。このことは、ビタミンAには、免疫システムを健康にする作用があることから、その作用が考えられます。また、Leah Lawrence博士によると、25件の研究からのメタ分析結果から、ビタミンAの適正量の高摂取では、膀胱ガンリスクが低下する可能性があると、報告されています。そして、Donald L. Lamm博士によると、ビタミンA(40,000IU/日)、ビタミンB6(100mg/日)、ビタミンC(2,000mg/日)、ビタミンE(400IU/日)、それに亜鉛サプリ(90mg/日)の摂取は、BCG療法と比べて、膀胱ガンの再発率を著しく減少させました。また、Dang Liang博士によると、ビタミンE(αートコフェロール)とレチノール(ビタミンA)の併用は、膀胱ガンリスクへの効果の可能性があるそうです。なお、ビタミンEは、10年以上、規則的に摂取することにより膀胱ガンリスクを減らすという報告もあります。これらの多くの研究から、ビタミンAの適正量摂取は、いろんなガンのリスクを減らす可能性がありますが、なにぶん、使い方が難しい栄養素なので、過剰摂取に注意しながら適正量を守ることが、重要と考えられます。

References

Donald L. Lamm. Megadose vitamins in bladder cancer. The journal of Urology. Vol 151. Isse 1, page21-26, January 1994

VitaminA is very far from being a cancer "promoter". Linus Pauling Institute

Jian-er Tang, et al.VitaminA and risk of bladder cancer. World J Surg Oncol. 2014; 12=130

Leah Lawrence, et al. VitaminA decreased bladder cancer risk. CancerNetwork.May 13. 2014

Helen West, et al. 6 health of VitaminA,hached by sience. healthline.Aug 23,1018

Media tells a one-sided story. Orthomolecular medicine News Service. Aug20, 2008

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ビタミンDのガン細胞エクソソーム内包発がん性マイクロRNAへの制御作用について 栄養医学ブログ

2019-06-15 09:35:23 | 健康・病気

ガン細胞内のエクソゾームは、ガン細胞から出て血中に移動し、そのエクソソームから出た発がん性マイクロRNAは標的にした正常細胞に発がん性マイクロRNAを引っ付け、正常細胞に取り付き、その細胞の遺伝子発現に異常をもたらし、その細胞をガン細胞に変えてしまう、いわゆる転移の原因と、考えられます。それに対して、ビタミンDの働きは、発がん性マイクロRNAの働きを制御することにより、正常細胞のがん化を防ぐと、考えられます。

天然型ビタミンDは、食品の成分として体内に取り込まれ、肝臓から腎臓へ運ばれ、そこで活性型ビタミンDに転換され、いろんな働きをします。Ma Y博士らの報告によると、活性型ビタミンD(1α,25-dihydroxyvitamin)は、広範囲の抗がん活性を有し、一連のガン化学療法因子やBCG療法の効果を強め、そのビタミンD応答因子(element)により、主として抗腫瘍作用を発揮します。また、最近の研究により発がんに関わっているマイクロRNAは、体内の活性型ビタミンDにより制御されることが明らかになりました。なお、マイクロRNAは、広範囲の遺伝子の発現を、ポスト転写的に制御する短鎖非コード化RNAのことです。それゆえ、マイクロRNAは、ガンを含む多くの疾患の進行や発症において重要な制御的役割を有します。

オーストラリアのニューキャスル大学のEmma L Beckett博士らの報告によると、異常なマイクロRNA像は、ガン患者の腫瘍組織と血漿や血清組織において見られ、マイクロRNA像のビタミンD依存性制御は、悪性腫瘍のリスクと進行に関係しています。なお、このことは、ガン細胞群、刺激濃度、それに治療期間などによって違っています。ビタミンDには、マイクロRNAの生合成(biogenesis)とマイクロRnAの直接的、かつ間接的な転写の誘導に関係した酵素の発現を変えることにより、マイクロRNAを制御できるというエビデンスがあります。しかしながら、マイクロRNAの制御により生じる遺伝子経路(pathway)を解明したり、マイクロRNAとビタミンDが関係したターゲットの間の複雑な相互関係を理解するため、さらなる研究が必要と、考えられます。

Referrences

Emma L, Beckett, et al. Modulation of microRNA by vitaminD in cancer studies. Hand book of Nutrition , Diet, and Epigenetics pp1-22. 15 June 2017 

May Y, et al. VitaminD and miRNA in cancer. Curr Gene Ther. 2014 ;14(4):269-75

Zeliic K, et al. New insights into vitaminD anticancer properties:focus on miRNA. Mol Genet Genomics. 2017 June;292(3):511-524

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膀胱ガンのリスクとカフェインの関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2019-06-09 10:06:34 | 健康・病気

カフェインはコーヒーやエナジードリンク、栄養ドリンクを始め、いろんな飲料に含まれ、日頃、私たちの生活と関わっています。最近、カフェインに関する研究が、カフェイン消費大国の米国で盛んに行われ、いろんな研究結果が報告されています。今回は、主にカフェインと膀胱ガンリスクの関係について考えていきたいと、思います。

2015年の"The Lancet"誌によると、カフェインは、膀胱ガンRT4細胞のアポトーシス(細胞自死)を抑制すると、報告されています。また、別の研究では、日本人男性でのコーヒーとエナジードリンクなどカフェインを含む飲料の大量、長期持続的摂取は、膀胱ガンリスクの増大を伴う可能性があると、報告されています。また、慢性膀胱炎患者では、今までのカフェイン入り飲料をカフェインが含まれない飲料に切り替えたところ、尿漏れ、頻尿など膀胱炎症状が軽快したとの報告もあります。別の研究では、カフェインの長期にわたる、大量摂取が多いグループの膀胱ガンリスクは、その摂取量がもっとも少ないグループに比べ2倍であったと、報告されています。喫煙の男性コーヒー常飲者と非喫煙のコーヒー常飲者は、膀胱ガンになりやすいようです。また、カフェインとサッカリンは膀胱上皮細胞のDNAを傷つけ、エナージードリンクでは、タウリンが、大量のカフェインや保存剤(合成化学物質)とともに含まれ、それらの相互作用により、健康に有害な作用(心血管系機能障害)をすると、報告されています。

Jon Gleason博士によると、大量のカフェインを含む飲料を長期に摂取する女性は、そうでない女性に比べて、尿失禁など膀胱のトラブルを起こす傾向があるそうです。詳しくは、カフェインを329mg/日(コーヒー約3杯/日)を摂取する女性は、そうでない女性に比べ、膀胱のトラブルが70%ほど高い可能性があります。また、別の研究では、コーヒーは膀胱ガンのリスクを33%程高め、その他の研究では、コーヒーを3杯/日、飲むのなら、9%から15%ほど膀胱ガンになるリスクが高まるとも報告されています。さらに、肉類とカフェインの長期、大量摂取は膀胱ガンになるリスクの可能性も報告されています。そして、米国での研究によると、医薬品では、糖尿病治療薬Actosの副作用として、膀胱ガンの発症、低血糖、心不全、それに骨粗鬆症などが報告されています。また、糖尿病患者も膀胱ガンのリスクがそうでない人にくらべ高いと、報告されています。なお、膀胱ガン患者は、ソーダー類やカフェイン飲料、コーヒー(acrylamide含有)などを減らし、100%野菜ジュースの常飲が勧められています。

References

J. Timson. Caffeine and Bladder cancer. The Lancet. 2015, May12

Weixiang Wu.Coffee consumption and Bladder cancer. PMC.2015, May12

Coffee, green tea, and caffeine consumption and subsequent risk of bladder cancer in relation to smoking status. Cancer Science. 15 January 2009

La Vecchiac. Nutrtion and Bladder cancer.1996;7:95-100

Edward Group. Is taurine in energy drinks dangerous? Global Healing Center

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