医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

食物繊維の大腸がん予防効果について 栄耀医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦 

2014-01-22 16:00:58 | 健康・病気

バーキット博士の研究によると、食物線維(繊維)は、大腸ガンに対し予防効果の可能性があるため、注目されています。食物線維(繊維)欠乏食は、結腸ガン(大腸ガン)、虫垂炎、憩室病、潰瘍性大腸炎、さらに腺腫性茸腫などの、ある種の大腸疾患に対し、一般的、かつ基礎的栄養因子となっていますが、食物繊維に加えて、抗酸化栄養素、善玉菌(乳酸菌、納豆菌など)の摂取も、これらの疾患の予防に必要、と考えられます。また、動物性脂肪の摂取の大小とも大腸ガンは関連していますので、食物繊維のみで、大腸ガンの予防効果が決まるわけではなく、ビタミンCやビタミンDの摂取、食事構成なども重要な因子である、といろんな研究から示唆されます。しかし、いづれにせよ、食物線維の摂取を増やすことは、健康に必須です。

 

疫学的研究の追加デ―タでは、食物線維の摂取の減少と大腸ガン(結腸ガン)の発生の間の相関関係を示しています。さらに、ラットでの研究実験では、食事性セルロースの減少に従い、
小腸の化学的発がん数は、段階的に増加することを示していますが、更なる追試が必要です。

低食物線維食は、便秘を促進させ、従って、便秘は、順次、有害細菌の繁殖、胆汁酸の細菌による化学変化により発がんの可能性へと時間を与え、発がん物質と腸管粘膜の間にもっと長い接触時間を与えています。食物線維は、腸管通過時間を短くし、発がん物質への暴露時間を減らします。食物線維と水との結合により促進される腸内環境では、その容積が増大し、
食物線維は、揮発性脂肪酸の細菌による産生から、下剤効果を強めます。

食物線維が潜在的発がん物質の形成を減少させる経路では、胆汁酸塩代謝に影響する
メカニズムが存在する、と考えられます。この事は、胆汁酸塩、コレステロール、そして、それらの変性産物、およびステロールの排泄の増大、あるいは7-脱水化のプロセスの阻害を通じて行われる可能性が有ります。食物線維が水との結合に対し、その拡張効果と拡張能力により、潜在的発がん物質を薄め、ステロール、胆汁酸、および脂肪は、溶媒様効果を強める
メカニズムが存在する、と考えられています。

ところで、食物線維は、動脈硬化、糖尿病の予防にも有益との研究があります。また、
南アフリカのバンツ族は、欧米人に比べて、心臓病、脳卒中が極めて少なく、この事は、食生活に於いて、1日あたりの食物線維の摂取量が、欧米人の4~5倍もあるからだ、と言われています。また、バンツ族の糞便排泄量は、欧米人に比べて、格段に多いと報告されています。なお、食物線維には、動脈硬化の原因の悪玉コレステロールを吸着して体外に早く排泄してしまう作用が有る、と言われています。そして、糖尿病に対する予防効果では、食物線維が糖質を吸着し、インスリンの効果を高めている、と言われています。結局、抗酸化栄養素と食物繊維を多く摂取することは、これらの疾患の予防に繋がり、どちらの栄養素を欠いても、予防には効果的でなく、さらに、これらについては、更なる研究の積み重ねが必要と考えています。

References

アルカンタラ、スペックマン:Diet, Nutrition, and Cancer,1040

藤井毅彦: ガンと栄養、日本ビタミンC研究会、1979年