重症筋無力症(自己免疫疾患の一種)では、眼瞼下垂、複視(物が二重に見える)などの症状が見られますが、原因として瞼の神経と筋肉の接合部が、自己免疫疾患による抗体に侵され、神経と筋肉の接合部のニコチン性アセチルコリン受容体が標的にされて伝達機能がうまく作動しなくなり、眼瞼の筋肉が弱まると言われています。また、患者の血清ビタミンD値が低いとの報告もあります。なお、ビタミンDは、自己免疫疾患を改善するエビデンスは多くの研究で報告されています。重症筋萎縮症でもビタミンD3を補給することにより、特に大量投与(80,000~120,oooIU/日)では完全な寛解が見られたとの報告もあります(ブラジルでの症例)。このことは、ビタミンD(ホルモン様ビタミン)には免疫システムを正常化する働きがあることによると考えられています。
外国の研究によると、ある49歳の重症筋無力症女性患者では、筋力の低下や息苦しさの症状が、ビタミンDの投与により寛解したとの報告があります。また、Jo Garrido博士によると、ビタミンDの大量投与の効果は、結局のところ、免疫反応やそのメカニズムの面で副腎皮質ホルモン療法とよく似ていると考えられ、自己免疫疾患を防ぐ防御機構の一つのT制御細胞の機能を守ると報告されています。従って、副腎皮質ホルモン療法と同様、ビタミンDの投与量やその期間は十分なモニタリングが必要と考えられます。40,000IU/日の長期摂取で過剰症になるとの報告もあり、また4,000IU/日以上の毎日の摂取はよくないとの報告もあります。食品の形での摂取が安全性は高いと考えられます。ちなみに、ビタミンDを多く含む食品は、サケ、サバ、イワシなど魚類、タラ肝油、サメ肝油、キノコ類、卵などです。
重症筋無力症患者は、喫煙習慣がある場合、筋力の低下が見られます。ビタミンB12と葉酸は、アセチルコリンの前駆物質のコリンの合成に必要です。また、ビタミンAは、ステロイドホルモンの産生や、ストレスの影響から胸腺や副腎を守ってく免疫免疫システムに必要です。さらに、ビタミンD以外にビタミンB1、B2、B6、C、E、B5(パントテン酸)、コリンなどを別々に、その患者に投与して有益であったとの報告もあります。その理由として、筋肉でのエネルギー産生にビタミンB群が必須であるからです。いろんな種類のビタミンや必須ミネラルは筋肉の活動や蛋白質の合成、神経伝達物質の合成に関係しています。高齢化や不適切な食生活による腸内細菌のアンバランスが原因の、腸の機能の低下により、ビタミンやミネラル類の吸収能が低下し、免疫バランスが崩れ、それらが相まって、アレルギーや自己免疫疾患の原因にもなると考えられます。したがって、重症筋無力症は自己免疫疾患なので、上記、ビタミン類を多く含む食品の摂取と共に、腸内環境の改善のため、プロバイオティクスを多く含む食品の摂取も、重症筋無力症の予防や治療には重要でないかと考えられます。
References
Jeff T. Bowles Blog. VitaminD3 therapy case study. June 28, 2017
DR. Jo Garrido Blog. Myasthenia gravis remission With vitaminD, May12, 2020
Remission of severe myasthenia gravis after massive-dose vitaminD treatment. Am J Case Rep. 22016;17:51-54
Myasthenia gravis nutritional factors. April 24,2020
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VitaminD supplementation for treatment of myasthenia gravis. Nature Reviews Neurology. 8,413(2012)