医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

重症筋無力症と栄養対策(ビタミンD、B群)について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2021-05-19 10:35:49 | 健康・病気

重症筋無力症(自己免疫疾患の一種)では、眼瞼下垂、複視(物が二重に見える)などの症状が見られますが、原因として瞼の神経と筋肉の接合部が、自己免疫疾患による抗体に侵され、神経と筋肉の接合部のニコチン性アセチルコリン受容体が標的にされて伝達機能がうまく作動しなくなり、眼瞼の筋肉が弱まると言われています。また、患者の血清ビタミンD値が低いとの報告もあります。なお、ビタミンDは、自己免疫疾患を改善するエビデンスは多くの研究で報告されています。重症筋萎縮症でもビタミンD3を補給することにより、特に大量投与(80,000~120,oooIU/日)では完全な寛解が見られたとの報告もあります(ブラジルでの症例)。このことは、ビタミンD(ホルモン様ビタミン)には免疫システムを正常化する働きがあることによると考えられています。

外国の研究によると、ある49歳の重症筋無力症女性患者では、筋力の低下や息苦しさの症状が、ビタミンDの投与により寛解したとの報告があります。また、Jo Garrido博士によると、ビタミンDの大量投与の効果は、結局のところ、免疫反応やそのメカニズムの面で副腎皮質ホルモン療法とよく似ていると考えられ、自己免疫疾患を防ぐ防御機構の一つのT制御細胞の機能を守ると報告されています。従って、副腎皮質ホルモン療法と同様、ビタミンDの投与量やその期間は十分なモニタリングが必要と考えられます。40,000IU/日の長期摂取で過剰症になるとの報告もあり、また4,000IU/日以上の毎日の摂取はよくないとの報告もあります。食品の形での摂取が安全性は高いと考えられます。ちなみに、ビタミンDを多く含む食品は、サケ、サバ、イワシなど魚類、タラ肝油、サメ肝油、キノコ類、卵などです。

重症筋無力症患者は、喫煙習慣がある場合、筋力の低下が見られます。ビタミンB12と葉酸は、アセチルコリンの前駆物質のコリンの合成に必要です。また、ビタミンAは、ステロイドホルモンの産生や、ストレスの影響から胸腺や副腎を守ってく免疫免疫システムに必要です。さらに、ビタミンD以外にビタミンB1、B2、B6、C、E、B5(パントテン酸)、コリンなどを別々に、その患者に投与して有益であったとの報告もあります。その理由として、筋肉でのエネルギー産生にビタミンB群が必須であるからです。いろんな種類のビタミンや必須ミネラルは筋肉の活動や蛋白質の合成、神経伝達物質の合成に関係しています。高齢化や不適切な食生活による腸内細菌のアンバランスが原因の、腸の機能の低下により、ビタミンやミネラル類の吸収能が低下し、免疫バランスが崩れ、それらが相まって、アレルギーや自己免疫疾患の原因にもなると考えられます。したがって、重症筋無力症は自己免疫疾患なので、上記、ビタミン類を多く含む食品の摂取と共に、腸内環境の改善のため、プロバイオティクスを多く含む食品の摂取も、重症筋無力症の予防や治療には重要でないかと考えられます。

References

Jeff T. Bowles Blog. VitaminD3 therapy case study. June 28, 2017

DR. Jo Garrido Blog. Myasthenia gravis remission With vitaminD, May12, 2020

Remission of severe myasthenia gravis after massive-dose vitaminD treatment. Am J Case Rep. 22016;17:51-54

Myasthenia gravis nutritional factors. April 24,2020

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VitaminD supplementation for treatment of myasthenia gravis. Nature Reviews Neurology. 8,413(2012)

 

 


ギャバと統合失調症の病態生化学的関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2021-05-05 09:40:35 | 栄養医学、ニュートリシィオナル サイエン

トマトなどに含まれる栄養成分のギャバGABA)は、統合失調症を始め睡眠障害などいろいろな病態との関係が注目されています。また、その疾患の病態生化学的機構は大変複雑で、病態生理学、病態生化学の専門家も頭を抱えていますが、いろんなアプローチで次第に解明されつつあります。なお、ギャバはトマト、バナナ、ブドウ、ケール、漬物、ヨーグルト、パプリカ、メロンなど身近な食材に含まれています。

Tiago Reis Marques博士らの研究によると、ギャバシグナル伝達の低下は精神病薬の投与を受けていない統合失調症患者では、脳の海馬領域のα5-GABAARs値がより低値であり、GABAシグナル伝達の機能低下は、その障害の病態生理の基礎となる仮説と一致しています。

上記の研究は、抗精神病薬の投与を受けていない統合失調症患者は、海馬でのギャバ受容体がより低値で、主にα-5-サブタイプであり、抗精神病薬の治療を受けた統合失調症患者では見られません。これらの発見は、ギャバのシグナル伝達の機能低下は、その障害の病態生理の基礎となる仮説と一致しており、統合失調症に対する治療標的としてのギャバ作動性調整因子の可能性に焦点が当てられています。

Anouk Marsman博士によると、ギャバとグルタミン酸塩は、7TのH-MRSを用いて、統合失調症患者と健常者において調べられました。統合失調症患者では大脳の前頭葉前野のギャバ値が著しく低く、グルタミン酸塩では変化は見られませんでした。前頭葉前野のギャバ値は統合失調症患者の全IQと負の相関が見られました。これらのことは、前頭葉前野皮質でのグルタミン酸塩値とは別に、ギャバと関係するメカニズムが存在することが示唆されます。ギャバは統合失調症患者の前頭葉前野皮質における代償性機能を有する可能性があります。

以上、これらの研究は、全研究の一部ですが、ギャバと統合失調症の関係に関する研究は、内外で活発に行われていますので、近々に解明に近づくものと思われます。なお、ギャバは、経口摂取では脳血液関門を通過できないとのことですが、ある種の乳酸菌やギャバの経口摂取により、腸にあるギャバ受容体が刺激を受けて、その刺激が脳と腸を繋ぐ中枢神経系を伝わって大脳に届き、大脳内でのギャバ産生能が高まるとの研究もありますので、ギャバの経口摂取も統合失調症患者には有益でないかと考えられます。ギャバは副作用も大変少ない栄養成分なので、試してみる価値があるのではないかと考えています。更なる研究を期待しています。

References

Alessandro Guidotti, et al. GABAergic dysfunction in schizophrenia. Psychopharmacology. 2005 Jul;180(2):191-205

Albert C Yang,et al. New targets for schizophrenia treatment beyond the dppamine hypothesis. Int J Mol Sci. 2017 Aug;18(8):1689

A Wasser,et al. GABA and Schizophrenia. Clin Psychopharmacol. 2003 Dec23(6):601-40

Tiago Reis Marques, et al. GABA-A receptor differences in Schizophrenia. Molecular Psychiatry(2020)

Anouk Marsman, et al. GABA and Glutamate in Schizophrenia. Neurolmage:Clinical. Vol6,2014. pages 398-407