医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

慢性炎症と腸内細菌・ビタミンについて 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-08-31 16:32:47 | 健康・病気

炎症は、細菌など病原菌など外部侵入者に体が攻撃されたり、体内で過剰な反応など異常性反応が起こる時、発症し、どちらも体にダメージを与えます。そして、糖尿病、心臓病、がん、それにアルツハイマー病など多くの疾患は、長期間の慢性炎症と関わっています。この解決策として、健康に良い食事をし、腸内環境を善玉菌優位の環境にすることが、免疫能を高め、炎症を減らすのに重要です。特に、善玉菌によって合成されるビタミン類は、体の炎症のコントロールに重要です。

腸内細菌(乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌、納豆菌など)は、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、パントテン酸(ビタミンB5),ビオチン(ビタミンH)、それにビタミンKなどを合成します。したがって、納豆、ヨーグルト、漬物、酒かす、甘酒など発酵食品の摂取と共に、乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌など善玉菌サプリメントの摂取も必要と、考えます。米国での研究によると、ビタミンB6を十分摂取できない場合は、心臓病のリスクが高まり、ビタミンB6の欠乏したヒトでは、心臓病の腫瘍マーカーであるCRP値(C-反応性たんぱく質)の血中高値が認められます。さらに、その高値は、リウマチ性関節炎と結びついた炎症を憎悪させ、関節にダメージをもたらします。そして、その悪性のサイクルによるリウマチ性関節炎での炎症は、体内ビタミンB6貯留を激減させます。腸内環境の改善やビタミンB6を含む食品の摂取、サプリなどによる補給が、この関節症の改善に必要と、考えられます。

米国での研究によると、十分量のビタミンC( 野菜、イモ類、果物などに多く含まれる)の摂取は、CRP値を著しく低下させ、炎症を軽減させ、上記、疾患の改善に繋がります。ビタミンD(D2 ,D3)の欠乏は、リウマチ性関節炎、ループス、炎症性腸炎、それに一型糖尿病を含む、一連の炎症性疾患の原因と関連があり、十分量のビタミンDの摂取は、これら炎症性疾患の軽減につながると、報告されています。また、別の研究によると、血中ビタミンD値がもっとも高い人々は、もっとも低い人々に比べて、結腸ガンのリスクが40%ほど低いと、報告されています。

動物での研究によると、天然型ビタミンEは、アレルギーと関係した肺の炎症を軽減しました。また、別の研究では、肝油に含まれるビタミンAは、それが欠乏すると、腸管、肺、それに皮膚の炎症のリスクが高まります。十分量の摂取は、これらの炎症による症状を軽減します。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンDなど脂溶性ビタミンは貯留率が高いので、自分に合った適正量を確認することが、副作用のリスクを避けるために重要です。更なる研究を期待しています。

References

Leigh Erin Connealy. Newport natural health|food &vitamins that reduce body inflammation.@newportnaturalhealth.com.Feb17,2012

Ishwartal Jiatal, et al. Is vitaminC an antiinflammatory agent? Am J Clin Nutr.march 2006 Vol,83

 

 

 

 

 

 

 

 

 


統合失調症と栄養・食事について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-08-29 10:11:21 | 健康・病気

統合失調症は、体質的にビタミンB3が多く必要という研究があり、ビタミンなど栄養と深い関係にあります。このような体質的な弱点をカバーするため、米国やカナダでは、統合失調症の予防のため、思春期の前にビタミンB3(ナイアシン)を中心としたビタミンB群やビタミンCの摂取と共に、これらの栄養素を多く含んだ食事が、医療関係者によって推奨されています。

ところで、心臓病と深い関係にあるホモシステイン値が、統合失調症の診断に関係あるという、外国の研究報告もあります。ホモシステイン値が高い人は、ビタミンB群の必要量が多く、腸内環境の悪化や食生活の偏りから、血中ビタミンB群濃度が低く、統合失調症の発症の確率が高い可能性が、報告されています。なお、ホモシステイン値は、市販のホームテストキッド(通販で入手可能)で調べられます。ホモシステイン値が9μmol/Lより高い場合、ビタミンB2、ビタミンB6(20mg/日)、ビタミンM(葉酸、400μg/日)、それにTMGの摂取とともに、 腸内環境を改善し、腸のビタミンB群合成能を高めるプロバイオティクス、プレバイオティクスの摂取も、ホモシステイン値改善のため必要と報告されています。さらに、ホモシステイン値が15μmol/Lより高い場合、これらのビタミン摂取量を2倍にする必要があります。統合失調症の治療のためには、ビタミンB3(1~2g/日)に加え、これらのビタミンB群やプロバイオティクス、プレバイオティクスの摂取も必要で、ストレスを減らすことも重要と、考えられます。

統合失調症の食事面でのケアは、ビタミンB群を豊富に含む、全粒穀物、豆類、ナッツ類、種子類、果物、それに野菜類、それにEPA、DHAを多く含む魚介類、プロバイオティクスを含む納豆、漬物、ヨーグルトなどの頻回の摂取とともに、バランスのよい食事が望まれます。さらに、マルチビタミンのサプリメントを補助的に摂取するのも一法です。更なる研究が期待されます。

References

Action plan for managing schizophrenia.FOOD FOR THE BRAIN

Patrick Holford. Optimum nutrition for the mind.2014

 

 

 

 

 

 

 


対内時計の破綻による双極性障害、統合失調症の発症について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-08-28 14:48:52 | 健康・病気

ヒトを始め動物は、体内時計と呼ばれるリズムで生活し、健康を保っています。毎日の覚せいー睡眠のサイクルは、体内にある24時間時計(生体時計)により制御されていますが、日々の活動は、24時間時計より、もっと短いリズムにより、影響を受けることはよくありますが、気付かないこともあります。この例として、午前中は体調がいまいちで、ぼーっとしていますが、午後には快調になることがよくあります。この現象は、ウルトラディアンリズム(ヒトの持つ数十分から数時間のリズムのこと)として知られ、4時間サイクルで起こると、言われています。

ウルトラディアンリズムは、毎日の覚せい時間に一定間隔で食事をすることから説明されます。また、幼児においては寝る前にもっともよく観察されます。なお、犬においても4時間ごとに寝ることから、説明されます。これら4時間ウルトラディアンリズムは、脳でカギとなる化学物質のドーパミンによって活性化されます。健康な状態では、ドーパミン代謝は正常にコントロールされていますが、そうでない場合は、ウルトラディアンリズムの4時間リズムは、双極性障害と統合失調症では、48時間まで延びると、考えられています。犬ではそれが見られません。なお、犬は統合失調症には罹りません。

Douglass Mental Health 大学のLan D Blum博士らの研究によると、遺伝的に修飾したマウスでの研究では、睡眠の異常(不眠症など)は,過去においてサ―カディアンリズム(睡眠が24時間の周期を持つこと)の破綻を伴っており、ドーパミンによるウルトラディアンリズムの発生のアンバランスをもたらします。このことは、ある双極性障害の症例での躁状態とうつ状態の間の2日のサイクルに対する説明となります。これは、48時間サイクルのト-パミン発生によります。なお、統合失調症の症状として睡眠障害も報告されています。

この仮説は、ドーパミンによるこのリズムの発生という新しい発見ではなく、精神病理学との関連により独創的な考えとなっています。この新しい研究デ―タでは、ウルトラディアンリズム覚せい発動因子が働くなった時、睡眠は妨げら、そして、躁状態が双極性障害患者で見られたり、統合失調症の発症を伴ったりします。なお、この発見は、ドーパミンの制御の破綻と結びついた双極性障害と統合失調症に対する治療法のヒントになると、Lan D Blum博士は考えています。さらなる研究により、この仮説が証明されることを望んでいます。

References

Lan D Blum, et al. A highly tunable dopaminergic oscilltor generates ultradian rhythims of behavioral arousal. eLIFE.2014

Deconstructing mental illness through ultradian rhythms. ScienceDaily.Feb21,2015

 

 


強迫性障害の栄養療法について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 

2018-08-24 14:16:55 | 健康・病気

うつ症状、双極性障害、統合失調症と並んで、強迫性障害はもっとも一般的な精神障害で、通常、10-24歳の間の青春期に発症し、15歳までに全症例の三分の一が発症し、喘息や糖尿病患者よりは、強迫性障害患者が多く、これだけ多いにかかわらず、治療を受けていない人が半数以上と、米国では報告されています。強迫性障害の複雑な病因は、遺伝因子、長期の持続的なストレス、劣悪な栄養状態、腸内環境の悪化によるセロトニン産生の低下、生体の炎症、それにセロトニン合成の障害などが複合的に関係して発症すると報告されています。

最近の研究では、強迫性障害では、栄養的因子の欠乏などが、セロトニン合成を低下させ、さらに長期のストレスなどがそれに追い打ちをかけ、高い再発率に繋がるのではないか、と言われています。また、多くの研究では、神経伝達に強く影響するセロトニンの欠乏が、強迫性障害の一因との研究が報告されています。そこで、セロトニン合成に重要な栄養素であるナイアシン(ビタミンB3)、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、Zn、Mg、イノシトール、5-HTP、それにタウリンなどの強迫性障害に対する効果が研究され、推奨されています。さらに、腸内を善玉菌優位の環境にし、腸内を健康にすることにより、セロトニン前駆体の産生が高まるという研究もありますので、プロバイオティクスやプレバイオティクスを十分摂取し、腸内環境を改善することも症状改善への一里塚と、考えられます。また、グルタミン酸の調整不全が強迫性障害の病因であり、N-アセチルシステインが過剰のグルタミン酸を減らし、グルタミン酸の神経毒性から脳を守るという研究も報告されています。

次に、James Greenblatt博士の報告によると、強迫性障害において、セロトニン産生による神経伝達の改善は、セロトニン値を高め、その症状に立ち向かうのに不可欠です。しかし、神経伝達物質の過剰な活性をコントロールすることは、考慮されるべきです。一連の論文では、強迫性障害、うつ症状、不安症状の治療におけるイノシトール(ビタミン様栄養素)の活用が研究され、強迫性障害に対し著しい効果が認められました。また、ある患者では、2g/日の摂取で症状が改善されました。そして、SSRI(抗精神病薬)に抵抗性を示す強迫性障害の患者では、イノシトールは特に有効であり、その投与量は18g/日でした。副作用は報告されず、症状の改善は、6週間で報告されました。また、イノシトールのみ単独摂取した時も有効で、強迫性障害に対する栄養補助療法として有望である可能性が報告されています。SSRI治療に抵抗性を示す強迫性障害患者でのイノシトールの効果は、神経伝達プロセスの機能によると考えられ、イノシトールが2次メッセンジャーとしての作用は、信号伝達を働かせるシナプス後神経に及ぼすセロトニン受容体の感度を強めることです。その受容体の結合についてセロトニンからのメッセージは、陽の気分、くつろぎ感、それに強迫観念の減少などの行動を通じて表わされる信号(シグナル)へ翻訳されます。セロトニンの信号化機能により、SSRI治療に抵抗性を示す強迫性障害患者は、セロトニン合成ではなく、むしろ受容体感受性の減少が認められると、考えられます。なお、SSRIなど薬物は強い副作用などのリスクがあり、そのため、栄養療法のみで治療する自然医が米国にはいます。なお、上記、栄養素療法は薬物療法に比べて安全なので、これら栄養素の適正量の併用摂取で、症状改善が認められる症例も報告されています。更なる研究が待たれます。

References

James Greenblatt. Integrative-therapies-for-obsessive-compulsive-disorder.Mental Health.July 10,2017

Shaheen E Lakhan, et al. Nutritional therapies for mental disorders. Nutrition Journal. 2008;7:2

Fux M. Inositol treatment of obsessive-compulsive disorder. A J Psychiatry. 1996Sep;153(9):1219-21

 

 

 

 


糖尿病性心筋症に対する天然型R-α-リポ酸と補酵素Q10の作用について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2018-08-08 09:57:15 | 健康・病気

糖尿病合併症では、心臓病を発症して、最終的に心不全状態になる人が多いと、報告されています。ある研究によると、左心室拡張期機能障害のある二型糖尿病患者74名に二重盲検試験を実施し、補酵素Q10(Q10)、200mg/日とfenofibrate(高脂血症薬)、160mg/日を単独、もしくは併用で6か月間摂取してもらったところ、左心室拡張機能に両方とも影響が認められなかったが、併用群で収縮期血圧の低下が見られ、単独摂取群では拡張期血圧の低下が認められました。

De Biasio MJ博士らの研究によると、補酵素Q10(ビタミン様栄養素)による酸化ストレスへの治療では、低下したPI3Kシグナルを有する糖尿病モデルマウスでは、重度の糖尿病性心筋症を改善したことから、補完的にQ10を摂取させると、糖尿病性心不全への補助的治療法になる可能性があると、報告されています。また、Paras K. Mishra博士らの研究によると、Q10は、マウスでの実験で拡張期機能不全、心筋細胞肥大、それに心筋線維症を減らすと、報告されています。

さらに、Li CJ博士らの研究によると、実験的糖尿病性心筋症において、心筋の線維症と心筋の機能不全は、天然型α-リポ酸(ビタミン様栄養素)の摂取により改善しました。これらの結果は、ヒトでの天然型α-リポ酸の摂取が、安全で、かつ耐えうるものであることと結びついています。そして、天然型α-リポ酸は、ミトコンドリア酸化ストレス、細胞外マトリックスのリモデリングとJunN-terminal kinase、p38マークの活性化などを低下さすことにより、糖尿病性心筋症への治療の可能性を示すことが、証明されました。

Anna Gvozdja Kova 博士らの研究によると、糖尿病性心筋症患者に、Q10、R-α-リポ酸(天然型)、それにα-トコフェノール(ビタミンE)併用摂取してもらい、副作用なしに、HbA1Cの改善、心エコーでの心筋機能の改善が認められたと、報告されています。なお、S-型のα-リポ酸(人工型)の過剰摂取に遺伝的に弱い体質の人は、糖尿病性ケトアシドーシスを少数の人において発症したという報告もありますので、天然型のR-型のαリポ酸に変更する必要があります。さらに、糖尿病薬や心臓病薬を医師により投与を受けている糖尿病患者は、それらとα-リポ酸とコエンザイムQ10の併用摂取は、禁忌です。また、α-リポ酸は、天然型のR-αリポ酸が安全なので、天然型に変更した方が賢明です。更なる研究を期待しています。

References

Sahar K.Hegazy, et al. Alpha-lipoic acid improves subclinical left ventricular dysfunction in asymptomatic patients with type 1 diabetes. Rev Diabet Stud.2013 Spring;10(1):59-67

De Biasio MJ. Therapeutic targeting of oxidative stress with coenzymeQ10 counteracts exaggerated diabetic cardiomyopathy in a mouse model of diabetes with diminished PI3K signaling. Free Radic Biol Med.2015 Oct;87:137-47

Paras K. Mishra, et al. Diabetic cardiomyopathy. Front.Endocrinol. 07 April:2017

 

Li cJ, et al. Cardiac fibrosis and dysfunction in experimental diabetic cardiomyopathy are ameliorated by α-lipoic acid. Cardiovasc Diabetol.2012 Jun 19;11: