医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

B-細胞リンパ腫のビタミンC点滴療法の臨床症例について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-11-30 22:37:12 | 健康・病気

米国では、ガンに対するビタミンC点滴療法が盛んに実施され、その症例も飛躍的に増加しています。ここでは、Padayatty博士らの臨床研究による、それらの代表的症例のポイントを紹介したいと、考えています。

B-細胞リンパ腫の症例
66歳の女性で、腸腰筋の左側脊髄内の大きい塊(L4-5レベル)の浸潤が認められ、後側脊髄と骨へ浸潤して、頭蓋尾の中に横切った3.5~7cmの塊と11cmの塊が映し出されました。しかし、胸部放射線撮影の結果は正常で、生検によると、散在性の大きいB-細胞リンパ腫でした。

1コース5週の局部放射線照射療法とビタミンC点滴療法が実施され、2ケ月間、週2度、15g/回のビタミンCの点滴を受け、続いて7ケ月間、週1~2回、15g/回のビタミンCの点滴を受け、続いて、約1年間、2~3ケ月ごとに一度、15g/回のビタミンCの点滴を受けました。もちろん、併用して抗酸化栄養素などを摂取しました。このビタミンC点滴のスタートは、放射線療法と共に実施し、1995年1月中旬でした。この時、左腋下のリンパ節の腫れは直径1cm、右腋下リンパ節の腫れは触診でき、1995年2月初旬、左右腋下のリンパ節は触診できるままでした。直径1cmの新しく発見された左頸部リンパ節の腫れと1cmより大きい左鎖骨のリンパ節の腫れは、検査でも明らかで、ビタミンCの点滴は継続されました。3週間後、鎖骨と頸部のリンパ節の腫れは、もはや触診できず、左腋下リンパ節の腫れはすでに消え、右腋下リンパ節の腫れは、大きさが1cm以下に縮小していました。1995年3月中旬には、頸部リンパ腺腫と触診できる腋下リンパ腺腫は認められませんでした。1995年4月下旬、左腋下のリンパ節の腫れが認められ、組織病理検査では、原発性ガンと同じでした。その後、リンパ腫は腫れが減り、触診できなくなっていました。

ビタミンCの点滴は、1996年12月後半まで継続し、健康状態は良くなり、リンパ腫の症状も認められなくなりました。そして、大きい広汎性B-細胞リンパ腫の診断後10年間、健康状態は良好で、化学療法は本人の意思で受けていませんでした。ビタミンCの点滴以外に抗酸化栄養サプリメントとして、βーカロテン、バイオフラボノイド、コンドロイチン硫酸、Q10、デハイドロエビアンドロステロン、マルチビタミン、N-アセチルシステイン、植物性サプリメント、ビスマス錠を併用摂取しました。この寛解例は参考になり、患者に希望を与えるものです。

Reference

Sebastian J. Padayatty, et al: intravenously administered vitaminC as cancerf therapy , three cases. CMAJ 2006; 174(7):937-42

 


テロメアの長さとマルチビタミンの効果の可能性について 栄養医学ブログ  日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-11-29 23:38:09 | 健康・病気

一般的には、人はテラメアが短くなるに従って、寿命が短くなると、報告されています。しかし、新しい米国の研究により、マルチビタミンや抗酸化栄養素にテロメアを長くする作用があることが、報告されています。更なる研究の積み重ねが必要ですが、この仮説が真実であれば、人類にとって福音になると考えられます。

テラメアの長さは、生物学的老化のマーカーである可能性があります。マルチビタミンは、酸化ストレスと慢性炎症を調整することにより、テロメアの長さに影響する可能性があります。

Qun Xu博士とChristine G Parks博士らは、修道女(年齢35~74歳)の参加者586名からのデータの断面調査による分析を行いました。マルチビタミンと栄養素の摂取は、146項目の食品頻度質問票から評価されました。そして、白血球DNAの相対的なテロメアの長さは、ポリメラ―ゼ鎖反応の定量により測定されました。

年齢とその他の潜在的confounderが調整された後、マルチビタミンのサプリメントの摂取は、より長いテロメアと結び付いていました。マルチビタミンのサプリメントを使用しない人と比較すると、白血球DNAのテロメアの長さは、毎日、マルチビタミンを摂取する人では、平均して5.1%長いようでした(p for trend=0.002)。微量栄養素の分析において、食品からのビタミンCとビタミンEのより多い摂取は、マルチビタミンの摂取を調整した後でさえ、より長いテロメアと結び付いていました。更に、食品からのビタミンCとビタミンEの摂取は、マルチビタミンを摂取しない女性では、テロメアの長さと結び付いていました。これらの研究から、マルチビタミンの摂取は、女性では、より長いテロメアと結び付いているという、疫学的証拠を提供するものです。

Reference

 

Qun Xu, Christine G Parks et al: Multivitamin use and telomere length in women. The American Jornal of Clinical Nutrition. Jun, 2009

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心臓疾患、ガンとビタミンCの効果の検討 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-11-28 23:21:31 | 健康・病気

ブログ人ビタミンCの不足は、壊血病だけでなく、ガンや心臓病を始めいろんな疾患の素地を作ります。当方の小数調査でも、10年以上、ビタミンCを1g/日程度摂取している人は、ガンや心臓病に罹りにくく、糖尿病の悪化も予防できているようです。もちろん、他の抗酸化栄養素や野菜やマメ、果物、それに、精製度の低い穀物を摂取していることも関係していると考えられますが、
ビタミンCも中心的役割を担っていると、考えています。ここでは、新しい研究を基に、それらに対するビタミンCの効果について考えていきたいと、思います。

カリフォルニア大学の研究によると、ビタミンCの栄養サプリメント500mg/日、摂取した参加者は、2ケ月後、血漿のC-反応性蛋白質(CRP)値の24%の低下が認められました。同大学のGladys Block博士によると、CRP値は、コレステロール値より、もっと心臓病の予知ができる
可能性があり、慢性の炎症は、心臓病、糖尿病、それにアルツハイマー病などでさえ、それらの
リスクの増大と結び付いているという証拠が増えています。

同大学のJames Enstrom博士の研究によると、11,000名より多くの人が10年間、食事による
ビタミンC摂取以外に、栄養サプリメントとしてビタミンCを300mg/日、摂取し、男性で50%、女性で40%ほど心臓病のリスクが減少しました。また、G.C.Wills博士の研究によると、ビタミンCを12ケ月間、1,500mg/日、摂取している人は、血管のプラ―クが好転しましたが、そうでない人はプラ―クが悪化しました。これらのことから、ビタミンCが血管の健康に必要なことは明らかと、考えられます。もちろん、抗酸化栄養素などもビタミンCの働きをサポートしています。

"Journal of the American Heart Association"誌によると、血中ビタミンC値が低いことは、
末梢動脈疾患の、より重度の悪化と結び付いており、しばしば、足の血管が詰まることによる
疼痛を引き起こします。

体の外部に現れた症状などのトラブルがない時でさえ、ヒトはビタミンCの欠乏状態である
可能性があります。検眼士のSydney Bush医師によると、網膜動脈の観察では、ビタミンCの
サプリメントを摂取すると、アテローム性動脈硬化症によるプラ―クの好転が認められました。2002年に撮影された網脈写真では、網脈動脈が狭くなり、いくつかの網脈動脈は消退していました。ビタミンCを毎日摂取後の網脈写真では、pericomeal動脈が拡がり、いくつかの網脈動脈は再び認められるようになりました。pericomeal動脈と毛細血管の状態を観察すると、ビタミンCがどのくらいの量、体に存在するか正確に予想して、10段階の壊血病に区別できます。

壊血病と呼ばれるビタミンC欠乏病では、体の構成成分が本当に弱化してしまいます。コラーゲンは壊れてしまい、元に戻りません。結合部分は弱化し、細小動脈は裂け、変質します。皮膚は傷つきやすくなり、体中の細小動脈破壊による出血を示します。そして、歯は緩み、抜ける
可能性があります。

20世紀最大の科学者であるLinus Pauling博士によると、心臓病は慢性壊血病の一つの現れであり、アテローム性動脈硬化症によるプラ―クは、慢性ビタミンC欠乏症によるダメージを受けた動脈と血管を修復するためにつくられます。また、心臓病、糖尿病、それに心臓発作は、主としてMg欠乏と結び付いています。なお、これらの研究から、ビタミンCやMgはこれらの疾患の予防に深く関係しています。Mgは必須ミネラルですが、金属イオンなので摂取量の上限を守り、摂りすぎに注意してください。なお、腎臓病の人は摂取に関して、腎臓内科医に相談下さい。

 

References

Using vitaminC for heart disease, cancer and cell protection: Doctor Sircus' blog.December 18,2012

James Enstrom,et al: Journal of the American Heart Association.

Atherosclerosis is a vitaminC deficiency disease: heart Disease &VitaminC

 

 

 

 

 


慢性腎臓病・心不全の幹細胞療法について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2013-11-27 23:14:55 | 健康・病気

慢性腎臓病も末期腎不全になると、透析・腎臓移植などが必要になり、深刻な事態に陥ります。更に、腎臓病と心臓病は関連があり、腎臓病が原因の心不全をもたらします。ここでは、慢性腎臓病と心不全を治療する新しい方法として、幹細胞療法を紹介したいと、考えています。大変新しい治療法なので、更なる研究が必要ですが、喫緊の問題なのでとりあえず紹介します。

St. Michael's病院の研究者らは、ラットにおいて慢性腎臓病と心不全の治療のための新しい
方法の研究のため、成熟幹細胞を用いています。2010年、Darren Yuen博士らは、強化された幹細胞が腎臓病ラットと心不全ラットにおいて、腎臓機能と心臓機能を改善することを、始めて示しました。

しかし、ガンの発症のように、体に幹細胞を戻すことによる副作用を疑ってみました。
"Stem Cell"誌によると、Yuen博士とGilbert博士は、その後、強化された骨髄幹細胞がラットに注射されると、ぺトリ皿の中でホルモンを分泌し、幹細胞と同じように、明らかな効果を与えることを、発見しました。

博士らは、慢性腎臓病と心不全の動物の治療において、幹細胞の有効性を再現するためには、ぺトリ皿に集められたこれらのホルモンを用いることができることを、明らかにしました。このことは、幹細胞療法の著しい進歩であり、幹細胞を注射しなければいけないという結論に至ります。幹細胞がどのようなホルモンを分泌するか今のところ分かっていません。このホルモンを同定することは喫緊の課題です。それにより、対応がいろいろ立てやすくなります。そして、腎臓病の患者や心不全患者の福音に繋がる可能性が出てきます。

慢性腎臓病と末期腎不全患者の人数は、年齢と共に、かつ、ニ型糖尿病を発症している人々では、更に上昇すると考えられます。腎臓病の人々は、しばしば心臓病を発症し、彼らの多くが腎不全よりは、むしろ心不全で死亡しています。対策が急がれます。

References

Drs. Yuen and Gilbert: Stem Cells. Oct .16, 2013

New way to treat chronic kidney disease and heart failure: ScienceDaily. Oct. 16, 2013

 

 

 

 


糖尿病腎症とGLP-1消化ホルモンの作用について 栄養医学ブログ 藤井毅彦

2013-11-25 15:24:01 | 健康・病気

腎臓合併症は糖尿病腎症として知られており、末期腎臓病(ESRD)をたびたび引き起こす、もっとも生命を脅かす糖尿病合併症の一つです。そして、やがて透析か腎臓移植を必要とするようになります。

グルカゴン様ぺプタイドー1(GLP-1)消化ホルモンは、食べた食物に応じて腸管内で産生されるインクレチンホルモンで、膵臓からのインスリンの分泌を高め、腸管からのグルコースの吸収を緩やかにし、グルカゴンの吸収を減少させます。そして、血中グルコース値を低下させます。また、GLP-1は食欲を弱めます。exendin-4はGLP-1の作用と良く似ており、ニ型糖尿病の血中グルコース値を下げるのに用いられています。

最近の研究では、GLP-1が腎臓の内皮細胞の機能を改善し、糖尿病ラットの腎臓の病変化を予防します。GLP-1レセプター(GLP-1R)は腸管に多く見られ、内皮と腎臓にも見られます。
Joslin研究所は、血糖値が高い時、過度に産生される酵素PKCβ(protein kinaseC-beta)の過剰発現を伴った糖尿病マウスと糖尿病でないマウスでのGLP-1の作用を研究し、過剰のPKCβは、腎臓病を含む糖尿病合併症をもたらし、アンジオテンシンⅡの作用を強めることが分かりました。なお、アンジオテンシンⅡは、腎臓のろ過と血流に影響し、血圧をコントロールする
ぺプタイドホルモンで、炎症を増大させ、腎臓のダメージの進行を促進させます。

Joslin糖尿病センターの研究では、GLP-1が、アンジオテンシンⅡの信号経路と炎症反応の促進を阻害することにより、糸球体内皮細胞に及ぼす保護作用を誘導することができることを確認しました。高血糖症はニ重の信号メカニズムにより、かつPKCβの活性化により糸球体内皮細胞のGLP-1受容体の発現を減少させ、アンジオテンシンⅡの作用を高めることができ、GLP-1の保護作用を阻害できることを、証明しました。糖尿病の人々は、アンジオテンシンⅡにもっと大きい感受性があります。従って、GLP-1の作用を強めることが、糖尿病腎症の寛解に繋がると、考えられます。どの栄養素がそれに結び付くかどうか、いろんな栄養素が協働的にGLP-1の産生を高めるかどうか、今後の研究が待たれます。

References

New understanding of diabetes and kidney disease: Findings may lead to effective new treatments: scienceDaily. July 23,2012

George L. King. Akira Mima et al: Protective effect of GLP-1 on Glomerular Endothelium and its inhibition by PKCβ activation in Diabetes. Diabetes, July 23,2012

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