医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病合併症対策と天然タウリンの効果の可能性について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2022-03-27 10:19:17 | 健康・病気

糖尿病合併症でのソルビトール値の上昇は、細胞内浸透圧の上昇をもたらし、細胞内情報伝達に必要なミオイノシトール(ビタミンB様物質で、一般的にはイノシトールと呼ばれている栄養素)、天然タウリン(魚介類に含まれている栄養成分)などの取り込みを阻害します。さらに、二型糖尿病では、体の細胞のタウリン濃度が、二型糖尿病でないヒトに比べて低く、細胞内浸透圧調整作用が低下し、その病態を悪化させます。これらの理由から末梢血管を傷つけ、二型糖尿病に特有な合併症である細小血管障害の網膜症、腎症、それに神経障害による足の病変など深刻な病態をもたらします。

ワルシャワ大学、アズハラ大学、カトリック大学などの研究報告によると、天然タウリンは、インスリン抵抗性のラットにおいて、カリクレイン活性およびグルコース代謝を調整することにより、ポリオール代謝およびインスリン抵抗性を改善し、二型糖尿病における腎症、網膜症、心筋症、細小血管障害などを改善し、二型糖尿病での死亡率の減少に有益である、と報告されています。

アンナマライ大学の研究報告によると、天然タウリンは、グルコース利用を刺激し、体に悪い、蛋白質の糖化とAGEsの産生を阻害します。また、南アラバマ大学のStephan W. Schaffer博士らの研究報告によると、天然タウリンは、抗酸化作用、イオン移動の調整、浸透圧調整、神経伝達物質の調整、それに胆汁酸抱合など生理学的恒常性に必要な作用を含む、いろんな生物学的作用に関わっています。さらに、最近のいろんな研究によると、糖尿病性心筋症、アテローム性動脈硬化症への天然タウリンの効果も報告されています。ここで、合成タウリンにもこのような二型糖尿病合併症への効果があるかどうか、更なる研究が必要で、合成タウリンの安全性、長期摂取による副作用などの研究も必要です。なお、天然タウリンの摂取は、魚介類の摂取でまかなわれ、安全です。

References

Yan-Jun Xu, et al. The potenntial health benefits of taurine in cardiovascular disease. Exp Clin Cardiol. 2008 Summer,13(2):57-65

Stephen W. Schaffer, et al. The potential usefullness of taurine on diabetes mellitus and its complications. Amino Acids. 2012 May;42(5):1529-1539


ガン対策としてのビタミンCの研究について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2022-03-26 10:49:16 | 健康・病気

ガンとビタミンCの関係については、数多くの研究が報告されています。米国国立がん研究所の研究によると、ビタミンCは、エールリッヒ腹水ガン細胞に対し毒性を示し、そのガン細胞の構造に変化を与えました。このときの動物実験では、体重1kgあたり5gの、大量のビタミンCが投与されました。また、ゴス博士とリットマン博士の研究によると、ガンが多発する臓器は、ビタミンC濃度が異常に低く、45ppmでした。

マッコミック博士によると、発生発生の前提条件として、低ビタミンC血症からくる、その部位の退行性変化が見られます。ビタミンCが不足すると、コラーゲン生成が不完全になり、結合組織に弱点ができ、その結果による結合組織の退行性変化がガン細胞の発生、ないしは増殖を許します。また、キャメロン博士によると、ガン組織は、酵素ヒアルロ二ダーゼを盛んに遊離し、これによって、ガン組織の境界面を破壊して病巣を拡げます。この現象は、ヒアルロ二ダーゼ抑制因子の弱体化によります。なお、ビタミンCは、このヒアルロ二ダーゼ抑制因子の生合成において補酵素として働きます。よって、体の細胞や組織にビタミンCが十分あれば、ガン細胞の増殖が抑制されます。

Jungehalt博士によると、ビタミンCがヒト血中濃度で一定の値に達すると、灰白髄炎ウイルスを不活化します。Irwin stone博士によると、ウイルス性疾患に対し、ヒトと動物は、ビタミンC摂取により、ある程度は防御されます。なお、ウイルスが原因の発がんもあります。Anderson博士、Read博士、Beaton博士によると、ビタミンCには、抗ウイルス作用、抗細菌作用、抗ストレス作用などが認められ、ストック、カーン、メインスコ、ベルケ、ブレスコ、チョープ、ヒギンソン博士らは、ビタミンCのガン予防作用を報告しています。

Deucher博士によると、ガンの放射線療法を行ったガン患者に、短期間、4g/日のビタミンCを投与し、臨床上の改善がある程度見られました。また、Huber、Schneider、Kahr博士らの研究によると、ビタミンCを0.5g/日から2g/日、他のビタミン類と共に、末期ガン患者に毎日投与し、ガン増殖の停止が認められ、Meyer博士によると、多くの末期ガン患者の補助・補完療法において、非経口的(点滴、静注)にビタミンCナトリウムを用い、著明な改善が、ほとんどの患者で認められ、注目すべき投与方法と考えられます。シュレーゲル博士によると、膀胱ガンはビタミンCで予防でき、再発防止のためには、1.5g/日のビタミンCの摂取が必要で、その作用は、膀胱内の発がん物質をビタミンCが解毒する、と考えられます。Chan博士によると、ハムやソーセージなどの亜硝酸塩(発色剤)とアミノピリンとの相互作用によるラット肝がんの発生を、ビタミンCが抑制した、と報告しています。食品添加物と医薬品との相互作用による発がんは、今後の研究課題です。

米国健康協会によると、米国のがん発生率は、この70年で大幅に減少したが、その一因は、冷凍施設、輸送手段の発達によって新鮮な野菜、果物が食べられるようになったからだと指摘され、それらの新鮮な食品には天然のビタミンCや抗酸化栄養成分が豊富に含まれ、体内の多くの発がん物質の活動を抑制する効果があるためだと言われています。また、それらの新鮮な野菜や果物に含まれている食物繊維も、発がん物質が腸内から早く排泄されるために有益で、フィンランド人の大腸ガン発生率が低いのは、彼らが食物繊維の豊富なライ麦パンを常食するからだと言われています。

References

Linus Pauling, Ewan Cameron. Cancer and VitaminC. A Warner Communication Company. June 1981

藤井毅彦.ガンと栄養. 分子栄養学研究会. 1980

藤井毅彦. ガンと予防し、治すビタミンC療法. 日本ビタミンC研究会. 1982

 

 

 

 

 

 

 


心臓の健康とプロバイオティクスとプレバイオティクスの役割について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2022-03-23 10:27:13 | 健康・病気

過去の研究では、心臓の健康とプロバイオティクスの関係について関心がなく、注目されませんでした。Thushara RM博士らの新しい研究によると、ヒトの腸管に住んでいる細菌類は、ヒトの健康状態に大変影響し、腸管の細菌叢(腸内フローラ)での善玉菌(乳酸菌、酪酸菌など)数と悪玉菌(大腸菌、ウエルシュ菌、ブドウ球菌など)数のアンバランスが、心臓血管系疾患の病因と関係する、と報告されています。

多くの研究によると、プロバイオティクスやプレバイオティクス(水溶性食物繊維など)を含む食品の頻回摂取では、LDL-コレステロール値を下げ、LDL/HDL比と血圧を改善し、炎症性因子、血糖値、それにBMIの改善が報告されています。しかし、どの種のプロバイオティクスをどのくらいの量摂取し、プレバイオティクスをどのくらいの量摂取すれば心臓の健康に有益かは、研究が足りていません。また、ヒトの遺伝や免疫能が、それらの効果にどう影響するか、研究が足りていません。しかし、近年、これらに関する研究が増えているので、期待しています。とりあえず、プロバイオティクス食品(納豆、漬物、豆乳ヨーグルト)や乳酸菌、酪酸菌サプリメントとプレバイオティクス食品の頻回摂取が賢明でないか、と考えます。もちろん、全体的な栄養バランスが基本になります。

References

Thushara RM,et al. Cardiovascular benefits of probiotics. Food Funct. 2016 Feb;7(2):632-42

Probiotics against heart disease. News View. 23 March 2016

Annelise C. Costanza, et al. Probiotic therapy with Saccharomyces boulardii for heart failure patients. International Journal of Cardiology. 179(2015)348-350