ウイルスや細菌など病原体により発症するガンを除いては、ガンの発症は、長年の食生活が関係します。日本人の胃ガンは、ピロリ菌も原因の一つですが、食塩の取り過ぎが関係しています。現在は、冷蔵庫があり、食品の保存がたやすいですが、昔は塩が食品の保存に使われました。そのため、食塩の取り過ぎによる、疾患が多い状態でした。
精米に於いて、米のコ―ティングにタルクが用いられ、胃ガンの発症と関係しています。また、胃ガン患者は、対照に比べて、生野菜の摂取が少ないと、報告されています。戦前に比べ、現在は、ミルクとその製品の消費が増大し、胃ガンの発症の減少と関係ある可能性があると、報告されています。また、米国では肺がんが増加しており、動物性脂肪の摂取の増加と関係が有ると言われ、動物性脂肪の高摂取では、腸管の嫌気性細菌叢が高比率になり、胆汁ステロイドからエストロジェンが多く産生されるようになります。エストロジェンが多すぎると、発がんの原因になります。
ヨウ素欠乏、水のカドニウム含量の増大、ビール消費量の増加などが、疫学的研究において、肺がんの発症と関係が有ると、報告されています。
また、大腸ガンの発症には高脂肪食・低食物線維食が関係しています。ベルケ博士は、加工肉を大量に摂取する人達での、大腸ガンの高い危険性を指摘しています。大腸ガンの高い発生率は、多量の精製食品と少ない食物線維を含んだ食品を食べる人々の間で、見られます。精製食品は糞便の塊が小さくなり、腸管を通過するのに長時間かかるが、高食物線維食は、糞便の塊が大きく、腸管通過時間が早く、細菌叢が、そうでない場合に比べて、異なっています。
食物のカビなどに含まれるアフラトキシンは強力な肝細胞発がん物質で、食事にビタミンAが少ない場合、実験動物に大腸がんを発症さす可能性があると、報告されています。腸管アリル炭水化物ハイドキシラ―ゼは、食事により変化する可能性が有り、順次、化学的発がん物質を変化させます。ラット腸管のアリル炭水化物ハイドロキシラ―ゼの活性は、キャベツ新芽、かぶら、アルファルファ―、および他の食物成分により変化します。よって、キャベツなどアブラナ科の野菜を多く摂取しましょう。癌に対する抵抗性に栄養素が深く、重要な役割を果たすことが、示唆されます。いろんな野菜や果物をまんべんなく多く摂取することがガン予防の秘訣、と考えられます。更なる研究を期待しています。
Reference
藤井毅彦:ガンと栄養、日本ビタミンC研究会、1979年