ビタミンKはインスリン感受性を促進します。従って、糖尿病の改善に有益と考えられます。
Lee NK博士らの研究によると、ビタミンKはエネルギー代謝のコントロールに関与しています。オステオカルシンは、骨や循環系に見出されるビタミンK依存蛋白質で、造骨細胞から分泌される蛋白質です。天然ビタミンKはオステオカルシンを活性します。なお、オステオカルシンはインスリン産生のβ細胞の増殖に直接関係しています。このような理由で、グルコース耐性とインスリン感受性を改善します。
Cell誌、2007年のLee NK博士の研究によると、マウスのオステオカルシンの分泌を可能にする造骨細胞が、遺伝子発現を欠くよう遺伝的に設計されると、グルコース不耐性とインスリン抵抗性をもたらします。天然ビタミンKはβ細胞のインスリン産生を刺激することに加えて、ビタミンKにより活性化したオステオカルシンは、インスリン感受性ホルモンであるアディポネクチンの産生を高め、その上、インスリン感受性とグルコース耐性を改善します。したがって、糖尿病の改善に重要です。
ビタミンKとトランス脂肪酸に関しては、Troy LM博士らの研究によると、マーガリンやショートニング、加工油脂などに含まれているトランス脂肪酸は、天然ビタミンKの活性を阻害します。現代の食事は緑葉色野菜が少なく、一部に水素添加した脂肪酸(トランス脂肪酸)を含む加工食品が多く、管理栄養士の栄養指導の課題になっています。天然ビタミンKを一番使い果たす物質は、ビタミンK1(phylloquinone)を含む食用油が、水素添加される時、生じた天然にない物質で、dihydrophylloquinoneと呼ばれています。この天然でないビタミンKは、MGP(matrix GLA蛋白質)を脱炭酸する(活性化)ことができません。なお、MGPは、弾性線維中にCaが沈着するのを防ぎます。したがって、心筋などの硬化をMGPは防ぎます。そして、心臓病の改善につながります。
最近の研究では、dihydrophylloquinoneを大量に消費するヒト(トランス脂肪酸を多く摂取するヒト)は、首、尻、脊柱の骨ミネラル密度が、さらに低いことがわかりました。また、血管系の健康に対する天然のビタミンKの重要性が明らかになり、納豆などに含まれる天然ビタミンK2(phylloquinone)の不十分な摂取と天然でないビタミンK(dihydrophylloquinone)の高摂取は、静脈瘤血管とアテローム性動脈硬化症を促進します。
ところで、ビタミンk2とそれを多く含む納豆は、ワ―ファリン(抗凝固薬)と相互作用があるため、併用が禁止されています。医薬品と併用する場合、医師に相談しなければいけません。なお、ビタミンK2はチーズや納豆など発酵食品に多く含まれます。また、ビタミンK2はビタミンK1から腸管内微生物により合成されます。ビタミンK1は緑葉色野菜に多く含まれます。これらの点から、糖尿病対策に緑葉色野菜、納豆など多く摂取する必要があります。西日本では納豆をよく食べる習慣がありません。残念です。なお、サプリメントのビタミンKは脂溶性で体に蓄積するので、大量摂取はできません。少量を時間をおいて摂取するのが、賢明です。
Reference
The Heart, Bone and Skin Health Benefits of VitaminK: Clarifying the Complex world of Nutrition Science. Smart publications
筆者の栄養医学ブログは、ブログアドレスnutr-blog.blogspot.comとblog.goo.ne.jp/h35p39の両ブログで見られます。