医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

アルコール依存症のビタミン欠乏症について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-03-30 20:43:43 | 健康・病気

アルコール依存症の患者はビタミンやミネラルの欠乏症になり易く、ビタミンの葉酸塩(ビタミンM)の場合、大量のエチルアルコール摂取は、食事性葉酸塩の摂取、吸収、必要な組織への葉酸塩の輸送、それに肝臓での葉酸塩貯蔵と遊離に拮抗する、と報告されています。また、ビタミンB12の場合は、大量のエチルアルコールの摂取は、血清ビタミンB12値に影響し、米国での研究によると、エチルアルコールの消費が、0g/日から30g/日に増加した場合、平均血清ビタミンB12濃度の5%の低下が認められました。

次にビタミンAの場合、エチルアルコールの大量摂取された時、ビタミンAの欠乏を促進し、ビタミンAの毒性を強めます。エチルアルコールの摂取は、尿中へのカルシウムの排泄の増加によって体中のカルシウムの損失をもたらし、骨粗鬆症の原因となります。このように、エチルアルコールの大量摂取は、肝臓や他の臓器へのダメージをもたらし、これら以外のビタミンとミネラルの欠乏をももたらし深刻な問題となります。また、これらの栄養素の欠乏の重大性は、エチルアルコール摂取による健康上の利点より、はるかに大きい問題です。エチルアルコールの摂取量を徐々に減らし、禁断症状に注意しながら、少量摂取への移行が望まれます。また、依存症状や手足の震えや幻視、身体的症状、精神症状、それに社会的症状だけでなく、最近の米国での研究では、習慣的な飲酒は、知能指数の低下をもたらす、と報告されているので、交通関係、高度の精神作用を伴う仕事の人は、飲酒をあきらめるのが、仕事寿命の延長に繋がる、と考えられます。

References
Alcohol and Nutrition: MedicineNet.com. March 28,2015
A lower IQ has been linked to greater and riskier drinking among young adult men: ScienceDaily. Feb 20,10


睡眠時無呼吸症候群と二型糖尿病の結び付きについて 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-03-24 21:46:32 | 健康・病気

二型糖尿病の人は、睡眠の質が若い時に比べて悪くなっていると、よく訴えます。欧米での過去20年間での研究では、睡眠時無呼吸症候群は、一次的な血中酸素濃度の低下と睡眠の断絶により、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、それに二型糖尿病の進行を相互に関係なく、もたらします。逆に、二型糖尿病は、末梢神経炎の進行、上部呼吸系気道中枢コントロールの異常により、その障害と中心となる睡眠時無呼吸症候群の進行を促進したり、その傾向を強めたりするにちがいありません。

もっと多くの研究が、この二つの障害の間の双方向的な結び付きの基礎となるメカニズムを明らかにする必要がありますが、二つの疾患の共存は、二型糖尿病患者にとって睡眠時無呼吸症候群を含む臨床上の検査を実施する必要があると、考えられます。

二型糖尿病を含む代謝上の機能障害のある患者の睡眠時無呼吸症候群の早期の確認、そして睡眠時無呼吸症候群の患者の代謝異常の確認は、心臓血管病(狭心症、心筋梗塞など)のリスクを減らし、これらの慢性疾患のquality of lifeを改善できる可能性があります。いずれにせよ、二型糖尿病患者の睡眠障害を改善することは、合併症の予防に繋がるので、睡眠導入剤の助けを借りることなく、規則正しい生活、適度な運動、それに栄養療法で二型糖尿病を改善することが重要と、考えられます。

Reference
R Nisha Aurora, et al: Obstructive sleep apnoea and type 2 diabetes mellitus. THE LANCET Respiratory Medicine. Vol 1, No4, p329-338,June 2013

 


二型糖尿病による睡眠障害について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-03-19 20:02:00 | 健康・病気

境界型糖尿病や二型糖尿病では、よく眠れないと訴える患者が大変多く、糖尿病には睡眠障害が診断の目安になっているようです。そのため、睡眠は生存に必須であるので、その質を高め、適切な睡眠時間の確保が望まれます。

体のシステムは、その適切な機能のためには、睡眠は重要なファクターとなっています。体内のグルコース代謝は、いろんな睡眠障害により悪い影響を受けます。睡眠時無呼吸症候群は、グルコース代謝を含む系統的影響を有する重要な障害の一つです。老化のプロセスはグルコース代謝に影響を及ぼします。睡眠、老化とメタボリック症候群の間には密接な関係があります。睡眠時無呼吸症候群と二型糖尿病は、いくつかの特徴を共有しています。睡眠不足の中で、特にREM睡眠不足は、肥満の発症において認識されています。

インスリン抵抗性と睡眠時無呼吸症候群の密接な関係は、二型糖尿病による脂肪肝や多嚢性卵巣症候群での睡眠時無呼吸症候群と認識されています。持続的に気道内圧を高めることによる睡眠時無呼吸症候群の治療は、インスリン感受性を高めます。二型糖尿病患者での、隠れた睡眠障害に対する強い疑念があることは、内科医や登録栄養士(米国)にとっての重要な診断事項です。睡眠障害を管理して、良好な睡眠を得ることは、二型糖尿病や動脈硬化症で睡眠障害のある人にとって重要です。二型糖尿病や動脈硬化症の食事療法や栄養療法で改善することは、睡眠導入剤よりはるかに安全で、体に優しい療法で、それらは、以前のこのブログで紹介しています。

Reference
Iyer SR: Sleep and type 2 diabetes mellitus-clinical implications. J Assoc Physician. 2012 OCT; 60:42-7

 


ウルトラディアンリズムと精神疾患の関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研会 藤井毅彦

2015-03-10 14:04:24 | 健康・病気

人は日々の睡眠ー覚醒リズムによって健康を維持したり、損ねたりする傾向があります。新しい研究では、ウルトラディアンリズム(生物の持つ数十分から数時間のリズム)も健康に影響し、特に精神機能に影響しているようです。いろんなストレスはこのリズムに影響し、健康にも影響します。

人の毎日の睡眠ー覚醒サイクルは、体内24時間時計(生体時計)により制御されています。しかし、日々の活動は、24時間よりもっと短いリズムにより影響を受けます。この乱れが、精神疾患やいろんな病気の誘因になります。また、この短いリズムは、ウルトラディアンリズムと呼ばれ、約4時間サイクルで起こります。

このリズムは、幼児において夜寝る前に最もよく観察され、毎日の覚醒している間に、一定間隔で一日三回食事を摂ることからも説明可能です。この4時間ウルトラディアンリズムは、脳のカギとなる化学物質であるド―パミンによって活性化されます。双極性疾患や統合失調症の症例で示唆されているように、脳内でのドーパミン値が良好でない時、4時間のそのリズムが48時間まで延長されます。したがって、この事は健康にいろいろ影響を及ぼします。

Douglas mental Health University Institute and McGill UniversityのKai-Florian Storch博士らの研究によると、遺伝子を修飾したマウスでの研究では、睡眠の異常は、過去においてサ―カディアンリズムの破たんを伴っており、ドーパミンによるウルトラディアンリズムのジェネレーター(発生させるもの)のインバランスをもたらします。このことは、ある双極性疾患の症例で観察された躁病と欝病の間の2日サイクルへの説明となります。このことは、48時間サイクルで活動しているドーパミンオシレータ(ドーパミンを発振させるもの)によるものです。

この仮説となる研究は、ドーパミンに基づいたリズムジェネレイターの新しい発見によるだけでなく、精神病理学との関連によって独創的な仮説となっていますが、更なる研究を期待しています。この新しいデータでは、ウルトラディアン覚醒オシレーターが働かなくなった時、睡眠は妨げられ、躁病が双極性疾患患者で発症します。また、オスシルレィターのインバランスは、統合失調症を発症します。したがって規則正しい生活習慣とストレスの緩和、遺伝的にビタミンB3の大量が必要な体質の人のビタミンB3摂取などが、その予防に重要です。この発見は、ドーパミンの制御破たんと結び付いた双極性疾患と統合失調症に対する治療法のヒントを与えるものです。更なる研究が待たれます。

References
Ian D Blum, et al: A highly tunable dopaminergic oscillator generates ultradian rhythms of behavioral arousal. eLife,2014
Deconstructing mental illness through ultradian rhythms. SciencerDaily. Deb 21, 2015


 


認知症のリスクと糖尿病、うつ病との関係について  栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2015-03-09 13:05:16 | 健康・病気

高齢化に伴い認知症のリスクが高まりますが、二型糖尿病や動脈硬化症、それにうつ病を有する人は、そのリスクが高まる、と多くの研究では報告されています。また、日本国でも急速な人口の老齢化により認知症が増え、政府がその対策を国家的喫緊の課題と位置づけているようです。

University College LondonのClaudia Cooper博士らの研究によると、軽度の認知障害の人は、二型糖尿病やうつ病を伴っている場合、認知症のより高い発症のリスクがあります。軽度の認知障害(MCL)は、正常な老化と認知症の間にあり、MCLの精神機能は、年齢相応よりは、より低下しております。このことは、65歳の人で19%見られ、一般人口群の3%と比較して、3年以内に認知症を発症する、と報告されています。

最近の"American Journal of Psychiatry"誌によると、62件の別々の研究からのデータを分析して、総計15,950名の軽度認知障害と診断された人々を追跡調査し、二型糖尿病の人は、65%ほど認知症を発症しやすく、また、うつ症状を有する人は、認知症の症状を二倍より高く発症しやすいようです。なお、アルツハイマー認知症は、脳の二型糖尿病であるという研究も有りますが、更なる研究が求められます。

精神機能と身体的健康の間には強い関係があり、身体を健康に保つことは、脳の機能を保つ上に役立ちます。食事や気分の改善のための生活習慣の改善は、認知症を避けるため、軽度認知障害の人や高齢者にとって有益だけでなく、多くの、他の健康上の利点をもたらします。

この博士らの再調査では、認知症発症の予防のため、二型糖尿病の改善やうつ病の改善、それに食事の改善が重要です。その予防のため、社会的活動や適度の身体的活動と共に、地中海性食事や薄味の和食が推奨されています。なお、これらの食事は、野菜、果物、魚介類を多く用い、獣肉や飽和脂肪酸を少なくした料理です。Alan Thomson博士らは、軽度の認知障害の人での医学的、かつ精神医学的なこれら二つ以上の疾患を持つ場合、認知症予防のため初期介入の重要性と栄養医学的な治療の可能性を強調しております。更なる研究を期待しています。なお、認知症の栄養医学的対策は、以前のこのブログでも紹介しています。

References
Claudia Cooper, et al: Modifiable predictors of dementia in mild cognitive impairment. American Journal of Psychiatry. 2015
Diabetes, depression predict dementia risk in people with slowing minds. ScienceDaily. Feb 20,2015