医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

米国でのガンのビタミンC点滴の実際について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-03-28 15:21:49 | 健康・病気

米国のリオルダンクリニックのガン患者へのビタミンC(ビタミンC塩)点滴は、リオルダンプロトコールにより実施され、45名のガン患者で前立腺がん24名、乳がん9名、膀胱がん3名、すい臓がん3名、肺がん3名、甲状腺がん1名、皮膚がん1名、B-細胞性リンパ腫1名よりなり、そのうち数名のガン患者に転移が認められました。

ガン患者の多くは、このクリニックへ来る前に、最初は伝統的治療法、手術、放射線、それにホルモン療法、抗ガン剤などの治療歴が有りました。年齢の中央値は65歳で、47~85歳の間でした。ビタミンC点滴による治療への応答は、炎症、腫瘍マーカー、血液検査、脂質像、それに栄養状態のパラメータのスクリーニングにより評価され、追跡期間の中央値は7.2年で、1年から18年の間でした。

他のクリニックでのガン患者へのビタミンC点滴のデータは、条件も異なることもありますが、効果はよく似ています。ステージが早いガン患者は、寛解率や生還率は高く、ステージが上がるにしたがって寛解率や生還率は低下する傾向が有りました。これらのデータから出来るだけ早いステージからビタミンC点滴を長期間実施することが、良好な予後への一里塚になる、と考えられます。なお、多くの人でビタミンC点滴中は楽だったと、報告しています。

References
Nina Mikirova, et al: Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translational Medicine. 2012,10:189
Roxburgh CS, et al: Role of systemic inflammatory response in predicting survival in patients with primary operable cancer. Future Oncol. 2010,6:149-163

H.L. Newbold,M.D. VitaminC against Cancer. Stein and Day/publishers. 1979




がん臨床でのビタミンC点滴の実際について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-03-27 14:35:40 | 健康・病気

ガン患者でのビタミンC点滴(IVC)については、実際の情報を知りたいと思う、患者や家族がいると思います。米国のリオルダンクリニックでは、ガンの症状の診断は、いろんな検査や他の医療機関での腫瘍医や病理医の検査データに基づき、実施しますが、G-6-POH酵素欠損症(ビタミンC点滴により溶血反応を示す)のガン患者は、ビタミンC(ビタミンC塩)の大量点滴はできません。この検査にパスしたガン患者は、IVCのプロトコールに従って、インフォームドコンセントを経てIVCが実施されます。

このクリ二ックでは、生理的食塩水の補液に7.5~15g/回のビタミンCを昆注し、ゆっくり点滴する様です。その際、正常な腎機能、正常な水和機能、それに尿排泄機能などがあるかどうか確認するため、血清化学プロフィールと尿検査が実施され、点滴に耐えれるかどうか調べられます。腎機能が悪い場合は、IVCが実施されません。そして、最初の点滴に耐えれたガン患者は、週3回までの5~50g/回の点滴が実施されます。その前にインフォームドコンセントにサインし、プライバシーの保護のため匿名のガイダンスが、分析のためのデータ集めのため実施されます。他の医療機関でも、大筋でよく似ているようです。なお、IVCでは、pHを調整しています。このようなビタミンC点滴が、安全性をモニターしながら長期にわたってこのクリニックでは実施されているようです。最近では、放射線療法や化学療法の補助療法として実施している医療機関も、米国では増えているようです。

References
Nina mikirova, et al: Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translational Medicine. 2012,10:189
Roxburg CS, et al: Role of systemic inflammatory response in predicting survival in patients with primary operable cancer. Future Oncol. 2010, 6:149-163

 


ガンの炎症とCRP値、ビタミンCの関係について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-03-23 17:26:20 | 健康・病気

ガンの予防・寛解を考える時、その炎症反応に対応できる手段の構築が必須で、炎症は、ガンの進行において鍵となり、ガンの増殖、脈管形成、転移、それに治療への抵抗性に影響する、重要な病態です。ガンでの炎症の特徴は、白血球の浸潤、サイトカインの増加、組織の変化、それに脈管形成などです。マクロファージ、好中球、樹状細胞、それにリンパ球などと結び付いたガンでの白血球の浸潤は、炎症性の微細環境をもたらし、上皮性起源の腫瘍において鍵となる要素です。

これらの浸潤された白血球は、CCL2やCXCL8のようなキモカインだけでなく、IL1、IL6、TNF-α、TGF-β、FGF、それにHGF21のような炎症性サイトカインを分泌します。ある症例では、免疫細胞がガンの生長を抑制する可能性があるけれども、白血球を浸潤することによる炎症性微細環境では、ガンの進行を促進させます。また、臨床研究では、抗炎症性因子の使用は、ある種のガンの減少例が見られますが、マクロファージでは気の毒な予後に結び付きます。このような気の毒な予後とならないための抗炎症性因子は、合成薬品でなく、ビタミンなど自然の栄養素が候補に挙がってます。その中で、ビタミンCは特に注目され、実際、臨床でガン患者に点滴され、臨床データ、腫瘍マーカーやQOLの改善、それに延命効果が多く報告されています。

いろんな研究では、炎症は、ガンの高いリスクと悪化のマーカーであることを示し、ガン患者では全身の炎症反応で、肝臓は特に、IL-6の上昇に反応して補体システムを活性化し、CRPを産生します。なお、CRPは全身の炎症マーカーであり、病気の進行に比例して上昇し、感染のモニターになります。例として、CRP値が高い上昇を示した被験者は、そうでない被験者に比べて死亡のリスクが3.5倍を示し、また、広範なタイプのガンでは、CRP値と生存率の間に負の相関が有りました。例えば、CRP値の高い上昇を示したガン患者は、死亡率の増加を示し、CRP値のデータは、ガンの進行と炎症の相関関係を示しています。また、ガン患者へのビタミンC点滴でCRP値が改善された、という臨床報告もあります。グルタチオンもその可能性がある栄養素で、ビタミンC点滴にマイヤーズカクテルと共にガン患者に投与されているようです。なお、ビタミンC点滴は長期点滴が必要です。

米国のリオルダンクリニックの臨床研究によると、ビタミンCの点滴は、ガン患者のCRP値を低下させ、ガン患者に寛解をもたらしました。このガンの補助療法は、現在、米国、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージランド、日本、韓国、その他の国々で実施され、世界中に広がっています。なお、日本では、自由診療なので、長期点滴の場合、経済的負担がかかります。

References
Nina Nikirova, et al: Effect of high-dose intravenous vitaminC on inflammation in cancer patients. Journal of Translational Medicine. 2012,10
Coussens LM, et al: Inflammation and cancer. Nature. 2002,420:860-867

 

 


二型糖尿病患者の認知症、うつ症状について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-03-15 13:47:08 | 健康・病気

多くの研究によると、二型糖尿病患者ではうつ症状と認知症が認められる症例がある、という報告もあります。二型糖尿病患者でうつ症状を有し、軽度の認知障害がある場合、認知症を発症するリスクが高い、と報告されています。軽度の認知障害は、正常な老化と認知症の中間にあり、精神機能は、年齢相応よりは低下しています。この軽度の認知障害は、65歳では19%で見られ、このうち約46%は、一般の人の3%と比較して、3年以内に認知症を発症する、と米国の研究では報告されています。

最近の"American Journal of Psychiatry"誌によると、62件の研究によるデータを分析して、総計15,950名の軽度認知障害の人の追跡調査では、軽度認知障害の人で二型糖尿病が有る人は、65%ほど認知症を発症する傾向があることが分かりました。また、軽度認知障害でうつ症状の人は、そうでない人より2倍より多く発症する傾向が有るようです。

認知症の予防面では、身体の健康と精神の健康とは、強い関係が指摘され、身体を健康に保つことは、脳の働きを正常に保つのに必要です。そして、二型糖尿病やうつ症状、動脈硬化症の改善が重要です。また、食事の改善や適度な身体活動、ストレスの解消、さらには、ビタミン・ミネラルサプリ、プロバイオティクスなどを活用し、身体を健康に保つための努力が望まれます。

認知症になるのを防ぐため、軽度の認知障害の人は、生活習慣の改善が必要で、特に食事の改善のため、野菜や果物、豆類、海藻などふんだんに摂取し、獣肉や飽和脂肪酸の少なくし、EPA/DHAの豊富な魚介類の頻繁な摂取が望まれます。また、Alan Thomson博士によると、軽度の認知障害の人で医学的、かつ精神医学的な2つ以上の疾患が有る場合、初期介入が重要で、その場合、治療の可能性がある、と報告しています。

References
Diabetes, depression predict dementla risk in people with slowing minds: University college London. scienceDaily,Feb 20.2015
Claudia Cooper, et al: Modifiable Predictors of DSementia in mild cognitive impairment. American Journal of Psychiatry. 2015

 

 

 


大腸がんとプロバイオティクスとの関係について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2017-03-12 16:21:51 | 健康・病気

多くの研究によると、大腸がんの発症とプレバィオティクスなど腸管細菌叢は、関係が深いことがわかってきました。

内外の研究によると、生きている微生物食物成分のプロバイオティクスは、発酵食品、ヨーグルト、納豆、そのサプリメントなどに含まれ、適正量摂取された時、健康上の利点や、大腸がんを始めいろんなガンや潰瘍性大腸炎、クローン病、うつ病などいろんな疾患に有益、と報告されています。

ほとんどのプロバイオティクスは、乳酸菌とビフィズス菌ですが、酪酸菌や納豆菌も腸内悪玉菌を抑え、善玉菌が腸内で増えるのをサポートし、腸内環境を改善します。さらに、これらの善玉菌は、乳酸菌やビフィズス菌と違い、胃酸に強く、大腸まで生きたまま届きます。

次にプロバイオティクスとプレバイオティクス(野菜や海草、果物などに含まれる食物繊維)では、プレバイオティクスがプロバイオティクスの餌になり、プロバイオティクスにとってなくてはならないものです。さらに、両者が腸内にあることにより、腸管細胞の染色体のダメージを防ぎ、腸管での有害な酵素活性を阻害し、潜在的に有害な細菌(悪玉菌)の成長をコントロールし、結腸細胞(大腸細胞)に有益な作用し、免疫システムを刺激し、結腸細胞に有益な生成物を産生したりして多彩な作用を有します。

また、プロバイオティクスは、結腸で成長し、活性化し、有害な細菌に対し拮抗作用を有し、悪玉菌の増殖を抑制します。そして、いくつかのプロバイオティクスは、抗細菌因子を産生します。乳酸菌とビフィズス菌は、乳酸とそれによく似た短鎖脂肪酸を産生し、腸管管腔をより酸性化し、有害な細菌が腸管内で増殖しないような腸管環境を作ります。

次に、プレバイオティクス(食物繊維など)は、腸管内の酪酸(結腸細胞の成長と調節に重要な化合物で、酪酸菌が産生する)値を高め、腸内環境の改善に重要です。多くの疫学的研究によると、大腸がんと高脂肪食は関係が深く、大腸がんでは、結腸の胆汁酸値が上昇しており、胆汁の分解産物は、結腸細胞に対し毒性を有し、結腸細胞(大腸細胞)の増殖と発がんの可能性を高めます。このように、大腸がんは、高脂肪食(肉食)を減らし、野菜や果物、豆、イモなど食物繊維の多く含まれる食品をよく食べ、EPA/DHAの豊富な魚介類を適正量摂取し、発酵食品やヨーグルトも食生活に取り込む知恵が必要、と考えられます。なお、これらに詳しい管理栄養士など専門家に相談下さい。

References
Gut Bacteria and Colorectal cancer: CANCERactive
べん野医義巳:大腸内細菌叢の多変量解析とプロバイオティクスの機能。理化学研究所