医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

二型糖尿病の左心室不全への天然型R-α-リポ酸の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2021-06-18 11:37:20 | 健康・病気

高齢化による心臓弁脈症や二型糖尿病では、心筋に障害が起こると報告されています。CL.Li博士らの研究によると、実験的糖尿病による心筋症での心筋線維症や心筋機能不全(障害)が、R-α-リポ酸(ビタミン様栄養素、チオクト酸)の投与で改善されると報告されています。そのメカニズムとしては、R-リポ酸(R-α-リポ酸)は、エネルギーを産生するTCAサイクルの代謝を正常化してATP産生を増やし、その抗酸化作用により心筋細胞内の活性酸素を減らし、その結果、心筋機能不全を改善し、糖尿病性心筋症や心臓弁膜症の心筋機能障害の治療に寄与すると考えられます。

別の研究によると、R-リポ酸(R-α-リポ酸)はミトコンドリアの酸化ストレスを抑制することにより、心筋アポトーシスを減らし、糖尿病性心筋症を軽減すると報告されています。これらの結果やいろんな研究から、糖尿病の合併症、加齢に伴う動脈硬化、それに心筋異常などの発症・進行を天然型R-リポ酸が防ぐと期待されています。なお、抗糖尿病薬や心臓病薬を摂取している患者は、天然型R-リポ酸や補酵素Q10とこれらの医薬品との併用摂取は、相互作用の可能性のリスクがあり、望ましくないので、これらに詳しい医師・薬剤師・管理栄養士への相談が必要です。なお、R-リポ酸の300mg-600mg/日の摂取では大きい副作用はなく、効果的かつ安全と報告されていますが、ヒトの体質は皆違うし、その摂取量は違うので、試験的に摂取して体調を観察し、自分に合った摂取量を知ることも重要と考えられます。

Tanta大学のSahar K. Hegazy博士らの研究によると、無症状の一型糖尿病の子供と成人の糖尿病性左心室機能障害への型R-リポ酸の効果では、インスリン療法グループとインスリン療法+R-α-リポ酸(300mg/回、2回/日)療法グループに4ヶ月投与し、インスリン+天然型R-α-リポ酸グループではグルタチオン値が高まり、MDA(マロンデアルデヒド)、NO(一酸化窒素)、TNF-α、Fas-L(Fas Ligand)、MMP-2(マトリプロテナー背プロテナーゼ2酵素)、それにトロンポ二ン-1値が著しく低下しました。さらに、僧帽弁e/a比(僧帽弁の検査で、心拍数の増加に伴いe/a比は上昇する)と左心室全体の心臓収縮の引っ張り強さを著しく高め、心臓機能を改善しました。

なお、房室弁は、心室から血液を拍出するとき、心房へ逆流しないよう乳頭筋が収縮して房室弁を引っ張り、弁がしっかり閉じる構造になっています。僧帽弁e/a比と左心室の引っ張り強さを高めると、弁がしっかり閉じ、血液は正常に拍出されます。これらのことが正常に行わなければ正常な血液循環は阻害されます。これらの結果から、天然型R-α-リポ酸には期待ができますが、更なる研究の積み重ねが必要です。なお、体内で働いているα-リポ酸は、R-α-リポ酸(天然型)であり、S-α-リポ酸(非天然型)ではありません。S型はR型のラセミ体で、α-リポ酸サプリメントなどに50%ほど含まれており、凝集物を形成するという研究もあります。S-α-リポ酸は体内に蓄積するという研究もあるので、S-α-リポ酸(非天然型)を含むα-リポ酸サプリメントは、最大耐容量以下の少量長期摂取は危険との報告もあります。天然型-α-リポ酸の摂取が望まれます。

References. 

Sahar K. Hegazy, et al. Alpha-lipoic acid improves subclinical left ventricular dysfunction in asymptomatric patients with type1 diabetes. Rev Diabet Stud. 2013 Spring; 10(1) 58-67

Anna Gvozja Kova, et al. Q10 and α-lipoic acid effect  in patients with diabetic. cardiomyopathy. Medical 2008

Cj Li, et al. Cardiac fibrosis and dysfunction in experimental diabetic cardiomyopathy. NCBL.2012

 

 

 


統合失調症への栄養素ベタインの効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2021-06-12 16:48:40 | 健康・病気

統合失調症については、多くの研究でナイアシン(ビタミンB3)の効果が報告されていますが、栄養素の中では,ナイアシンのように効果の報告事例が多い栄養素は、数少ないようです。今回は、栄養素のベタインが統合失調症に対し有効性の可能性が報告されていますので、これについて考えていきたいと思います。なお、ベタインは栄養サプリメントとして米国では使用されており、アミノ酸の一種と位置づけられ、長期摂取による副作用も少ないようです。

臨床栄養学では、ベタイン(トリメチルグリシン)は、肝機能を高め、肝臓への脂肪の沈着を防ぐことから脂肪肝の治療にも用いられ、また、肝臓の酸化を防ぎ肝臓を保護すると報告されています。さらに、グルタチオンやクレアチニンの産生に寄与し、筋肉の成長に最適なように、ホルモンバランスを整えます。

理化学研究所の研究によると、ベタインは、初期症状の統合失調症患者の血漿中では減少すると報告されています。統合失調症のバイオマーカーを証明するために、初期症状の統合失調症患者とその対照群から血漿代謝産物を試験し、上記、結果になったようです。

Amanda Alvurez博士らによると、ベタイン(グリシンベタイン)の欠乏は、統合失調症患者の脳での病状の一因となっています。マウスにベタインを補給することはその精神症状を緩和できると、理化学研究所のデータは示しています。

なお、ベタインはホモシステイン尿症の治療薬としてすでに使用されており、精神症状の治療にも、副作用が最小であることから、統合失調症の治療に有望視されています。ベタインが統合失調症の治療薬になるかどうか、今後の研究が待たれます。

References 

Tetsuo Ohnishi, et al. Investigation of betaine as a novel psychotherapeutic for schizophrenia. EBioMedicine. Published by the LANCET.Vol45, July2019,Pages432-446

Amanda Alvurez. Boosting betaine may be a treatment for schizophrenia. Hotoff Press, Jun27,2019