ガン、統合失調症とグリシンについて　栄養医学ブログ　藤井毅彦

2012-05-15 22:21:26 | 健康・病気

ガンの治療法としてのグリシンの可能性に関する予備的研究結果では、グリシンは抗ガン作用を有する可能性が有ります。さらに、グリシンは、ガン性腫瘍、メラノーマの進行を阻害するのに役立つ、可能性が有ります。実験用マウスでは、食事性グリシンは脈管形成を阻害することにより、腫瘍の増殖を阻害しました。さらに、グリシンは前立腺の健康保持に有益です。また、ある研究では、グリシンは、男性の前立腺肥大の症状を減らすのに有益なことが、示されました。これらに関しては、グリシンはアミノ酸なのでNH2を含み、大量投与の場合は、チッソ分が増え、腎臓、肝臓に負担をかけるので、大量投与による副作用の存否の動物実験での試験が必要になります。また、ビタミンCのガンに対する寛解効果に関しては、膨大な数の研究が有りますが、グリシンのガンに対する寛解効果に関しては、少ししかありません。また、"haidut,Aug21,2015"によると、グリシンは、炎症の治療だけでなく、癌腫の予防と治療に用いることができる、と報告しています。しかし、Dr.Joel Brind医師によると、グリシンの過剰摂取は、発がんをもたらしたり、ガンをさらに悪化させるに違いない、と述べています。いずれにせよ、追試験が必要です。

魚、肉、豆、ミルク、それにチーズなどの高タンパク食品は、グリシンの最大の供給源です。また、グリシンはカプセルや粉末の形で利用できます。多くのアミノ酸と併用したり、それらの一部としても利用できます。グリシンのサプリメントの大量摂取は、胃の不調をもたらすという、報告も有ります。

副作用に関しては、腎臓病や肝臓病のヒトは、グリシンを大量摂取する前に、栄養医学に詳しい医師に相談して下さい。次に、どれか一つのアミノ酸サプリメントの大量摂取は、クエン酸もしくはクエン酸サイクルの破たんをもたらす可能性があります。そして、体内で大量のチッ素もしくはアンモニアを生成し、肝臓や腎臓が老廃物を排泄するのを、難しくします。抗痙攣薬を摂取しているヒトは、グリシンが抗痙攣薬の作用を増強するので、併用は禁忌です。なお、数g/日の摂取は安全と考えられます。さらに、アミノ酸インバランスをもたらさないよう、総合アミノ酸製剤の併用も必要と考えられます。また、疾患の中には、一つのアミノ酸が大量に必要であったり、一つのアミノ酸を抜く必要がある疾患もあります。

グリシンは統合失調症の補完的治療法となる可能性が出てきました。ここ数年、N-methyl-aspartateもしくはNMDA(グルタミン酸受容体)をブロックする因子と関係している、グルタミン酸塩システムが注目されています。グルタミン酸は、すべての神経シナプスの40%と関係している、脳内の主たる興奮性神経伝達物質です。PCPとKetamine、この二つの薬物は、統合失調症とよく似た行動をもたらし、NMDA受容体をブロックします。PCPとKetamineによって生じた精神病は、統合失調症と大変よく似ています。なぜなら、統合失調症の治療に抵抗する陽性症状をもたらすだけでなく、陰性症状と認識障害をもたらします。また、D-セリンはグリシンと同様にNMDA作動薬ですが、ラットに腎障害を起こすので、米国では臨床に用いられていません。

統合失調症はそうでないヒトより、NMDA受容体が少ないようです。NMDA作動薬であるグリシンやd-セリン濃度は、対照に比べて、統合失調症のヒトの血中と脳・脊髄液で減少していることが、明らかになりました。このことは、統合失調症のヒトはNMDA量が大変少なく、このことは、統合失調症の症状(特に陰性症状と認識障害において)の原因の一つであるという仮説が考えられます。したがって、NMDA量を増やす因子にグリシンを加えてもいいのではないかと、考えられます。なお、これらの疾患に対するグリシンの効果とその副作用に関しては、現在、世界中で研究が進められており、成果が期待されています。

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