医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

女性の心筋梗塞対策と食事性抗酸化物質について 栄養医学ブログ

2012-10-31 17:39:00 | 健康・病気

冠状動脈性心臓疾患は、女性の死亡率の主たる原因となっています。抗酸化栄養物質(抗酸化物質)の豊富な野菜や果物を主とした食事は、心筋梗塞のリスクを著しく減らすことが、
新しい研究で分かりました。

カロリンスカ研究所のAlicja Wolk , DrMedSci博士らの研究は、心筋梗塞と関係したすべての食事性抗酸化栄養物質の作用を、始めて調べたものでした。総抗酸化栄養物質の効力は、食事に含まれる抗酸化栄養物質すべての相乗作用を評価することでした。

1997年9月から2007年12月まで、48~83歳の32,561名のスウェ―デン女性を追跡調査しました。女性は、一年間、消費した食品、飲料を平均的に食品摂取頻度質問表に記入しました。研究者らは、米国でもっとも一般的な食品の活性酸素吸収能を測定するため、被験者は、
食事の総抗酸化能により五つのグループに分けられました。研究期間中、1,114名の女性が心筋梗塞で亡くなりました。抗酸化能の最も多い食事摂取のグループは、心筋梗塞のリスクがより低く、20%で、野菜や果物の摂取が、最小の摂取のグループに比べて約3倍でした。

食事性総抗酸化能は、食品に含まれている抗酸化栄養物質すべてを反映しています。そして、それらの抗酸化栄養素の相乗作用により抗酸化能が、より高められると考えられます。現代の食生活は、脂肪と砂糖の多い加工食品から総カロリーを摂取しています。したがって、肥満や生活習慣病が増えています。加工度の低い野菜や果物、全粒穀物、いも、それに豆などを、意識的に摂取すれば、それらに含まれる抗酸化栄養素の相乗作用により、心筋梗塞を始め生活習慣病の予防につながると考えます。抗酸化栄養サプリメントは、多種の抗酸化栄養素が詰まったものを補助的に摂取することも、生活習慣病の予防につながると考えますが、メインは抗酸化栄養素を含む食品を多く摂取することです。

Reference

Diet high in total antioxidants associated with lower risk of myocardial infarction in women: Science Daily , Sep.21, 2012

 


老齢期の脳の委縮対策とビタミンB12について 栄養医学ブログ

2012-10-30 14:42:09 | 健康・病気

魚などに含まれるビタミンB12が、老齢期の脳の委縮を防ぐ可能性が、オックスフォード大学のVogiatzoglou博士らの研究で出てきました(Neurology, Sep 9, 2008)。

その研究では、61歳から87歳の107名の脳のCTスキャン、記憶力テスト、それに身体の診察が実施されました。ビタミンB12(VB12)値を調べるため、血液サンプルが集められ、脳のCTスキャンと記憶力テストは、五年後、再び実施されました。濃度がより高い血中VB12値の人々は、より低い血中VB12値の人々に比べて、脳の容積の減少が1/6ほど少ない事がわかりました。彼らは全員VB12欠乏症ではありませんでした。

脳の健康に影響する多くの因子はコントロールが難しいと考えられます。しかし、肉、魚、強化シリアル、ミルクなどを食べることにより、また、VB12栄養サプリメントを摂取することにより、脳の委縮は防がれ、記憶力は回復される可能性が出てきました。しかし、他のビタミンや必須ミネラルのベストの摂取量、蛋白質、炭水化物、脂肪などのバランスもVB12の効果に影響します。

VB12の欠乏は公衆の健康問題であり、特に老人では、VB12の適正量摂取は、認知症を含めて、脳の健康問題の解決に役立つと考えられますが、過剰・長期摂取は問題がある可能性があります。

VB12に関する以前の研究では、結果がいろいろで、老人群での脳のスキャンに関する研究は少しも有りませんでした。Vogiatzoglou博士らは、血中のVB12に対し二つのマーカーを調べることにより、更に正しい方法でVB12値を調べました。しかし、VB12の栄養サプリメントを補給することが、記憶力に対し同じ良い結果をもたらすかどうかは、研究では調べられていません。なお、帯状疱疹後神経痛で高単位のビタミンB12を4年にわたって医師の指示で摂取し、膀胱がんを発症した症例が報告されており、ビタミンB12の大量、長期摂取が関係している可能性があります。また、いろんな研究論文でも、高単位ビタミンB12の長期摂取は膀胱がんのリスクを高めると、報告されています。更なる研究を期待しています。

Reference

Vitamin B12 may protect tha brain in old age: Science Daily, Sep.11, 2008

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認知症対策とメタ分析によるビタミンDの効果について 栄養医学ブログ

2012-10-23 15:21:29 | 健康・病気

L lewellyn博士グループの研究やGiovannucci博士の研究とその他の研究を統合したメタ分析が、オンタリオ健康・老化統合研究所のCynthia Balion博士らのグループにより実施されました。

成人におけるビタミンD血中濃度と認知機能、認知症との間の関連を調べるため、五つのデータベ―スが2010年まで調べられ、それらには、比較グループでの研究デザインすべてが含まれて いました。認知機能もしくはその悪化は、全体もしくは領域の特異的認知行動のテストにより調べられ、認知症は、承認基準により診断されました。また、ビタミンDの血中濃度測定は必要事項でした。二人の統計処理の専門研究者は、別々のデータを抽出し、以前に定めた基準を用いて、研究の質を評価しました。Q統計とI二乗方式が、異差性のテストに用いられ、加重値平均偏差(WMD)とHedge's gにかなう無作為効果モデルを用いて、Balion博士らは、メタ分析を実施しました。なお、メタ分析とは、過去に行われた、いろんな研究結果を統合し、より信頼性の高い結果を求めるための手法や統計解析のことで、広く用いられています。

結果には37件の研究が含まれていました。8件の研究では、平均した、小さい精神症状の試験(MMSE)のスコアは、ビタミンD>50nmol/Lの被験者とビタミンD<50nmol/Lの被験者を比較するデータを含んでいました。MMSEとWMDを比較した研究では、著しい異差性が認められました。しかし、ビタミンD値がもっと高いグループは、全般的に、正の効果が認められました。そして、小さい正の効果は、いろんな感度分析に関わらず続きました。対照とアルツハイマー病(AD)を比較するデータは六つの研究で見られたが、二つの研究では、商業的利用からはずされた方法が利用されました。残った四つの研究では、アルツハイマー病グループは対照グループと比較して、ビタミンD濃度が更に低い結果でした。

これらの結果から、もっと低いビタミンD濃度では、より低い認知機能とアルツハイマー病のもっと高いリスクが認められましたが、更なる研究により、ビタミンDの適正量の摂取がアルツハイマー病の予防と治療に有益であることが証明されることを期待しています。Balion博士らの成果は、良い方向性を示していると考えられます。更なる研究を期待しています。なお、ビタミンDは脂溶性なので取り過ぎに注意が必要です。1,000国際単位/日以内なら安全と考えられますが、腎疾患、肝臓疾患の人は、特に注意が必要で、医師に相談して下さい。

References

VitaminD, cognition, and dementia: Cynthia Balion et al. Neurology ,sept 25,2012

Vitamin D and Cognition: JWatch Neurology, Oct 16, 2012

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アルツハイマー病のアミロイドβ蛋白質とビタミンDの関係について 栄養医学ブログ

2012-10-18 22:53:50 | 健康・病気

アルツハイマー病の原因と言われている、毒素物質であるアミロイドβ蛋白質の凝集を防ぐ栄養素は有るのでしょうか、そして、どのように栄養素を組み合わせれば、その凝集を防げるのでしようか。今回は、それについて考えていきたいと思います。

研究によると、米国の老人の大多数は、ビタミンD(VD)が欠乏状態にあり、このことは認識機能上の問題と認知症のリスクを増大さす可能性があります。ビタミンD(肝油、キノコ類などに含まれる)は、脳への血液供給を保護することにより、脳の健康にとって重要です。VDは脳から毒素(アミロイドβ蛋白質)を取り除くのに役立つ可能性が、L Iewellyn博士らの研究により、明らかになりました。アミロイドβ蛋白質を分解するのに、ビタミンDが役立つ、と博士は述べています。更なる研究により、この仮説が証明されることを期待しています。

脳に障害をもたらす因子を確認する試みにおいて、その他のデータを分析してみると、血中VD値が低い老人(男女)は、血中VD値が高い老人に比べて、推理力、学習能力、記憶力などのテストで劣っていました。被験者は、研究開始時と3年後、6年後に健康歴に関するインタビュー、医学上の検査、血液検査、それに思考力のテストを受けました。血中VD値が正常な被験者と比較すると、VD値が著しく欠乏した被験者では、思考力、考えをまとめる能力、決定する能力、それに計画する能力、それに行動力などの著しい低下が認められました。VDの欠乏と認知能力の低下との関連は、食事、健康状態、それに、その他の因子を調整した後でさえ続きました。

ハーバード大学のEdward Giovannucci博士によると、アルツハイマー病の予防、治療では、十分な血中VD値を維持することは有益である可能性があり、低い血中VD値は、体全体の健康に有害なので、認知症だけでなく、その欠乏を改善することは重要です。更なる研究が、脳の機能におけるビタミンDの役割を明らかにするため必要と考えられます。なお、ビタミンAと同様、副作用が出やすいので、大量摂取は向きません。自分に合った適正量を探して下さい。ガン患者は、最大、5,000国際単位/日ぐらい摂取しているようですが、アルツハイマー病では、安全性を考えて、1,000国際単位/日ぐらいがいいのではないか、と考えます。ビタミンに詳しい医師、薬剤師、管理栄養士などの専門家と相談して下さい。また、その他のビタミン、必須ミネラルの摂取量、食生活も認知症に関連しているので、それらがベストである場合は、VDの効果も高まると考えています。

Reference

Nissa Simon.VitaminD deficiency linked to Dementia:  AARP July 13, 2010

 


認知症対策とビタミンDについて その一 栄養医学ブログ

2012-10-17 18:48:15 | 健康・病気

認知症と関連したビタミンDの欠乏については、ビタミンDの欠乏を改善すると、アルツハイマー病に対し、脳を守る可能性がある、と研究結果からExeter大学のDavid L Iewellyn博士は述べています。

彼らの新しい研究によると、血中ビタミンD値が低い男女の老人は、認知力、注意力、論理的思考力に関して、問題を有する傾向が、正常値群に比べて4倍程あるそうです。ビタミンD欠乏と老齢期の認知機能の低下、すなわち認知症との間の関連を、この研究は示唆しています。

ビタミンDに対する関心は、近年、更に強まり、更なる研究では、心臓病、ガン、糖尿病などを含む、老化が関係した、いろんな疾患において、ある種の役割を果たす可能性を、示唆しています。

Lewellyn博士らの研究では、米国の老人群を反映するよう注意深くデザインされた研究において、65歳以上の3325名の成人に関する情報を分析しました。そして、ビタミンDの血中値が低値と思考力の劣化との間の関連を立証しました。記憶力と注意力のテストでの成績の不良の可能性は、ビタミンD欠乏群では高く、約42%あり、重度のビタミンD欠乏群ではもっと高く、400%ありました。

体は、十分量以上のビタミンD量を生み出すためには、毎日、数10分間、直接太陽に当たることが必要です。しかし、年を取ると、皮膚はビタミンDを産生するのに十分な機能を持っていません。それで、老人は、ビタミンD欠乏という弱点を持っています。ビタミンD値は血液検査で測定することができます。なお、ビタミンD3は魚やその肝臓に含まれています。ビタミンD2はキノコ類を干したものに含まれています。栄養サプリメントでは肝油ドロップなどに含まれています。脂溶性なので、1,000国際単位/日内の摂取では安全と考えられます。他のビタミンや必須ミネラルと連携しながら作用するので、それらの摂取量によって効果に差が見られる、と考えられます。更なる研究を期待しています。

References

Vitamin D deficiency linked to Dementia: AARP Bulletin, July 13, 2010

食品化学概論:藤野安彦、しょう華房