医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

大動脈石灰化(硬化)へのフィチン酸(IP6)の効果について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2019-09-06 14:50:28 | 健康・病気

高齢化に伴い血管や心臓の弁、その他の臓器の石灰化が進み、そのことが、心臓の動脈硬化症による狭心症、心筋梗塞や心臓弁脈症を発症する原因となります。なお、以前のブログでそれらの栄養医学的対策を種々述べてきましたが、今回は、フィチン酸(穀類のフスマ、豆類、ナッツ類に含まれる栄養素)の心臓石灰化予防とそのリスク軽減効果について、外国の研究を参考にして、考えていきたいと思います。

フィチン酸は、イノシトールにリン酸が結合した栄養素で、石灰化やガンを始め、いろんな疾患への効果が報告されていますが、その摂取は、石灰化である結石や歯石、それにガンの予防効果も報告されています。Alexandra Schutkowski博士らの研究によると、フィチン酸を含むルピン豆のタンパク質は、アテローム性動脈硬化症モデルマウスにおいて、大動脈の石灰化を減少させることが、繰り返し証明されています。なお、ApoEノックアウトマウスでの二階乗研究が、フィチン酸を含むルピン豆タンパク質と含まないルピン豆タンパク質単体、あるいはルピン豆と同量のフィチン酸を含むカゼインと含まないカゼインの餌を摂取した上記マウスで実施され、フィチン酸を含むルピン豆タンパク質を含む餌を摂取したグループは、その他のグループのマウスより、より大動脈石灰化の低下が認められました。これらのことから、ルピン豆タンパク質による大動脈石灰化低下作用は、ルピン豆タンパク質とフィチン酸の相乗効果と考えられる、と博士らは述べています。

また、Grases F博士らの研究によると、高齢ラットでの心臓血管系石灰化に及ぼす食餌性フィチン酸塩の研究では、オスのイスターラット(10週齢)は、4つの食餌グループに無作為に分けられ、一つのグループは、フィチン酸塩を含むバランス食を給餌され、もう一つのグループはフィチン酸塩を含まない精製食餌を与えられ、その他のグループは、フィチン酸を含まない、イノシトール、CaHPo4、Mgoを添加された食餌を与えられました。76週齢ですべてのラットは殺され、大動脈、心臓、腎臓、肝臓、それに大腿骨は、化学的分析され、その結果、大動脈のCa含量の相違が著明でした。フィチン酸を含む食餌グループは、フィチン酸を含まない食餌グループに比べて、大動脈のCa値が著しく低い値でした。結論として、食事性フィチン酸療法は、高齢化による大動脈石灰化を著しく低下させることが示された、と博士らは述べています。

その他の外国の研究では、イノシトールと異なった多価リン酸の混合物を含む、フィチン酸の部分的加水分解産物は、ricketicラット軟骨、大動脈のin vitroでの石灰化に対する有望な阻害因子であることが示され、また、フィチン酸は、それ自体、不活性でした。フィチン酸は、その加水分解物だけでなく、非経口的に投与されたとき、ビタミンD濃度が十分である場合、ラットの大動脈石灰化を防ぎました。これらのことから、フィチン酸の摂取には、食生活で豆類、ナッツ類、精製度の低い穀物の日常的摂取が推奨されています。

References

Grases F, et al. Phytate reduces age-related cardiovascular calcification. Front Biosci. 2008 May 1; 13:7115-22

Bill Sardi. Dietary intake of phytate(IP6) reduces stiffening of aorta and has other profound health effects. Knowledge of Health

Pilar Sanchis, et al. Protective effect of myo-inositol hexaphosphate(phytate) on abdominal aortic calcification in patients with chronic kidney disease. Journal of Renal nutrition. vol 26,issue 4, July 2016