医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

肝臓障害とグリシンについて 栄養医学ブログ

2012-07-31 18:27:29 | 健康・病気

グリシンはどのようにして、著しく肝臓障害を改善するのであろうか。この疑問に北カリフォルニア大学のTurman博士らは、ラットによる研究で答えました。

非必須アミノ酸のグリシンは、いろんな動物の障害モデルに於いて、抗炎症作用を示しました。最近の研究では、ラットや他の動物でのendotoxinの致死量投与に対し、食事性グリシンが、肺と肝臓の両方を保護し、肝臓移植後の組織移植を改善することを、証明しました。酸化によりもたらされた肝障害、もしくは胆汁うっ血性肝障害に対する食事性グリシンの影響は、以前から知られておりませんでした。しかし、グリシンは、タウリン、グルタチオン、それにシステインとよく似た作用を示すのではないかと、考えられるようになりました。

Turman博士らは、ラットでBDLによる胆汁うっ血のモデルと食事性グリシンの胆汁うっ血モデルを用いました。BDLによる肝臓障害は、食事性グリシンからは減少していることが、証明されました。さらに、グリシンが、実験的胆汁うっ血の症状では、肝細胞に直接作用することにより、肝障害を改善することを、データは示しています。

Kupffer細胞は、胆汁うっ血によりもたらされた病理学的変化に於いて、主たる役割を演じているようではありませんでした。肝臓でマクロファージがいるKupffer細胞は、endotoxinショック、アルコール性肝障害、エイコサノイド放出による他の毒物による肝障害、炎症性サイトカイン、それにフリーラジカルなどのような、いろんな病的状態の時に肝臓に見られることは、よく知られています。さらに、Kupffer細胞の細胞膜上のグリシン依存性塩化物チャネルとKupffer細胞の活性プロセスに影響する他のマクロファージは、見つけることができました。しかし、実際に用いた胆汁うっ血のモデルに於いて、肝障害に及ぼすKupffer細胞群の強い影響は、確認できませんでした。さらなる追試研究により、肝障害に対するグリシンの効果が確認されることを、期待しています。そして、グリシンのどのくらいの量が最も効果を発揮するか、今後の課題と、考えられます。

Reference

How did glycine significantly decrease liver injury?: Science Daily, Oct.31,2008

 

 


ガン代謝に於けるグリシン代謝について 栄養医学ブログ

2012-07-30 21:52:48 | 健康・病気

ガンでの代謝の役割に対して関心が強まっています。しかし、増えつつある研究では、大変特異的な代謝経路の一つか二つかに焦点が合わされています。ハーバード大学のVamsl Mootha博士らは、偏りのない研究をし、すべての代謝を考察し、ガンに於けるグリシン代謝を、明らかにしました。そして、CORE(消費と放出)のプロファイリングとして知られている研究手法を、発展させました。その技術は、代謝産物の流速を測定できるものでした(体内で行われている化学反応の前駆体とその産生物質)。すなわち、代謝が動的に把握でき、今までのように静的代謝をアプローチする研究手法と違い、一歩進化した研究法となりました。そして、それを用いることにより、ガン研究も一歩進展する可能性が出てきました。

現代では、代謝物質を測定する時、ある瞬間の撮影をしています。しかし、代謝経路の写真を撮影する時、速い代謝経路がどのように動いているか、わかっていません。どの代謝産物が細胞で急速に消耗され、排泄されるか、今までの測定法ではわかりません。

Mohit Jain博士らは、CORE手法を用いて、あらゆる代謝物質がどのくらいの量、細胞あたり、時間あたり消費されたか、放出されたかを、正確に定量的に測定できるようになりました。これは、ガン研究に於いて、画期的な研究手法です。

Jain博士らは、細胞中へ、あるいは細胞から放出される栄養素の流束、あるいは輸送を捉えることができるようになりました。60種のガン細胞群での収集物質であるNCL-60に対し、消費物質と放出物質のプロファイリングを適用しました。薬物感受性に関するデータは、遺伝子と蛋白質の活性、細胞分裂率、それに、さらに、これらの細胞群(九つのガンのタイプ)に利用できます。そして、代謝産物に関する情報は、公的に利用でき、ガン研究の資料として、研究者、臨床家にとって大変有益なものになる可能性が有ります。その新しいデータに関する、もっとも際立った結果の一つは、グリシン消費のパターンが、ガン細胞の分裂のスピードとどのように関係しているかということです。

もっとも遅い細胞分裂に於いては、少量のグリシンが培養基中へ放出されます。しかし、急速に分裂するガン細胞に於いては、グリシンは貪欲に消費されます。代謝産物は、"crossing the zero line"の普通でないパターンを少しもしていません。これは、ゆっくり分裂するガン細胞が実際に代謝産物を放出する間、急速に分裂するガン細胞が代謝産物を消費することを、意味しています。ガン細胞を急速に、あるいはゆっくりと増殖せしめる代謝活性は、十分理解されていませんが、これら60種のガン細胞群と交差すると、どの程度の速度でガン細胞が分裂し、どのくらいの量のグリシンが取り入れられるかという関係を、Jain博士は理解しているようです。CORE検査法は、一種のスクリーニング法で、代謝活性の検査法です。これは、他の実験にも応用できます。

細胞分裂率と相互関係が有る代謝産物を探すことに加えて、Jain博士らは、1500種の代謝酵素の発現を調べました。ミトコンドリア内のグリシン生合成に必要とされる酵素は、強い相互関係が有りました。これらの結果をさらに証明し、理解するため、彼らは、ガン細胞がグリシンを奪われた時、培養基からグリシンを除き、グリシン代謝に関係した酵素をブロックすることにより、何が起こったか、観察しました。そして、速く分裂するガン細胞は遅くなりますが、ゆっくり分裂するガン細胞は、影響を受けませんでした。すなわち、研究の限界は、ガン細胞が違った行動をする可能性が有ることです。しかし、Jain博士らの研究手法を用いて、粘り強くガン細胞の行動を観察すれば、その正体は早晩解明できると、考えております。

Reference

New clues About Cancer Cell Metabolism : Smallest Amino Acid, Glycine, Implicated in Cancer Cell Proliferation. Science Daily, May 24,2012

 

 


C型肝炎対策とプロバイオティクス、ビタミンCについて 栄養医学ブログ

2012-07-27 20:33:20 | 健康・病気

研究によると、腸管細菌叢(善玉菌叢)の発現は、慢性肝臓疾患のいくらかのタイプ(特に肝硬変)に於いて、補助療法となる可能性を考慮すべきであると、示唆されています。さらに、ロシアの研究者らによると、アルコール性肝障害(肝硬変)を伴ったアルコール依存症のグループに対する研究では、被験者らは、腸管の善玉菌叢の値が低い事を、確認しました。

プロバイオティクスが摂取されるようになって、アルコール性肝障害者は、健常な対照に比べて、腸管細菌叢(さらに多い善玉菌)が改善されました。被験者らは、プロバイオティクス療法中、肝機能の改善が見られました。短期間の経口によるプロバイオティクスの摂取は、腸管細菌叢の回復を伴い、アルコール性肝障害に於いて、標準療法単独よりも、より大きい改善を伴いました。

C型肝炎と肝硬変について

C型肝炎は、最終的には肝硬変になります。一般的には、アルコール依存症、B型肝炎、C型肝炎、それに脂肪肝などから進行し、その結果、肝硬変になりますが、他の原因も考えられます。

肝硬変を伴ったC型肝炎患者では、プロバイオティクスからのサポートを見出せる可能性があります。肝硬変の患者は、腸管細菌叢のインバランスがあることがわかりました。プロバイオティクスは、肝臓病を誘発する細菌性毒素を減らします。プロバイオティクスが、肝臓を保護したり、サポートするのに有益であり、免疫反応を改善する可能性が有ることを、科学上のエビデンスは示唆しています。

C型肝炎とビタミンCについて

ビタミンCと急性肝炎については、Cathcart博士によると、急性肝炎は、ビタミンCを用いて治る、最もやりやすい疾患の一つです。ビタミンCの高摂取は(経口もしくは点滴で、40g/日~100g/日)、2~4日で急性肝炎の寛解が可能でした。また、6日以内に黄疸の消退が認められました。さらに、ビタミンC(5g/日)をαーリポ酸と併用し、点滴したところ、C型肝炎の寛解が認められました。ビタミンCは、C型肝炎に対し、大変重要で、強力な抗酸化栄養素です。

References

VitaminC for those with HepatitisC: Healthyhepper.com

The Journal Alcohol: December 2008

The Journal of Clinical Gastroenterology: May 2009

ガンを予防し、治す(寛解)ビタミンC療法:藤井毅彦、日本ビタミンC研究会、1982

 

 


C型肝炎対策とプロバイオティクスについて 栄養医学ブログ

2012-07-27 00:26:20 | 健康・病気

栄養医学では、腸管が健康のバロメータと同様に、免疫システムの実際の中心であることが、実証されました。大腸と小腸は、最善の状態では、消化と免疫機能を保つのに役立つ、有益な細菌(善玉菌)が住んでいます。なお、プロバイオティクスという言葉は、たくさんのラクトバチルス菌株のことを言います。ヨーグルト、ケフィールなどにはラクバチルス菌株の多くを含んでいます。

多くの研究によるエビデンスでは、C型肝炎に罹った人々は、自然免疫によるサポートを、プロバイオティクスサプリメントから得ています。

体の免疫細胞の50%から70%は、腸管内層にあります。研究によれば、善玉菌は、次のように、いろんな重要な役割を演じます。●全腸管の機能改善。●入口をブロックすることにより、病原性の細菌(悪玉菌)に対し、体を守ります。●必要なビタミンとホルモンの産生をサポートします。●腸管の化学的バランスを維持します。●脾臓の免疫機能を刺激します。●細菌に対し栄養素で競合し、悪玉菌の生長を阻害します。

我々の体は、食事やいろんなストレス、それに乳酸菌を含む食品の不足などで、善玉菌の敵となる環境になります。次のことを含む腸管のインバランスには多くの理由が有ります。●悪玉菌を殺す抗生物質は、腸管善玉菌にも有害なので、同時にプロバイオティクスサプリメントも摂取する必要があります。●水道水中の塩素は、善玉菌を殺すので、煮沸して塩素を逃がした水を飲む必要が有ります。●多量の砂糖と多量の精製炭水化物を含む食事は、カンジダ菌のような有益でない細菌に環境を提供します。これらのことは、B型肝炎、C型肝炎、糖尿病性脂肪肝、それに、いろんな肝障害などの患者に見られます。

悪玉菌は、善玉菌のコロニーを壊滅させ、漏腸管症候群を含む、その他の健康上の問題をもたらす可能性がある、腸管の敵対的環境を生じさせます。C型肝炎などのウイルス感染と肝障害を伴った人々に対し、プロバイオティクスでの免疫上のサポートのエビデンスを、研究は実証しています。

イタリアの研究によると、プロバイオティクスの摂取は、非アルコール性脂肪肝の酸化・炎症性肝障害を減らすことができます。C型肝炎の人々は、同時に脂肪肝の診断を受ける可能性が有る場合と、ない場合があります。しかし、これらの結果は、プロバイオティクスが肝臓保護作用を発揮することを、示しています。このような効果は、慢性肝炎の人々にも、限定的に有益です。Clinical Gastroenterology誌上で研究者は、慢性肝炎を含むいろんなタイプの慢性肝臓病の人々に対し、プロバイオティクス療法の有益性を、評価しました。

References

The Journal of Clinical Gastroenterology: July 2005

The Journal of Nutrition: May 2009

The Journal Alcohol: December 2008

 

 

 


ガンの発症とグリシン代謝との関連について 栄養医学ブログ

2012-07-16 19:03:20 | 健康・病気

栄養素アミノ酸の一種のグリシンは、ガン細胞の増殖と関係することが、研究により判明しました。ほとんど一世紀の間、ガン細胞が特異な食欲を有し、正常細胞と異なるシステムでグルコースを食い尽くすと、言われてきました。しかし、グルコース摂取は、ガンの代謝ストーリの一部に過ぎない可能性が出てきました。Broad研究所とMassachusetts総合病院の研究者らは、60種の、よく研究されたガン細胞群を調べ、それらに於いて200種以上の代謝産物が消費されたか、あるいはもっともスピードの早い分割細胞によって遊離されたかを、分析しました。これらの研究では、ガン細胞の増殖に於けるガンの代謝の、大規模な図表が作成され、グリシンがそれらに於いてカギとなる役割を有することを、指摘しています。これらのことから、、近い将来、ガンの代謝図表すべてが完成し、対応策も立てられると、考えます。

グリシンデカルボキシラーゼ活性と腫瘍発生との関連

シンガポールのGenome研究所のZhang WC博士らのグループの研究によると、グリシンデカルボキシラーゼ活性が、非小細胞性肺ガンの発症と腫瘍発生を制御します。ガンを発生さす細胞(TIC)状態にとって、重要である因子の確認は、癌治療において新しい道を開く可能性が有ります。代謝酵素であるグリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)は、非小細胞性肺癌(NSCLC)を発症さす細胞にとって重要です。最初の非小細胞性肺癌を発症さす細胞は、腫瘍発生の元となる幹細胞因子LIN28BとGLDCの高値を示します。LIN28BとGLDCは、腫瘍発生とガンが発症した細胞の生長に必要とされています。GLDCと他のグリシン/セリン酵素の過剰発現は、触媒的に不活性であるGLDCでなく、細胞の変異と腫瘍発生を促進させます。GLDCは、解糖とグリシン/セリン代謝に於ける劇的な変化をもたらし、ガン細胞の増殖を調整するピリミジン代謝の変化をもたらします。臨床では、異常なグリシンデカルボキシラーゼ(GLDC)の発現は、いろんなガンのタイプで観察されます。グリシン代謝と腫瘍発生の間の関連に於いては、進化しつつある抗腫瘍療法に対する新しい目標を提案できる可能性が出てきました。このように、新しいガンの代謝図表が明らかになると、それに対応する手段を試みるチャンスが出てきます。そして、栄養素がその手段になる可能性が出てきました。

複雑なガン細胞の動態とグリシン代謝について 

Mohit Jain博士らの研究によると、代謝産物のプロファイリングでは、ガン細胞の急速な増殖に於ける、カギとなるグリシンの役割を確認しています。だが、代謝の再プログラミングは、ガンの特質であると、提案されています。変化した細胞に於ける、活発な代謝経路に対する系統的な説明は、現在、欠如しています。Mass spectrometryを使って、NCL-60ガン細胞群の培地から219代謝産物の消費像と放出像(core)を測定して、遺伝子発現に対する、以前に存在したアトラスで、これらのデータをまとめてみました。この分析では、ガン細胞の増殖率との強い関係と同様に、ミトコンドリアのグリシン生合成経路でのグリシンの消費と発現を確認しました。グリシンの吸収の拮抗とそのミトコンドリアでの生合成の拮抗は、急速に増殖する細胞を選択的に減らします。さらに、この経路の、より高い発現は、乳がん患者のさらに高い死亡率を伴っていました。そして、グリシンが、ガン細胞の増殖と関係が有ることがわかり、ガンのメカニズムの一つに迫れる可能性が出てきました。明るい朗報です。Mohit Jain博士らの研究グループの今後の更なる研究に期待したいと、思います。

References

New Clues About Cancer Cell Metabolism: Smallest Amino Acid, Glycine, Implicated in Cancer Cell Proliferation, Science Daily (May 24, 2012)

Glycine decarboxylase activity drives non-small cell lung cancer tumor-initiating cells and tumorigenesis: Zhang WC et al, Cell. 2012   Jan 20; 148(1-2):259-72, Equb 2012 Jan 5 in

Metabolite Profiling Identifies a Key Role for Glycine in Rapid Cancer Cell: Mohit Jain et al. Science 25 May 2012